イブ
クリスマスイブに、営業するかどうか考え中である。
田舎のクリスマスイブは、家でパーティーをする人が多く、外食する人が少ないので、居酒屋は、クリスマスイブは、店休日にする店もあるくらいである。
23日は、水曜日で、偶然にも店休日なので、恭ちゃんには、23日に、クリスマスしようね。と言って了承は、してもらってる。
ご来店されるお客様が少なくても、やはり、24日は、通常通り営業するべきだろう。
「京子、イブの日、お店やってる?」
花江から、電話が来た。なんでも、年末で、旦那さんは仕事忙しく、毎日残業なので、イブの日も遅いだろうから、娘さんと二人だから、外食しようとなり、娘さんが、イブは、イケメンを見たいから、イケメン店長と過ごしたいと言ったそうだ。そこで、イブの日は、予約したいということだった。
イケメンねー。
イブだから、彼氏彼女と過ごせる人ばかりではない。一人で過ごす人もいるかもしれない。私も独身時代、仕事に追われて、一人で過ごしたイブの夜もあった。
朝、駿くんが野菜の配達に来た。
「京子さん、24日イブの日に、店予約できないですか。嫁に、イブくらいは、二人で、食事したいと言われたんで」
「うん。いいよ。予約いれとくね」
駿くんの家でも、家族でのクリスマスは、23日にするらしい。イブは、二人で、過ごしたいという都会から田舎にお嫁に来た彩ちゃんの気持ちもわかる。
店に由香先輩から、電話があった。
由香先輩は、常連のハンドボール部三人組の有紀ちゃんのお母さんであり、私の高校の先輩である。
クリスマスイブの日、夜のファミレスの仕事の休みとれたので、有紀ちゃんと二人で、食事したいから、予約したいということだった。親子二人でイブを過ごすのは、何年ぶりらしい。
なんだか、イブの日は、通常営業じゃ、物足りなくなってきた。
日曜日の休みの日の夜に、リョウタは、駿くんと出掛けた。
私は、イブの日のメニューなどを考えてた。
クリスマスイブの日。
ランチタイムは、通常に営業した。ランチタイムが過ぎると、小雪がチラついていた。今夜は寒くなりそうだ。氷点下かもしれない。
リョウタは、入り口にリースを飾ったり、クリスマスツリーのセッティングをした。
駅の前のイルミネーション前で、永野安奈は、立っていた。
今日、会社から来年度の契約は更新しないと言われた。派遣先は、年内で終了ということである。つまり、クリスマスイブに、失業ということである。仕事が無くなることは、かなりのショックだったが、2年付き合っている彼氏とクリスマスイブを過ごす約束をしていたので、彼氏に慰めてもらおうと思っていた。
しかし、7時を過ぎたのに、彼氏は、来なかった。約束の時間は、6時である。彼氏に、LINEをしても、電話しても、返答はなかった。
来る途中に事故にあったとか?
インフルエンザとか?
永野安奈は、来ない彼氏を心配して、色々考えていた。
そういえば、彼氏が忙しいといい、あまり会っていなかった。
激務で、倒れたりしてないだろうか。
雪が、本降りになっていた。吐く息は白く凍りつきそうだった。
田舎は、いつもホワイトクリスマスが多い。
でも、永野安奈は、なぜか寒いホワイトクリスマスだと思った。
永野安奈のLINEが鳴った。見ると、彼氏からではなく、友達からだった。
「今、彼氏と都会のフレンチレストランにいるんだけど、安奈の彼氏が女の人といるよ。もしかして、別れてたの?」
友達は、ご丁寧に隠し撮りした安奈の彼が女性といる画像まで送ってくれた。
画像は、彼が嬉しそうに笑っていた。
最悪のクリスマスイブだ。仕事は、なくなり、彼氏は、浮気をしていたし。もう、浮気じゃなくて、本気の彼女だろう。
それにしても、ひどい。連絡もしないで、ドタキャンなんて。
彼氏のために用意をしたクリスマスプレゼントが、重く感じた。
もう、8時になろうとしていた。家に帰ったって、彼氏と過ごすから遅くなるって、朝、出掛けたのに、早く帰って、家族に、なんて説明すればいいの。彼氏に、一時間も待たされたあげく、フラレた。仕事もクビになった。って言うの。
