champion。
恭ちゃんと、散歩に、行って、私の母校の高校の前を通った。
「うおおおおーーー」
グランドから、咲ちゃんの雄叫びが聞こえた。
「ママー。今の声、オオカミさん?」
「ううん。咲お姉ちゃんが、頑張ってる声だよ」
大会が近いらしく、咲ちゃんは、だいぶ気合いが入ってようだ。
「恭ちゃん、スーパー寄って、帰ろうか」
「うんっ」
「京子っ」
スーパーで、中学の同級生の堀井くんに声をかけられた。
「今度さ、同級会をやるって話が出てるんだけど、京子来れるだろ?」
「お店があるときは、行けないな。」
「日曜日にやる予定だから、来いよ」
中学の同級会ねー。私は中学の同級生で、会いたくない人がいる。都会にいた独身の時に絶縁した香織と、ホテルに連れ込まれそうになった圭介だ。二人とも会いたくないな。
「地元以外の人も来るの?」
「今回は、急遽やることになったから、地元にいる人だけでいいだろ」
「じゃあ。考えとく」
「しかし、京子、変わらないな。若いままだよ」
なんか話が長くなりそうだ。
「おじちゃん、ママと喋らないでえ。ボクのママなんだから」
恭ちゃんが、泣き出した。
「恭ちゃん、このおじちゃんは、ママのお友達なのよ」
「いやだー。ママと喋らないでー」
堀井くんは、恭ちゃんに泣かれて困ってしまった。
「堀井くん、ごめんね。じゃあ、同級会の返事は連絡するから」
恭ちゃんを、連れて、堀井くんから離れた。
「恭ちゃん、おかえり。あら、恭ちゃん泣いたの?」
家に帰ってきて、恭ちゃんの顔を見て母親が言った。
「同級生の堀井くんと、スーパーで、会って、ちょっと立ち話したら、おじちゃん、ママと喋らないでって泣き出したの」
「あらまあ。」
「堀井くんに悪いことした」
「さすがーオレの息子」
リビングのソファに寝転がってたリョウタが言った。
「でかしたぞー。恭。」
そういって、リョウタは、恭ちゃんを抱き上げた。
「ボク、パパそっくり」
ほんと。焼きもちやきは、リョウタにそっくり。
リョウタのバンドが、市民まつりにでてから、お店は、やたら混むようになった。
「京子、来たわよー。あら、満席ね」
花江が、ディナータイムに娘さんを連れてきた。
「花江さん、カウンターでも、いいですか」
「リョウタくん、カウンターで、いいわよ」
「すいません」
リョウタは、花江に謝り、カウンターに案内した。
「今。旦那が出張でいないから、娘と来たのよ」
「花江ごめんね。最近やたら混んで」
「もう予約制にするしかないんじゃない」
予約制にすると、回転が悪いから、値段を上げるようになるから、それは、したくないな。やはり、高校生も来れる値段にしたいし、洒落たイタリアンなわけじゃないし、予約制は、避けたい。
「リョウタくん。カルボナーラと、キノコ色々パスタと、明太子パスタと、チーズ色々ピザと、ウィンナーと、あと、デザートに、ババロア二つね」
花江は、今日も食いっぷりがいい。娘さんと二人と食べるにしても豪快だ。
「お母さん、イケメン店長さん、近くでみてもカッコいいね」
花江の娘さんが、コソッと言った。
「リョウタくん。うちの娘も、市民まつりのライブ見に言ったのよ。CD買ったと、言ってた」
「ありがとう」
リョウタが、花江の娘さんに、礼を言ったら、花江の娘さんは、真っ赤になってしまった。
「もう。恥ずかしがって。うちの娘も、私に似てイケメン好きだから、リョウタくん、ごめんねー」
夜9時、閉店なのだが、お客さんが引けなくて、結局、閉店したのは、9時半だった。
「あー疲れたー」
リョウタは、座り込んだ。
「やっぱり、バイト雇うしかないかな。キッチンも一人じゃキツくなってきた」
私は、リョウタに言った。
「ホールは、オレ一人でもなんとかするから、夜の時間に、お義母さんに、キッチン手伝ってもらうとか?恭の面倒は、お義父さんやってもらって」
「でも、お父さんじゃ、恭ちゃんの夕飯の面倒が心配。」
お父さんでは、夕飯の用意をして行っても、毎回レンジで温める食事になる。恭ちゃんをお風呂に、いれて、寝かしつけるまで、出来るか心配だ。
夜は、ゆっくり食事するお客様が多いが、ランチタイムは、仕事の休憩時間にくるお客様が多いので、あまり待たせるわけにいかない。
「ランチタイムに、お母さんに来てもらうようにしようか」
昼なら、恭ちゃんの面倒は、お父さんでも、どうにかなるかもしれない。お昼ご飯食べさせて、お昼寝させてもらえば、助かる。
「そうだな。そうしよ」
バイト雇うのも、何かと大変だ。いずれは、雇わなきゃいけないとは、思ってる。
結局。母親には、ランチタイムの一番混む時間の12時から14時までの間だけ手伝ってもらうことになった。二時間だけなら、父親も恭ちゃんの面倒みれるだろう。
