6章 城下町
その後はトラブルもなく、無事に城下町までたどり着いた。国で1番栄えている街だけあって、人通りが多い。馬車の中からでは確認できないくらい高い建物が並び、村では見たこともないような食べ物や道具を売っている店が至る所にあった。けれど所々シャッターを閉めている店もあり、街の人達からは活気が感じられない。
「国1番の街と聞いていたのですが…やはり冬が終わらない影響でしょうか?なんかこう、暗いというか。そう思いませんか?」
「そうだな。」
「…あの、シランさん。その格好でお城に行くんですか?」
僕の対面に座るシランさんは、いつの間にか黒いマントを羽織り、頭はフードを被り、顔は眼鏡とマスクで覆い、誰なのか分からないほどの重装備をしていた。僕の問いかけに答えはするが、窓の外の景色を見ようともしていない。
「そうだが。」
「…不審者にしか見えないです。せめてフードかマスクを外したらどうですか?」
「…これでいい。」
僕の言うことは受け入れられそうになかった。そういえば、森にいた時、シランさんは頑なに城へ行くことを嫌がっていた。顔を隠すのと何か関係があるのだろうか?
「俺のことより、そろそろ準備しねぇと城に着いちまうぞ。」
「あ!そうでした。」
慌ててカバンから春の女王様に貰った袋と写真を取り出した。袋の中からアメを1つ出し、写真に写った男の人を見ながら口に放り込んだ。蜜の味が口中に広がる。じっと写真の男の人を、冬の女王様が待ち続けている旅人の顔を見続けた。アメを食べ終わり鏡で自分の顔を確かめる。体に何の異変も感じなかったので少し心配だったが、写真の男の人と全く同じ顔に変身していてホッとした。
馬車が速度を緩め、ゆっくりと止まった。馬車から降りると、目の前には大きな鉄の門がそびえ立ち、どっしりと閉ざされていた。門の隙間からはお城の一部が見える。とうとう、着いたんだ。
門の左右から白い壁が建てられていて、お城を囲っている。その壁に沿って老若男女問わずたくさんの人が列を作り並んでいた。一体何の列だろう?シランさんも同じことを思ったのか、列に並ぶ人達の方に顔を向けていた。そうこうしている時、門番の兵士の1人が僕たちに近づいてきた。
「トード様とシラン様ですね。春の女王様から承っております。どうぞ、中へお入りください。」
鉄の門がゆっくりと開かれた。僕たちの乗ってきた馬車は自ら来た道を戻っていく。春の女王様のおかげですんなり城に入れそうだ。ただ、騙すのは女王様だけじゃないらしい。気を引き締めて行かないと。
僕たちはお城の中に入った。




