表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/46

Heart

リョウタのスマホが、無造作にテーブルに置かれてた。

リョウタは、お風呂だ。

見てみたい衝動にかられた。女の人とLINEしてたりして。

でも、人のスマホを黙ってみるなんて、絶対ダメだよね。

でも、リョウタは、私のスマホをいつも勝手に見てるし、勝手に男性のアドレスを削除してる。

リョウタの場合は、当然の行為になってるのだが。

私の場合は、まだ浮気されたわけじゃないのに、リョウタのスマホ見るなんて、ダメだよね。



「風呂最高ー。」

リョウタから、お風呂から上がってきた。

「京子も入ってくれば?恭、寝たんだし」

「うん」


奈美恵に皮肉言われたこと、気にしてないようで、気にしてることに、気づく。

そうだよね。40歳って、40代なんだもんね。リョウタなんて、やっと30歳だ。この差は、大きいかもしれない。

30代の時、40歳になるのが、すごい嫌だった。でも、30代は、あっという間で、転げ落ちるように、30代が過ぎた。

私の30代は、なにかとリョウタ絡みの30代だった。リョウタと出会って、浮気されて、別れて、別れてもズルズルと連絡とって、結局、また付き合って、結婚して、恭ちゃんが産まれて。

リョウタが変化をつけてくれた30代だった。



そんな存在のリョウタだから、もし浮気されても、仕方ないのかもしれない。


リョウタだって、30歳になるのだから、若い女性に目がいっても不思議ではない。

40歳の体と、20代の体では、男だったら、20代を選んで、当然だ。

小じわが気になったり、タルミが、気になったり、法令線が気になったり、色んな気になるところが出てくる。

老けていくだけの妻と、張りのある肌の20代の女性では、浮気されても、責めようがない。


結局、私は、自分の年齢を認めるしかない。



ランチタイムに、近くの会社のOL達がやってきた。

「店長ー。お薦めは、なんですかあ」

いかにも、リョウタ目当てで、やって来てるのが分かる。

「うちのシェフが作るのは、どれでもお薦めですよ」

「もうっ。店長って、愛妻家なんだからー」

ぶりっこして、OL達は、はしゃいでた。

ああいうOLを見ると、前の会社の新人の南美を思い出す。さすがに、南美も、もう新人ではないだろうが。

「ピザも頼もうよ」

「太るわよ」

「それは、困るー。店長っ、ぽっちゃりは、嫌いですかあ?」

OLの一人がリョウタに聞いてきた。

「美味しそうに食べる人の方が良いですね」

さすがリョウタだ。そう言えば売り上げに繋がる。



「京子、来たわよー」

花江がヨガ教室の仲間を引き連れてやって来た。

「花江さん。この間は、ご協力ありがとうございました」

リョウタが、同級会の時の礼を言った。

「いつでも言って。私は、京子とリョウタくんの為なら、証人なるから」

なんとも頼りになる花江である。

「リョウタくん。茄子とベーコンのパスタと、昔風ナポリタンと、カルボナーラと、明太子パスタと、ミックスピザと、チーズ色々ピザと、デザートに、かぼちゃタルト4個ねー」

皆で、食べるにしても、ランチの量じゃない。

「リョウタくん、かぼちゃタルトは、新メニューなの?」

「時期的なもので、期間限定なんですよ」

今の季節に、かぼちゃのデザートで、揃えて見た。

かぼちゃタルトに、かぼちゃプリンに、スイートポテトじゃなくて、スイートパンプキンである。

「かぼちゃは、女性の体に良いから、期間限定は、残念だわ」

「農家から、採れたて、仕入れてるんで、今の時期なんですよ」



水曜日の店休日に、リョウタは、都会にバンドの練習に行った。

「バンドの練習終わったんだけど、裕太と飯食うから遅くなる」

リョウタから、LINEがきた。

「わかった。気を付けて帰ってきてね」

私は、リョウタに返信した。

でも、リョウタは、夜11時過ぎても帰ってこなかった。

「酒飲んだから、マンションに泊まって、朝帰る」

リョウタから、LINEだった。

マンションとは、私が都会で暮らしてたマンションである。中古で買ったものなので、実家に戻るときに、人に貸して、家賃収入を得ようかとも、考えたが、リョウタと暮らしたマンションだったので、そのままにしておこうということになった。

