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10章 本当の姿

「トード様ですね。」


冬の女王様はシランさんの正体に気づいたみたいだ。


「ち、違う。俺は、俺はそんな奴知らない。」


シランさんは後ずさりして冬の女王様から距離を取ろうとした。しかし、冬の女王様はシランさんの方へ歩み寄っていく。


「あなたの声を聞き間違えるなんてことありません。ずっと、あなたのことを待っていたのですから。」


シランさんはそれでもなお、冬の女王様と距離を取ろうとする。そして、フードやマスクを外し、今まで隠していた自分の顔をさらけ出した。


「俺は、化物だ!お前の待ち人…じゃない」


シランさんは自分が狼であることを、ずっと隠そうとしていた。僕はそれがとても不思議でしょうがなかった。けれど、彼がトードさんでこの国のことをあまり知らないのなら、納得ができた。





「めずらしい。トードさんは雪狼の家系なのですね。」





冬の女王様はシランさんの手を握り、自分の顔に近づけながら、彼に対して優しく微笑んだ。


「雪狼?それに…怖くないのか?」


「何が怖いのです?…なるほど、そういうことですね。」


冬の女王様は力一杯の声で叫んだ。


「兵士の皆さん、そして街の皆さん。少しだけ力を貸していただけませんか?あなたたちの本来の姿を少しだけ彼に見せてあげて欲しいのです。」


冬の女王様の言葉に、兵士たちが、街の人たちが応えた。




「えっ!!」




トードさんは驚くのも無理はない。そこには、犬や猫、リスや鳥、様々な顔をした人たちであふれた。街の人も兵士の皆さんも。僕も本来の姿であるウサギの顔になっている。


「この国は人と動物の両方の遺伝子を持つ種族が暮らしているのです。冬になると動物の遺伝子は冬眠してしまうので、人に姿を変えます。」


シランさんはまだ状況が飲み込めておらず、キョロキョロと辺りを見回している。


「あなたは雪狼。雪狼は冬に目覚め、他の季節では冬眠するというとてもめずらしい動物なのです。だから、あなたは化物ではないのです。」


冬の女王様はそう言うと、そっとシランさんの顔に手をあてる。シランさんは声を殺しながら、目に溢れんばかりの涙を浮かべていた。





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