披露宴。翼くん編。
土曜日のランチタイムに、翼が、彼女と彼女の娘さんを連れて来た。
「リョウタ、彼女の紗香と、彼女の娘のルカちゃん」
翼くんは、リョウタに彼女と、彼女の娘さんを紹介した。
「こんにちわ」
「翼の同級生のリョウタです」
34歳だという彼女は、可愛らしくて、若くみえた。娘さんのルカちゃんも、彼女に似て可愛かった。
「リョウタ。実はリョウタと京子さんに、頼みあるんだ」
「じゃあ、休憩までいるか?そんとき、話を聞くよ」
翼くんの頼みとは、結婚披露パーティーを、うちの店で、やりたいということだった。お互い二回目の結婚なので、披露宴を盛大にやるつもりはなく、身内とごく親しい人だけを呼んで、パーティーをやりたいということだった。
パーティーとなると、バイキング形式にしたほうがいいのだろうか。年齢層も聞かないと、パスタとピザだけって、わけにもいかない。
「パーティーとなると、キッチンは私一人ではキツイ、お母さんに手伝ってもらうにしても、恭ちゃんの世話もあるしな。花江に手伝ってもらえるように頼んでみるかな。」
「ホールは、裕太に頼んでみるよ」
裕太くんは、長年、居酒屋のホールやってたので、手伝ってもらえると助かる。
早速。花江に電話した。
「月末の日曜日。翼くんの結婚披露パーティーを貸しきりで、うちの店でやるんだけど、バイト代はずむから、花江、料理のほう手伝ってくれないかな」
「バイト代はいらないわよ。私と京子の仲でしょう。タダで、手伝うわよ。なんなら、娘も皿洗いにでも、連れていくわよ」
「ほんとに?!由衣ちゃんも手伝ってくれるのは助かる」
はー助かった。さすが花江だ。話が早い。
翼くんの招待客は、15人。彼女の招待客は、11人。二人の会社の同僚4人。全部で30人である。
「この人数だと、けっこうな料理の量になるわね」
水曜日に、私の家で、料理の打ち合わせを、花江と、リョウタのお父さんにも参加してもらって、話し合った。
「翼くんのおばあさんも出席するから、年配の方が好む料理も出したほうがいいのかな。うどんとか」
私が、言った。
「京子。こういう時だから食べれるメニューがあるから。無理に和食にしなくていんじゃない。今は、お年寄りでもパスタ食べるから」
母親が言った。
「それは、言える。普段食べないからパーティーだから、食べれるメニューってあるからね。」
花江が母親の意見に賛同した。
パーティーで、パスタとピザだけでは、物足りないので、サラダ、グラタン、ローストビーフを作ることにした。あと、魚介類が足りない。ホタテを使いたいが、この辺のスーパーのホタテで、小ぶりで、活きのよさがない。それを言ったら、リョウタのお父さんが、漁港の市場に、直接送ってくれるように手配してみると言ってくれたので、ホタテ料理もだせそうだ。
休みの日に、都会に足りない食器をリョウタと恭ちゃんと買いにいった帰りに、イタリアンのバイキングのお店に寄ってみた。
パスタは、三種類だった。サラダは、自分で好きなのを取って、組み合わせる形だった。デザートは、ティラミス、ケーキなどが、あった。
「パスタは、京子の作ったパスタのほうが、美味いな」
リョウタがパスタを食べて言った。
やはりバイキングだと、作りたてに、ぶつかるのが、難しいから、冷めて美味しさが半減するのかもしれない。
「ケーキも、ママのケーキが美味しいー」
恭ちゃんがケーキを食べて言った。
ケーキが、いくらバイキングにしても、1個が小さい気がする。こんなに小さいのでは、クリームの味も分からない。時間が経ってるのか、スポンジもパサパサだった。
バイキングだと、回転が悪いと、リスクがある。翼くんの結婚披露パーティーでは、料理の減りを見て、随時、作りたてをだすほうがいいだろう。
とりあえず、メニューが決まった。パスタ8種類。サラダ2種類。グラタン2種類。ピザ6種類。ローストビーフ。ホタテのソテー。パンを食べたい人のために、ブルスケッタ。デザートは、ガトーショコラ。かぼちゃのタルト、チーズケーキ。