永野安奈は、なにもかもが嫌になり、泣くしかなかった。
駅のイルミネーションの前で、ひとり泣いていた。
「京子、クリスマスバージョンのピザ、美味しいー」
花江がピザを堪能していた。
店には、予約の花江親子、駿くん夫婦、由香先輩親子が来ていた。あと予約なしの若いカップルが2組来ていた。
8時に、若い女性のお客様が一人で入ってきた。
そのお客様は、たまにランチタイムに来るOLさんだった。
「ひとりですけど、大丈夫ですか」
そのお客様は、泣きながらリョウタに聞いた。
「いらっしゃいませ。お席にご案内します」
永野安奈さん。26歳。永野安奈さんは、しばらく外にいたのか、髪が凍りついていた。クリスマスプレゼントかと思われるラッピングされた袋を持っていた。
リョウタが、席に案内して、永野安奈さんは座ったが、涙が止まらないようだった。
私は、リョウタに、永野安奈さんに、ホットココアを持っていくように言った。
「温まりますよ。一口でも飲んでください」
そうすると永野安奈さん、ゆっくりココアを飲んだ。
「あったかい・・」
店内の電気が消えて、クリスマスツリーのイルミネーションが、光っていた。
「シェフからのお客様へのクリスマスプレゼントです」
そういってリョウタは、ホールのクリスマスケーキを運んだ。
「わー。大きいクリスマスケーキ。京子、頑張ったわね」
花江が、言った。
「ろうそくの火を誰に消してもらおうかな。じゃあ、お客様、お願いします。」
リョウタは、永野安奈さんに、お願いした。
永野安奈さんは、とまどっていたが、お願いされるままに、ケーキのろうそくの火を吹いて消した。
一斉にクラッカーがなり、メリークリスマスと、お客様たちは、叫んだ。
クリスマスケーキは、カットし、来店されたお客様、全員に配った。
永野安奈さんには、でかいイチゴと、メリークリスマスのチョコプレートがついた部分のケーキを渡した。
そして、サンタ服を着た恭ちゃんに、お客様全員に小さな袋のクリスマスプレゼントを渡してもらった。
「おねえちゃん、メリークリスマス」
そういって恭ちゃんは、永野安奈さんに、クリスマスプレゼントの袋を渡した。
「あ、ありがとう。可愛いサンタさん」
「続いて、店長のオレから、歌のプレゼントです。駿くんと、一緒に演奏します」
リョウタと、駿くんは、アコースティックギターを準備した。
「B'zのいつかのメリークリスマス。聴いてください」
ちょっと前のクリスマスソングだが、どの世代でも、好きなクリスマスソングではないだろうか。ちょっと切なくもあり、心に染みる曲だ。
リョウタの歌を聴いて、花江は号泣した。
「私の青春時代に聴いた曲だわー。その時のクリスマスを思い出す。イケメン二人に、歌ってもらえるなんて最高よ」
彩ちゃんは、駿くんの演奏する姿を見て、うっとりしていた。
リョウタは、歌が上手いから、ぴったりの選曲だと思った。
永野安奈さんも泣いていた。
幸せなクリスマスは、誰もが送るわけではない。
一人で過ごす人もいる。仕事で、クリスマスどころではない人もいる。
でも、私は思う。
クリスマスというならば、誰もが幸せな日になればいいのに。
不公平な日にならないように、世界中をクリスマスを幸せな日にしてほしい。
永野安奈さんは、家に帰り、恭ちゃんサンタからもらったプレゼントを開けてみた。
ハンカチと、メッセージが入っていた。
「いつも、ご来店ありがとうございます。お客様に幸せなクリスマスが訪れますように。」
最悪のクリスマスイブから、幸せなクリスマスイブにしてくれて、ありがとうございます。そう永野安奈は、思った。
彼氏にあげるはずだったのブランドのマフラーは、帰って父親にあげたそうだ。
私とリョウタは、片付けをしたりで、帰宅したのが11時に、なっていた。先に私の母親と帰っていた恭ちゃんは、寝ていた。
「恭ちゃんサンタさん、ありがとう」
私は、恭ちゃんの枕元に、クリスマスプレゼントを置いた。
皆様、良いクリスマスを。