たまに、都会に行ったときに、使ったりする。



急に泊まるって、どうしたんだろう。リョウタは、車で行ったときは、お酒飲まないのに。

私は、不安になった。マンションに女を連れこんだりしてたら、絶対嫌だ。あのマンションは、私とリョウタの思い入れのあるマンションなのに。

私は、勝手に悪い方に考えていた。

裕太くんと食事と言ってたけど、合コンだったりして、そしてお持ち帰りしてたら、どうしよう。


そんなことを考えてたら、朝がきた。私は結局、一睡も出来なかった。


「リョウタくんは、帰ってこなかったの?」

朝、母親が聞いてきた。

「うん。お酒飲んだからマンションに泊まるって」

「そうね。お酒飲んだら、泊まってきたほうがいいわね」


朝7時にリョウタが帰ってきた。

「京子、ごめんな。裕太と酒飲んだからさ」

「うん」

それ以上は、突っ込んで聞けなかった。



仕事中も、ずっと、昨日誰といたのか気になった。本当に裕太くんと飲んだのか。私は、リョウタを、疑っていた。


ガチャーンっ。


皿を落として、皿は割れた。

「やだ。落としちゃた」

「京子、オレが片付けるからいい。ケガしたらどうすんだよ」

私は、ずっと悪い方に考えて、ボッーとしてしまった。

「どうしたんだよ。京子らしくない」

「ごめん。ちょっと考え事しちゃって」

「大丈夫かあ?」

「うん。大丈夫」

全然、大丈夫ではない。


他の夫婦は、浮気されたら、許してるのだろうか。離婚するのだろうか。


離婚って、恭ちゃんもいるのに。店だって、一緒にやってるのに。

離婚したら、リョウタは、家を出ていくの?

離婚は、考えたくない。


でも、あのマンションに連れ込んでたら、許せない。

あーもう。仕事が手につかないー。



仕事から帰ってきて、リョウタがお風呂に入ってるとき、またリョウタのスマホが置いてあった。

私は、思わず手に取っていた。

もう、押さえられなくて、私は、リョウタのスマホを見た。

LINE。LINEに女とのやり取りがあるかもしれない。


でも、いくら探しても、LINEの友達に女の名前はなかった。

名前を変えてるのかもしれない。裕太くんとのLINEを見ればいい。そうすれば昨日、本当に裕太くんと居たか分かる。



「リョウタ、昨日は付き合ってくれて、ありがとうな。朝帰りして、京子さん心配しなかったか?」

「大丈夫だよ」

「でも。リョウタに話聞いてもらって、ふっきれたよ」



昨日は、本当に裕太くんと居たんだ。

私、リョウタを疑って、LINEまで、見てしまった。

最低。私って、最低。リョウタは、浮気なんかしてないのに、勝手に想像して、スマホを勝手に見て。

自己嫌悪で、いっぱいだった。



「あー。さっぱりした」

お風呂から上がってきて、リョウタは寝室のソファに寝転がった。


「裕太さ。マリッジブルーになっててさ」

「裕太くんがマリッジブルー?」

「今、男でも、マリッジブルーになるらしいよ」

裕太くんは、ずっと付き合っていた彼女と最近、婚約した。

「裕太さ。オレと違って、気使いだろ。相手の両親と会ったりして、色々考えたりしてるみたいで。それで、話を聞いたわけ。オレも、京子のこととか、裕太にかなり相談に乗ってもらったりしたから、裕太が悩んでるのをほっとけなかった」

確かに、裕太くんには、私達のことで、かなりお世話になった。

それなのに、私は、リョウタを疑ってスマホ見た。どうしよう。


「リョウタ、ごめん。今、リョウタがお風呂に入ってるすきに、リョウタのスマホを見てしまったの」

私は、罪悪感で、正直に言った。


「えっ。別にいいよ。オレだって、いつも京子のスマホ見てんだから」

「ごめん。」

「何?オレが浮気したと思ったの?」

「うん。疑った。」

「へえー。京子が、オレのスマホみるほど、疑ったんだ?」

「リョウタ、疑って、ごめんね。」

「へえー。それで、仕事中に、考え事してたの?」

「うん。昨夜、心配で眠れなかった」


「オレが、もう浮気するわけないだろ。一度、浮気して、京子に、あっさりフラレて、キツかったんだから。」


あれは、20歳のリョウタだったから、仕方ない。


「もう大切なものを離したくないよ。京子と、恭が大切なものだから。オレは、それをずっと大切に守っていく」



リョウタは、もう20歳のリョウタじゃなくて


夫であり、父親になっていた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