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2章 狼男

空に向かって真っすぐ伸びる大きな耳、鋭い目、大きな口からは尖った牙がキラリと光る。顔から腕や足など全身を茶色い毛が覆い、手足には切れ味の良さそうな爪が生えていた。背丈は僕より少し高いくらいで、赤い上着に黒いズボンと人の格好をしているが、その姿は狼そのものだった。


「うわぁ!…お、おお、おおかみ!」


本能が逃げろと叫んでいる。足には自信があったので、その場から全力で走って逃げた。しかし、冬のせいか思うように体が動かず、しかも雪で滑りやすくなっているせいか、足を取られてしまい2、3歩走ってだけで派手に転んでしまった。


「いててててっ。…やっべ、足挫いた。」


足の痛みに苦しんでいる暇はない。立ち上がろうとしたとき、僕の影に狼男の影が重なった。振り向くと狼男はすぐそばまで近づいている。見上げるとより迫力がまし、足のせいだけでなく腰が抜けて動ける気がしなかった。


「ど、どうか、食わないで。」


我ながら情けないとは思ったけれど、まだ15になったばかりだし、こんなところで死にたくはない。狼男は僕に襲いかかるかと思った。けれど、そんなことはなく、腰をかがめて中腰の姿勢になり、目線が僕と同じ高さになった。軽くため息をつきながら。


「…食わねぇよ。それより悪いことは言わねぇ、さっさと帰りな。春の女王は誰とも会う気はないからよ。」


見た目のわりに、透き通った低い声。口調は荒いが優しい声かけに少々戸惑った。しかし、最後の言葉を僕は聞き逃さなかった。


「や、やっぱり、ここに、春の女王様がいらっしゃるんですね?」


狼男はあっと声を漏らし、右手で頭を軽く抱えている。どうやら春の女王様がいるのは本当のようだ。


「は、春の女王様に会わなきゃいけないんだ!冬を終わらせるためにも。…だ、だから、僕は、か、かか帰り、ません!」



ドシッ



僕の体に鈍い音が響いた。直後、お腹に激しい痛みが走る。気づけば2、3mほど後ろに飛ばされていた。狼男の左足が地面より少し上に上がっていたので、おもいっきり蹴られたんだろう。全然分からなかった。


「ったく。まぁこれも仕事だからな。悪く思うなよ。」


狼男は背中に担いでいた武器を引き抜いた。1m近くある細身の木刀だった。両手で構えて、僕の方へ少しずつ歩み寄る。僕は武器なんて持ち合わせていないし、蹴られて全身痛くて息をするのがやっと。本当にやばい。いくら木刀でも、下手したら死んでしまう。どうしよう、どうしようと思っていたその時だった。




ー 彼を屋敷までご案内しなさい。




突然、女性の声が森に響いた。周りを見渡したが、声の主は見当たらない。


「…さきほどまで誰とも会いたくない、とおっしゃっていたではありませんか?」


狼男が女性の声に応える。突然敬語を使ったのですごく違和感があった。


ー 気が変わりました。さぁ早く。


狼男は空を見上げて睨みつけたかと思うと、頭を搔きむしりながら深くため息をついていた。木刀を背中に担ぎ直し、僕に手を差し伸べてきた。


「春の女王の許しが出た。屋敷まで案内してやるよ。」

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