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4章 写真の男

春の女王様から1枚の写真を渡された。インスタントカメラで撮られたその写真には2人の人物が写っていた。1人は、雪のような白い肌と下ろした長髪がとても美しく、春の女王様と同じ緑色の目をしていたので、冬の女王様で間違いない。その右隣には、男の人が写っていた。茶色の短髪に浅黒い顔、青色の目をしていて、僕の村ではあまり見ない顔立ちの人だった。


「写真に写っている男性の顔をじっと見ていてくださいね。」


春の女王様に言われ、男の人をじっと見続けた。冬の女王様の隣で緊張しているのか、表情は少しぎこちない。年は僕より少し上に見えるけど、どうだろう、そう思っていた時だった。



「ローズマジック、メタモルフォーゼ♪」



春の女王様が魔法を唱えるや否や、僕はピンク色の煙に包まれてしまった。視界もピンク色に染まり、煙たくてうまく息ができなくなった。


「げほっ、ごほっ。な、何なんですか、一体?」


ごほごほと咳をしているうちに、煙は少しずつ消えていった。視界の先には春の女王様がにっこり微笑んでいる。


「うん、大成功ですね!アルケさんも確認してみてください。」


何が大成功なのだろう。春の女王様からはなぜか手鏡を渡され、仕方なく鏡をのぞいてみると、そこにはいつもの僕の顔ではなく、写真に写っていた男の人の顔が映されていた。


「えっ?ええっ!」


「他人に変身する魔法です。フフッ、驚かせてごめんなさい。今回はお試しなのですぐに元に戻りますよ。」


春の女王様の言葉通り、5分も経たないうちに元の顔に戻った。自分の顔に戻ったこと確認して、手鏡は彼女に返した。とりあえず一安心だが、突然魔法をかけるなんて、びっくりするじゃないか!


「そんなに驚かせるつもりはなかったのだけど、フフッ、ごめんなさい。さて、ここからが本題。この袋の中には私が魔法をかけたアメが入っています。変身したい人を見ながら食べれば、さっきみたいに変身することができます。」


春の女王様はそう言いながら僕に小さな袋を手渡した。袋の中には確かにアメがいくつか入っていた。


「そのアメで写真の男性に変身して、冬の女王が城へ出るよう説得してきてほしいのです。」


「えっ!説得?…説得するのはいいですが、なんでこの写真の男の人に変身しないといけないのですか?」


この1年で何人もの人が城を訪れ、冬の女王様に城を出るよう説得したが、誰一人成功した人はいない。この写真の男の人になったからといって、説得できるなんて信じられなかった。


「その写真の男性は、トードという異国の旅人です。冬が始まったばかりの頃にこの国にやってきて、冬の女王の暮らす城に何日か滞在していたそうです。…あの子はね、旅人が『冬が終わる頃にはまた来ます』という言葉を信じて、今もずっと城で彼の帰りを待ち続けているの。」


今まで誰も知らなかった冬の女王様が城を出ない理由。まさか旅人を待つためだなんて。そんな理由で春が来ないなんて、自分勝手で迷惑すぎるじゃないか!


「私もあの子を城の外へ出そうと説得したのだけれど全然ダメ。あの子から彼の話を聞いて、写真を借りて森の動物達とずっと探しているのだけれど、見つからないのです。あの子を騙すのは心苦しいけれど、どうか力を貸してくれませんか?私自身では魔法で変身することができません。あなたの力が必要なのです。」


「わかりました、僕でよければ。」


「よかった!じゃあ、あとは。シラン、そこにいるのでしょう?」


春の女王様の声に応えるように、部屋の扉が開いた。そこにはあの狼男が立っていた。


「お呼びでしょうか。」


「シラン、彼を護衛して一緒にお城まで行ってきなさい。」


「嫌です。そもそもこの国は治安が良く、城まで護衛する必要なんてありません。」


「いくら治安が良くても、道中何があるか分からないでしょう。あなたがいれば私も安心して送り出せます。だから、行きなさい。」


「…いくらあんたの頼みでも、城へは行かねぇよ。」


「…私と話すときは敬語でしょ?悪い子ね。」


春の女王様がゆっくりと左手を狼男に向ける。腕を伸ばし、左手でパチンと指を鳴らした。その途端、狼男は姿を消してしまった。


「え!」


「さて、あとはよろしくお願いしますね。」


今度は僕の方に右手を向け、指をパチンと鳴らした。




次の瞬間、僕は森の入り口に立っていた。目の前には小さな馬車があった。来るときにはなかった気がするが。しかもよく見ると、馬は馬でも大きな馬のぬいぐるみだった。ふと横を見ると、隣では狼男が声を荒げながら、空中をまるで壁を叩くように殴りつけていた。


ー アルケさん、そこにある馬車をご使用ください。シランもお供させますので、2、3日すれば無事にお城へ着くでしょう。


空から春の女王様の声が響く。…あの馬車、使えるんだ。


「わ、わかりました。ありがとうございます。」


「ふざけんな!俺は城になんて行かねぇぞ!」


ー シラン、往生際が悪いですよ。それに、あなたには呪いをかけました。冬の女王に会わない限り、この森には入れません。


「ふざけんなぁぁぁ!」


ー では、みなさん、道中お気をつけて。そうそう、アメの効果は1日ほどですが、変身するのは見た目だけ。決して声を出さないでくださいね。あの子、耳がすごく良いから。声だけですぐにバレてしまうので注意してください。



こうして僕は狼男と一緒に城へ行くことになった。狼男と一瞬目があった。しばしの沈黙…。正直、無事に城までたどり着けるか、とても不安だ。



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