かぼちゃのタルトは、花江の推薦である。
パスタと、ピザは、最初、三種類だして、なくなった次点で、別の種類を作りたてで、だしていくことにした。
日曜日。翼くんの披露パーティーは、12時からなので、その前に、リョウタのバンドのメンバーが来てくれて、私の父親とホールのセッティングをしてくれた。
キッチンは、配達がてら、リョウタの両親が来てくれて、恭ちゃんの面倒を見てくれることになったので、私の母親と、花江の三人で、調理をする。食器の洗い物に、花江の娘さんの由衣ちゃんと、駿くんの奥さんの彩ちゃんが来てくれることになった。
こんだけヘルプがいれば、時間まで、間に合いそうだ。
受付は、翼くんの地元の友達がしてくれるそうだ。 司会も、翼くんの同級生で、ローカルのラジオのDJしている人に頼んだらしい。
時間が近くなると、ぞくぞくと出席者が来た。新郎新婦も到着し、パーティーは、始まった。
しかし、実際、始まってるみると、料理の減りが異常に早く、キッチンは、息つく暇もない状態だった。
「京子、パスタ、もう2皿なくなりそうだ」
皿と言っても、大皿のパスタである。
「リョウタ、ペペロンチーノと、ボンゴレ出来たから、持っていって」
目が回りそうな忙しさだ。花江は、ピザを次々に焼いている。
母親には、ひたすら材料を切ってもらった。
ホールのスタッフをやってる父親とリョウタと、バンドのメンバーの5人も、飲み物のオーダーや、料理の上げ下げに、てんてこまいだった。
由衣ちゃんと、彩ちゃんも必死に、下げた食器を洗っていた。
パーティーも終盤になり、みなさん、デザートにいき、落ち着いてきたので、なんとか新婦さんの両親への手紙が耳に入った。
「私は、1度結婚に失敗しています。なので、もう結婚する気はありませんでした。でも、翼さんと出会って、その思いは消えました。翼さんの誠実で、嘘のない真っ直ぐな気持ちに、この人と一緒にいたいと思うようになりました。娘を可愛がってくれてます。娘も翼さんと一緒にいたいと言いました。お父さん、お母さん、色々悩ませて、親不孝な娘でしたが、今度は、お父さんとお母さんが、私の生活を笑顔で見られるようにします。今まで、ありがとう。今度は幸せになります。」
新婦さんの手紙をきいて、もらい泣きをした。
続いて、翼くんからの挨拶だ。
「本日は、ご出席頂きまして、ありがとうございます。お互い二回目の結婚ですが、もう不安はありません。なぜなら、妻に、愛情の他に、信頼もあるからです。それを教えてくれのは、このお店のリョウタと京子さん夫婦です。この二人のような夫婦に、俺達もなれたらいいと思ってます。」
翼くんの言葉に、私達夫婦は、信頼しあってるように、写ってたのだろうかと、思ったが、信頼がなければ、一緒に店をやれなかったかもしれないと、改めて思った。
どうにか、結婚披露パーティーは、無事に終わった。
作りたてを、出したのが良かったのか、料理の評判は良かった。出席者に、満足して頂けて、何よりです。
パーティーの片付けが終わってから、リョウタのバンドのメンバーと、花江と、由衣ちゃんと、彩ちゃんに、アルバイト代を渡した。みんなは、受け取れないと言ってくれたが、せっかくの休みに皆、手伝ってくれたのだから、無理矢理受け取ってもらった。
「さすがに、今日は疲れたな」
風呂上がりにリョウタが言った。
私は、あまりの疲労に、ベットに、うなだれていた。
「あっ。京子、白髪あるぞ」
寝ていた私の髪を触って、リョウタが言った。
うそー。白髪なんて、ショック。私は、また、うなだれた。
「白髪、抜いてやろうか」
リョウタは、私の白髪を抜こうとした。
「やめてー。白髪抜くと、増えるって言うよー」
私は、白髪を抜かれるのを拒んだ。
「それ、ほんとかよー」
もう白髪なんて、げんなり。そんな年なんだー。
最近、細かい字が苦手だ。そろそろ老眼も始まるかもしれない。
ますます、リョウタとの年の差を実感した今である。




