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9章 出発の朝

僕たちがお城に来てから3日目の朝、冬の女王様がお城を出発する日を迎えた。


城を囲む壁の外側では、街中の人が女王様のお姿を一目見ようと集まっているようだ。壁の上へ登らないよう、兵士たちが至るところで大声を出し注意をしている。


城の敷地内から花火が上がる。それを合図に城の正門である巨大な鉄の門が開かれた。お城から正門に向けて赤い絨毯が敷かれ、その上を兵士に囲まれながら、冬の女王様が歩いていく。


僕とシランさんは冬の女王様を外に連れ出した貢献者として特別に列に入れてもらい、冬の女王様のすぐ後ろを歩いていた。一般の人ではまずこんな至近距離にいることはできないのだ、とても名誉なことなのだ、と兵士や使用人達からはやたら言われた。



この数日間、僕はあることを考えていた。もしかしたら僕の勘違いかもしれないし、下手したらせっかく冬を終わらせるチャンスを台無しにしてしまうかもしれない。けれど、このままでは2人の想いがすれ違ったまま。終わってしまって良いはずがない。…もうすぐ時間だ。




冬の女王様の隣まで早足で歩いて近づき、彼女の肩をたたく。冬の女王様と僕の目が合った、その時だった。




僕は、いつもの僕に戻った。魔法のアメの効果が切れたのだ。




「あ、あなたは、誰?」




冬の女王様も、周りの兵士たちも、みんな歩みを止めその場に立ち尽くした。


「驚かせてごめんなさい。僕はアルケと申し…」


「トード様ではないのですね!…城に戻らなければ。」


「待ってください!あなたに話さないといけないことがあるのです!」


僕はあえて魔法のアメを食べなかった。冬の女王様に本当のことを伝えるために。けれどアメの効果がなくなり、トードさんではなくなった僕の言葉は、彼女の耳には全く届かない。最悪の事態だ。冬の女王様は来た道を戻って行ってしまう。




その道を、シランさんが立ち塞がった。




「…どこにいくんだよ?」


「城に戻るのです。トード様をお待ちしなくては。」


「…わがままもたいがいにしな。お前はこの国の女王なんだろ?みんな春が来なくて辛い思いをしてるんだぞ。さっさと城を出ろよ!お前の待ち人は…どうせ来ないんだから。」


冬の女王様はシランさんの言葉に耳を傾けていた。そして口に両手をあて、目元が少し潤んでいる。やっぱり僕の読みは間違っていなかったみたいだ。冬の女王様は耳が良い。最初はどうなるかと思ったけれど結果オーライといったところか。





「トード様…ですか?」



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