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5章 城への道中にて

「さっきは悪かったな。」


馬車の中で先に話しかけたのはシランさんで、しかも開口一番が謝罪の言葉だった。


「まだ、腹痛むか?」


「は、春の女王様からいただいた紅茶のおかげで、すっかり良くなりました。もう、大丈夫です。」


「そうか。」


そういうと彼は視線を窓の外へ向けた。僕もつられて視線を外へ向ける。窓の外は一面雪景色で、しんしんと粉雪が降り続けていた。


最初出会った時は食われるんじゃないかと思ったけど、僕を蹴ったのも春の女王様を守るためだったわけだし、何より僕のことを心配してくれている。意外と良い人なのかもしれない。


「シランさんは、ずっとあの森で暮らしているんですか?」


「…いや、まだ半年過ぎたくらいだ。」


彼は視線を外に向けたまま答えた。意外だった。春の女王様が彼のことをかなり信頼していたから、もっと長い間、あの森を守っているのだと思っていた。


「そうなんですか。僕が言うのもなんですが、よくあの森に入ろうと思いましたね?女王様の暮らす森には怪物が出るってもっぱらのウワサですよ。」


「へぇ。そりゃ知らなかったな。…まぁあの人には感謝してるよ。俺みたいなやつを森に置いてくれてるんだからな。たまにムカつくけどよ。」


「ハハッ、ムカつくって。」




ガタンっ!!




突然、大きな音を立てて馬車が止まった。僕とシランさんは慌てて外へ飛び出した。馬車の前には大きな谷が行く手を阻んだいた。吊り橋が掛かっていたようだが、今は橋の中央あたりで綱が切れ、谷の両端に無残にぶら下がっているだけだった。


「うわぁ、これじゃ渡れないよ。」


カバンに入れてあった地図を取り出す。この橋を渡ればお城まで一本道でいけたのだが、渡れない以上迂回ルートを探すしかない。南に下れば谷を越えられそうだが、すごく遠回りだ。下手したら2、3日は余分にかかってしまうかもしれない。


「遠回りですが迂回するしかありませんね、シランさん。…何しているんですか?」


振り返ると、シランさんはぬいぐるみの馬の体を撫で回していた。


「あ、あったあった。」


お腹のあたりに手をあて、ごそごそと何かしている。気になって近寄って行った時、馬のぬいぐるみの背中から大きな鳥の翼のようなものがバサっと飛び出てきた。


「うわぁ!」


「よし、さっさと乗りな。」


何が何だか分からないまま、シランさんの後に続いて馬車に乗り込んだ。途端、馬車は猛スピードで谷に向かって走り出した。


「え、ええ!お、落ちる落ちるって!!」


「うるせぇな、落ちねぇよ。」


シランさんのいう通りだった。谷に向かって一直線に走る馬車は、そのまま谷に突っ込み、空中を駆け抜けていた。空を、飛んでいる。人生初の体験だ。


「この馬車は陸空両用だからな。」


「こ、こんな乗り物、初めてです。」


「そうか?まぁこの国にはあんまりねぇから驚くのも無理ねぇか。」



無事に谷を渡り終えると、馬の背中にあった翼はしまわれ、再びお城に向けて走り出した。





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