披露宴 裕太くん編。
今度の日曜日は、リョウタのバンドのボーカルの裕太くんの結婚式だ。式も披露宴も、リョウタと恭ちゃんと三人を招待してくれた。
裕太くんには、私達のことで、すごい御世話になったので、リョウタには、二次会も出席できるように、私と恭ちゃんは、マンションで待機することにした。
日曜日。
「店長ー。奥さんー。」
リョウタが25歳の時、アルバイトしていた居酒屋の中川店長と奥さんが来ていた。
「リョウター。京子さんー。久しぶり」
居酒屋の中川店長夫婦にも、都会に住んでいた時、お世話になった。この店長夫婦の影響で、店をやりたいという気持ちが強くなった。
「恭ちゃんっ、こんなに大きくなってー」
奥さんは、恭ちゃんを見ると、嬉しそうに、恭ちゃんと目を合わせるため、腰をおろした。
「リョウタくん、そっくり」
「ボク、パパそっくり」
「可愛いー」
奥さんは、本当に恭ちゃんに会えて感動していた。
「まるで、久しぶりに孫に再会したみたいだな」
中川店長は、奥さんの感動ぶりを見て言った。
リョウタは、バンドのメンバーと一緒の席だったので、私と恭ちゃんは、中川店長夫婦と、居酒屋で掛け持ちでアルバイトしてるシングルマザーの成子さんと一緒の席だった。
恭ちゃんの隣の席だった奥さんは、恭ちゃんの相手をしてくれた。
リョウタの友人代表の祝辞がはじまるとき
「ママー。おしっこ」
恭ちゃんが、トイレと言い出した。
「京子さん、私がトイレ連れていくから、リョウタくんの祝辞聞いてていいわよ」
奥さんは、恭ちゃんをトイレに連れていった。
トイレから帰ってくると
「おばちゃんに買ってもらった」
奥さんは、恭ちゃんに、リンゴジュースを買ってくれたようだ。
「買って頂いて、すいません」
私は奥さんに謝った。
「いいのよ」
奥さんに、恭ちゃんの面倒を見てもらって申し訳なかったが、奥さんが、あまりにも恭ちゃんの世話を嬉しそうに見てるので、ついお願いしてしまった。
「続いては、新郎のバンドAvid crownの演奏です」
司会者が、紹介した。
「パパー。」
恭ちゃんがリョウタを指差すと、奥さんが、リョウタのバンドの近くまで、恭ちゃんを連れていった。
「なんだか女房、楽しそうだな」
中川店長が奥さんを見て言った。
Avid crownは、裕太くんが作詞して、リョウタが作曲した裕太くんの奥さんに捧げるラブソングを演奏した。
披露宴が終わり、ロビーに出ると、リョウタが来たので、中川店長と話をした。
奥さんは、恭ちゃんと、ロビーのソファに座り話をしていた。
「中川店長。今日は、奥さんに恭ちゃんをお任せして、すいませんでした。助かりました。ありがとうございます」
私は、中川店長に、礼をのべた。
「いや、こちらこそ、ありがとう。女房のやつ、恭ちゃんの世話出来て、嬉しそうだったから」
店長に、礼を言われた。
「オレたち夫婦、若いときに息子を亡くしてるんだ。生きてれば、恭ちゃんくらいの孫がいても、おかしくないだろう。女房、ほんと嬉しそうで、オレたちの息子の成長は見れなかったけど、恭ちゃんが成長したのを見て、自分の息子を見るようで、嬉しかったんだろう。京子さんも、京子さんのやり方があると思うのに、今日は、女房に、恭ちゃんを任せてくれて、ありがとう。」
中川店長夫婦には、子供がいなかった。理由は知らなかった。でも、私が流産したとき、店長夫婦は、とても心配してくれた。
今思えば、子供を亡くした気持ちが、とても分かったのだろう。
「おいっ。そろそろ帰るぞっ」
中川店長は、奥さんを呼んだ。
「じゃな、リョウタ、京子さん、恭ちゃん、元気でな。たまには、うちの店にも顔だせよ」
「はい。行きます。うちの店にも来てください」
リョウタが、店長に言った。
「恭ちゃん、バイバイ」
奥さんは、名残おしそうに、恭ちゃんに言った。
「おばちゃん、バイバイ」
中川店長と奥さんが、帰ろうと歩き始めた時、私は、持っていた小さいブーケを恭ちゃんに渡した。
「おばちゃんに、これを渡してきて」
「うんっ」
「おばちゃんー」
恭ちゃんは、奥さんの所に、走って行った。
「おばちゃん、ありがとう」
そう言って、恭ちゃんは、奥さんにブーケを渡した。
「恭ちゃん、ありがとう・・」
奥さんは、泣きながら、恭ちゃんを抱きしめた。
中川店長と奥さんは、ずっと二人で、亡くなった息子さんを想い暮らしていたのだろう。
アルバイトのリョウタや裕太くんに、父親のように、母親のように、バンドすることを応援してくれて、お金のないリョウタと裕太くんに、いつもお腹いっぱい賄いを食べさせてくれて。中川店長と奥さんがいたから、都会で、どうにか食べていけたと言ってもいいだろう。
リョウタは、二次会に出るので、私と恭ちゃんは、マンションに行った。
夜8時過ぎ、リョウタがマンションに帰ってきた。
「早かったね。裕太くんと話もあったんじゃないの?」
「三次会は、でなかった。同級生とも話あるだろうし」
リョウタは、ネクタイをほどきながら、ソファに座った。
「恭は?寝たの?」
「疲れたみたいで、夕飯食べたら、爆睡」
「あー、さすがに、疲れたか」
「恭ちゃんなりに、気を使ったから疲れたのね」
「でも、奥さん嬉しそうだったから、良かったんじゃないか」
「そうだね」
寝室に行って、二人で、恭ちゃんの顔を見た。
恭ちゃん、ありがとう。お疲れさま。
「リョウタも、疲れてるだろうし、今日は泊まって、朝帰ろうか」
「ああ。なんか、嬉しいな。三人で、ここに、泊まれて」
「そうだね」
「京子と、同棲してた時、思い出す」
リョウタと暮らしたマンション。色々あったな。でも、都会で暮らした思い出が、いっぱい詰まっている。
「中川店長夫婦を見て、オレは、京子と店やりたいと思った」
「うん」
中川店長夫婦が、私とリョウタの理想の夫婦だった。
私達も、中川店長夫婦のように、いつまでも店を続けて行きたい。