とある工業高校。
軽音楽部の二人が練習を終えて、話してる。
「腹へったな。潤、なんか食っていかない?」
「いいよ」
「あっ。オマエ、パスタ食わないんだっけ?」
「いや別に。パスタは、女の食いもんって感じだから、食わないだけ」
「じゃあさ。ピザもあるから。Avid crownのギターの人が店長やってる店に行かない?」
「Avid crownのギターが。行く。行く。行こうぜ」
ディナータイムの開店と同時に、男子高校生二人が入ってきた
私は、彼らを見て手が止まってしまった。
二人とも、すごい美少年だった。特に、左側の男の子が、ファッション雑誌から出てきたモデルのようだった。
花江がいたら、かなり喜んだにちがいない。
「いらっしゃいませ」
リョウタが、席に水を持って行った。
「店長さん。この間の市民まつりのライブ見ました。カッコ良かったです」
右側の男の子が、リョウタに話しかけた。
「おー、ありがとう」
「オレらも軽音楽部で、バンドやってて、今度。文化祭で、UVERworldのコピーやるんです」
「そうなんだ。どっちが、ボーカル?」
「オレが、ボーカルで、こいつがギターです。」
どうやら左側の美少年がギターらしい。うん。うん。バンドやってるし、モテそうだ。
「良かったら、文化祭見に来てください」
とボーカルの子が、リョウタに言った。
「日曜日だったら、行くよ」
リョウタがキッチンに来たので、言った。
「リョウター。あの子たち、すごい美少年だね」
「なんかあ。京子嬉しそうだな。京子は、年下好きだからな」
リョウタが呆れていた。
「京子、美少年のオーダー。昔風ナポリタンと、明太子パスタと、ミックスピザね。見とれてないで、早く作れよ」
月曜日の朝。
「京子ー。咲ちゃんが載ってる」
朝刊を見て、リョウタが騒いでる。
「咲ちゃん。全国大会、砲丸投げ優勝だってよ」
「うわー。優勝。咲ちゃんスゴい」
咲ちゃんの優勝した記事は県内版にデカデカと載っていた。
「咲ちゃんって、ほんとに凄い選手だったんだね」
「これじゃ。オリンピック選手も夢じゃないな」
全国大会があったから、最近、店に来なかったのか。
ところが、なぜか、私とリョウタは、地方番組の情報番組に、出ることになった。
なんでも、咲ちゃんが優勝した時のインタビューで、「咲さんのエネルギー源は、なんですか」と聞かれたときに、「いつも部活帰りに行くパスタ屋さんのパスタとピザを、食べることです」と答えたらしい。
咲ちゃんが、その地方の情報番組に、スタジオで出演する際に、私達のコメントのVTRを、撮ることになったのである。
休憩時間にテレビ局の人がきた。
「じゃあ。シェフから、コメント言ってもらって、その後に、店長が言ってください」
と、指示されたが、いくら地方番組とはいえ、緊張する。
「さっ、さっ、咲ちゃん・・」
「はい。カット。シェフ噛みすぎです」
「す、すいません」
無理だよー。テレビなんて慣れてないんだから、緊張するよ。
「はい。もう1回」
「咲ちゃん。優勝おめでとう。咲ちゃんが好きそうな新メニューを考えたので、また店に来て下さい」
続いて、リョウタの番だ。
「咲ちゃん。優勝おめでとう。また店に来てくれるのを待ってます」
「はい。オッケー」
はあ。どうにか終わった。こんなに緊張したのは初めてだ。リョウタは、ステージ慣れしてるせいか、あまり緊張してないようだった。
その情報番組は、夕方にやってるので、仕事で見れないので、録画した。恭ちゃんと両親は、リアルタイムで見たらしい。
「京子、ガチガチで、笑ちゃったわ。それに比べ、リョウタくんは堂々としてたわ」
なんとでも言ってくれ。もうテレビなんて、出たくない。
県内の人が見てるということは、誰が見てるのか分からない。恥ずかしい。40歳のオバサンが、恥ずかしい。絶対見た人に笑われてる。
「まあ、京子、これも店の宣伝になったと思って諦めろよ」
リョウタが、上から目線で言ったのが、むかついた。
リョウタが、休憩時間に買い物行ってるとき、偶然に、工業高校のギターの美少年に会った。
「リョウタさん。こんにちは」
「今、帰り?バンドの練習やってる?」
「はい。でも、文化祭近いのに、オレ、ギター上手く弾けなくて」
美少年は、ちょっと落ち込んでるようだった。
「誰だって、最初から上手く弾けないよ。」
「でも、このままじゃ、バンドのメンバーに迷惑かけそうで」
わりと深刻問題らしい。
「リョウタさん。オレに、ギター教えてくれませんか」
そうして、リョウタは、美少年にギターを教えることになった。