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二階の部屋を掃除機かけてると、リョウタが来た。

掃除機をかけてる私に、後ろから、触ってきた。

「京子、腰周り増えたんじゃないか」

「やめて。離してっ」

私は、思いっきり、リョウタの手を振り払った。

「なんだよ」

リョウタは、ムッとしていた。

「掃除してるんだから、邪魔しないで」

「わかったよ。コンビニ行ってくる

リョウタは、拗ねて降りていった。


痛いところをつかれた。私は、ウエストが、確かに増えている。

独身時代より、ウエストが10センチも太くなったのである。

気には、していたが、ジムも、すぐ止めてしまったし、なかなか細くならない。リョウタに気づかれたのでは、どうしても、ウエストを細くしたい。



リョウタは、ジャンプを買いにコンビニに行った。

「リョウタくんっ。ひとり?」

「花江さん、京子に邪魔にされたんですよ」

コンビニに、花江がいた。

「京子が、リョウタくんを邪魔にするわけないわよ」

「そうですか?京子、最近、素っ気ないんですよ」

「ああ。京子、照れてるのよ」

「照れてる?」

「京子、あの元カノ騒動の時、泣いてリョウタくんを責めたこと気にしてるのよ。リョウタくんに、引かれたんじゃないかって。リョウタくんに、改めて、恋しちゃってるのよ。恋する乙女よ。本当は、勝手に京子の気持ちをリョウタくんに言っては、いけないけど、リョウタくん、素っ気ないとか、邪魔にされてるとか、誤解してるみたいだから、言ったほうがいいと思ってね」

花江は、リョウタに言った。

「ふーん。そうなんだ」




「たらいまー」

拗ねて出ていったリョウタが、上機嫌で、帰ってきた。

キッチンにいる私のところに来た。

「京子、夕飯、なに?」

「とんかつ」

「オレの好物じゃん」

リョウタは、嬉しそうに笑った。

「恭ちゃんも好きだから」

「ふーん。」


恭ちゃんは、リビングで、母親とテレビを見ていた。

「恭、オレ、二階でジャンプ読んでるから」

「うんっ。」

リョウタは、鼻歌を、歌って二階に上がって行った。



「パパー」

恭ちゃんが、アニメを見終わってから、二階に行った。

寝転がって、ジャンプを読んでるリョウタに、恭ちゃんは、飛びのった。

夕飯だから、二人を呼びに二階に行くと、二人は寝ていた。

私は、二人の寝顔を見ながら、愛しい人が二人いることを実感した。

そして、どうしても、痩せて、ウエストのくびれを作らなきゃと誓った。



お店の休憩時間に食べるのは、オニギリとサラダだけにした。それを見て、リョウタは、それだけでは、夜にお腹が減るので、悪循環だと言うが、夜も食べなければいい。しかし、リョウタが、帰って母親の作った夜食を食べるのを見て、食欲がそそられて、ついつい食べてしまう。あー上手くいかない。



リョウタがお風呂に入ってるときに、私のスマホに着信があった。

高校の同級生の美穂からだった。

「京子、久しぶり。元気だった?この間、由紀にあってさ。京子の話になって、結婚して地元に帰ってきたというから、どうしてるかなと思って、電話してみたの」

村井美穂は、高校の時に、学級委員をやる優等生だった。短大に行ってから、結婚をしたらしいが、噂によるとバツ2らしい。子供は、息子さんが二人いるそうだ。今は、実家がある隣の市に住んでるらしい。

「由紀言ってたけど、京子、相変わらず綺麗らしいわね。年下のイケメンの旦那さんを捕まえたんだって?いいわね」

「でも、産後、やっぱり太っちゃって、ウエストが、くびれがない。ダイエットしてるんだけど、なかなか痩せなくて」

「私、ウエスト56センチよ」

「えー。56センチ?美穂すごいっー」

なんでも、1回目の旦那さんの時に、産後太ったら、あっさり浮気されて、別れたので、悔しくて、ダイエットして、今も、そのウエストを保ってるらしい。

「京子、久しぶりに会って、ランチしない?積もる話もあるし。その時に、ウエストのくびれを保つ秘訣も教えるわ」

そういうことで、今度の休みに美穂と会うことにした。ウエストのくびれを保つ秘訣を教えてくれるなんて、痩せなくて焦ってる私はワラをつかむ勢いだった。




休みの日に、ランチするために、美穂のいる隣の市まで行った。

「京子っー。こっちー」

「美穂、久しぶりっ」

「京子、やっぱり綺麗ね。でも、ウエストが、高校の時より、だいぶ太いわね」

いきなり、ウエストのことをハッキリ言われた。

「私、美味しいカフェ知ってるから、そこ行かない?」

そして、美穂が、お薦めのカフェについていった。


しかし、ついていってみると、カフェではなく、小さな事務所みたいなところに連れていかれた。

中に入ると、コーヒーは、出されたが、全くカフェではない。

美穂は、パンフレットを出し始めた。

「この矯正下着なんだけど、私も今着てるんだけど、効果抜群よ。バストアップ、ヒップアップ、そしてウエスト。きれいなボディーラインを出してくれるの。私達、40歳じゃないの。タダでなんて、痩せないわよ。やはりお金をかけないと、痩せない年になったのよ。京子なんて、年下の旦那様だから、一層体型には気をつけないとね。京子は、同級生だし、特別値引きして、100万円で、提供するわ」



100万円?! ただのボディースーツが100万円とは。ありえないー。




私が、驚いた顔をしてると、美穂は、また語り始めた。

「京子。100万円くらいで、迷ってると、年下の旦那さんに浮気されるわよ。男は浮気する生き物なの。いくら京子が、綺麗でも、奥さんが、胸も垂れて、お尻も、垂れて、寸胴になったら、浮気されても、当たり前なのよ。それは、京子が、努力をしてないと見なされるの。だから、旦那さまに、飽きられないために、このボディースーツきて、美しい体にしなくちゃ。美しい体を手にいれるなら、100万円なんて、安いと思わなきゃ」


私は、もうガッカリした。友達と思ってた美穂に、勧誘のために、誘われたのだと、今、気付く自分のバカさにも、呆れた。



「100万円は、無理だよ」

リョウタと働いたお金を、こんな矯正下着なんかに使えない。

「何言ってるの?!100万円なんて、京子には、安いもんでしょう。お店も随分繁盛してるみたいだし。お店の土地だって買ったそうじゃない。貸し店舗じゃないんでしょう。さすが、オーナーさんね。そんなオーナーさんが、太ってどうするのっ」

そこまで知っているなんて、調べてから、私に連絡をよこしたに違いない。

美穂の顔は、だんだん般若のように、怖い顔になっていった。


美穂は、今度は自分の苦労話を語り始めた。

美穂は、短大を夜はホステスをして、自分で学費を稼いで卒業したそうだ。だから、私みたいに、県内一学費の高い私立大学を親に出してもらって、何不自由ない暮らしをした人をみると、腹立つそうだ。私は両親ともに公務員で就職の時も困らなかっただろうと言ってきた。美穂は、ホステスしたお客さんに体で取り入って、就職先の会社を紹介してもらった。体をはってまで、したのよっと言っていた。


そんなの私の知ったこっちゃない。



結婚をすれば、男運がなかったそうだ。1回目の旦那は、金持ちだったが、すぐ浮気され、2回目の旦那は、ギャンブル好きで、お金を渡さないと暴力をふるったらしい。

「京子は、旦那さんに、暴力ふるわれたことあるのっ?」

「ないわよ」

リョウタが、そんなことするわけない。

「私は、暴力ふるわれて、骨折したのよ。子供をかばうのに必死だったわ。京子みたいな幸せな人に、私の苦労が分かる?」


わかるわけねーだろ。



「京子、私達、友達でしょう。私、息子を大学に入れたいの。息子に私みたいな思いをさせたくないの。契約とらないと、クビかもしれない。私を助けると思って、この契約書を書いて印鑑を押して。お願いよ。優しい京子なら、押せるわよね」


今度は泣きついてきた。この手、あの手で、押してくる。


「美穂。無理だから」

私が断ると、泣き顔だった美穂の顔が、悪役レスラーのようになり


「印鑑押すまで帰さないわっ。時間やるから、よーく考えなさい」

声をあらげて、部屋を、出ていった。そうして、外から私が逃げないようにカギをかけたのである。



どうしよう。本当に帰れない。リョウタも恭ちゃんも待ってる。夕飯も作らなきゃいけないのに。




はあー。ウエストのくびれで、こんなことになるなんて。

高校の時の美穂は、学級委員で、クラスの皆をまとめていた。合唱祭の時も、やる気のない皆を、ひとりひとり、練習に参加するように説得して歩いた。皆からの信頼も厚かった美穂が、こんな風になるなんて。

でも、高校のときは、仮の姿で、これが本性なのだろうか。

だとしたら、私も、まだ人の見る目がないな。ガッカリだ。哀しい。



「お義母さん、京子、遅くない?もう4時だよ。ランチの時間じゃないよね」

リョウタが、母親に言った。

「美穂ちゃんでしょう?久しぶりに会ったから、話盛り上がってるのかもよ」


「あっ、京子から、電話きた」

リョウタが、携帯に、出ると

「リョウタ、助けて・・」

「京子っ、どうしたんだ?」



カギを、閉められて、出られない私は、うなだれていた。もう自己嫌悪と人間不信と、要り混ざって、気力がなくなっていた。



私が閉じ込められた部屋の外では、美穂とスタッフが、契約させる案を練っていた。

事務所のドアが開き

「オレの妻を、返してください」

リョウタがきた。


美穂とスタッフとリョウタは、話し合いをした。



カギが、開いた。

「京子。帰ろう」

リョウタが立っていた。

「リョウター」

私は泣きながら、リョウタにしがみついた。

「もう大丈夫だ。帰ろう」


帰るときに、美穂に、リョウタは言った。

「ウエストにくびれがなくなろうと、オレは、変わらずに、妻を愛してますから。太っただけで壊れる薄い愛じゃないですから、オレ達」



私は、無事に家に帰った。

「ママー」

恭ちゃんが帰らないのを心配したのか泣きながら来た。

「恭ちゃん、ごめんね」

私は恭ちゃんを抱き締めた。




「また友達、減っちゃったな」

私は、リョウタに言った。

「別にいいじゃん。オレと恭がいるんだから。オレと恭は、京子を裏切らないよ」

「ボク、うらぎらないー」

恭ちゃんが、リョウタの真似をして言った。




その後、美穂のいた会社は、摘発された。

100万円の矯正下着は、本当は3万円だったそうだ。



美穂は、本当は、私を友達と思っていなかったんだね。



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