元カノ
日曜日の休みに、リョウタは、バンドの練習に行った。バンドの練習の後、専門学校の友達と久しぶりに集まって飲むみたいで、遅くなりそうだ。翼くんも、その飲み会に参加するらしい。
「なんだ。リョウタ、またまたカッコよくなりやがって。結婚したくせに、全くオヤジくさくなってねーな」
アツシが言った。
「リョウタの奥さん、色っぽいから」
翼が、言った。
「年上もいいかもな。最近、会社の若い子に、きゃぴきゃぴされるとムカついてくる。安らぎほしい。オレも結婚してー」
アツシは、新人の若い子に手を焼いてるようだ。
「きゃー。みんな久しぶりっ」
テンションの高い女が入ってきた。
「誰?呼んだの」
リョウタは、怪訝そうだった。
「まだ来てないけど、トオルが呼んだらしい」
「リョウタ久しぶりっー。結婚したんだってー」
このテンションの高い女は、優子だった。
「オレ、そろそろ帰るわ」
「リョウタもう帰るのかよ。まだ7時だぞ」
「そうよっ。リョウタまだ居てよー」
うっせー女だ。
「翼は、まだいるんだろ。じゃ、お先」
リョウタは、帰っていった。
「リョウタ、カッコよくなってて、ヤバイ。でも、年上のオバサンと結婚したんでしょう。もったいない。お金かしら」
「綺麗な奥さんだよ。気遣いあるし、大人だし、素敵な人だよ。優子なんて勝ち目ないくらい色っぽいし」
翼が優子に言った。
「そうなの?でも、リョウタ騙されたんじゃないの。お金で」
優子は、リョウタが年上と結婚したのが、納得いかないようだった。
「たらいま」
リョウタが、もう帰ってきた。
「早かったね。飲み会じゃなかったの?」
「うるせー奴きたから、帰ってきた。翼は、まだいるけど」
「良かったの?みんなと久しぶりだったんでしょう」
「別にいーよ。京子、腹減った」
あんまり食べないうちに、帰ってきたのだろうか。リョウタに、鍋焼きうどんを作った。
「美味い。早く帰ってきて良かった」
よっぽど、お腹がすいてたのだろうか。あっという間に、鍋焼きうどんを食べた。
恭ちゃんが寝てから、二人でソファで、まったりしてた。
「京子、耳掃除して」
膝枕して、リョウタの耳を掃除した。
リョウタが、私の両親を大事にしてくれて、両親とリョウタと恭ちゃんと暮らせて、幸せだった。
月曜日のディナータイムに、翼くんが来た。
「おー翼。昨日、遅くまでいたのかよ」
「トオルきてから、オレも9時頃、帰ってきた。それより、リョウタ。トオルが、優子に、リョウタのLINEIDを教えたらしい」
「げっ。まじかよ。トオルの奴、勝手に教えるなよ。迷惑だな」
「優子。未練タラタラだから、気を付けろよ」
翼くんが、リョウタにボソッと言った。
店が終わって、リョウタがお風呂に入ってるとき、リョウタのスマホにLINEが着た音がなった。見るつもりがなかったけど、私の目の前に、リョウタのスマホがあったので、LINEの表示が見えてしまった。
「元カノの優子だよ。昨日は、リョウタに会えて嬉しかったよぉ。また会いたい♥」
元カノって、昨日会ってたの?
「京子も風呂入ってこいよ」
リョウタが部屋に入って来た。
リョウタは、スマホにLINEが来たのに気付いたのか、スマホを見た。
「なんなんだ、コイツ」
ちっ。とリョウタは舌打ちした。
「昨日、元カノと会ってたの?」
「元カノじゃねーよ。専門学校の同級生だ。コイツと付き合った覚えない。昨日は、飲み会にトオルが、呼んだから来たんだよ」
「バンド練習って都会行く時、いつも会ってたの?」
こんなこと言うつもりじゃないのに、私はリョウタを責め始めた。
「会ってねーよ。なんで、そんな風に考えるんだよ」
「そんなの、ひどい・・」
私は泣いてしまった。涙が止まらなくて、リョウタを責めた。
「オレが信じらないのかよ」
「もうっ、いいー」
そう言って私は泣きながら、布団をかぶった。
リョウタは、居づらくなったのか、部屋から出ていった。
昨日まで、幸せと思っていたのに、なんで今日は、こんな気持ちになるんだろう。
幸せだと思ってた分、裏切らたと思うと、辛かった。
リョウタが、リビングに降りていった。
「あら。リョウタくん、どうしたの」
リビングには、母親がいた。
「京子、すねちゃって」
「何かしたの?」
「昨日、専門学校の飲み会で、たまたま元カノに会ったの知ったら、京子に、泣かれちゃって」
そう言って、リョウタは、リビングのソファに座った。
「オレ、そんなに信用ないのかなー」
リョウタは、ため息をついた。
「京子は、不安なのよ。だって、あの子、40歳よ。不安にもなるわよ。リョウタくんは若くて、イケメンだし。信用してないわけじゃないけど、リョウタくんが、若い子と居たって知ったら、自分は40歳だし、不安なるわね」
「なんで、年を気にするかなー」
「リョウタくん。京子は、これから、情緒不安定になったり、イライラしたり、リョウタくんに当たってしまうことがあるかもしれない。女には、更年期が来るときがあるから。だから、その時は、大目に見てやってちょうだい」
母親は、リョウタに、言った。
「はい。わかりました」
リョウタが2階に上がってきた。
「まだ、泣いてるのかよ」
「浮気したら、離婚するから」
私は思ってもないことをアテツケに、リョウタに言ってしまった。
「なんで、そんなに簡単に言えるんだよ。オレ達の出会ってからの10年って、そんな軽いもんじゃないだろ。京子にとって、オレの存在は、そんな薄いもんだったんだ?」
「不安なの。私、40歳よ。不安になる。」
「不安にさせないって言ったろ。なんで、信じれないんだよ」
リョウタは、嘘ついてない。でも、世代には境界線があって、それを越えるのは、信頼関係だ。信頼するまで、重ねあった10年。
リョウタが言うように、決して軽くない。
でも、リョウタが大人になって、余裕があって、私が一人で空回りしてるみたいで、哀しかった。
「京子、元気ないね。なんかあったの?」
花江とランチした。
「専門学校の飲み会で、元カノとリョウタがあったことで、泣いてリョウタを責めてしまって、私、見苦しかった。きっと、リョウタに呆れられたよ」
「京子、それは仕方ないよ。誰だって、元カノと会ったって聞いたら不安になるよ。」
「リョウタは、飲み会を途中で帰ってきて、早く帰ってきたのに。嘘ついてないのに。それでも、責めてしまって。私、年上なのに、奥さん失格だよ」
「京子、不安になるのに、年は、関係ないよ。それだけ、京子がリョウタくんが好きだから不安になるんだよ。」
花江は、花江らしく私を慰めた。
木曜日のランチタイム。
「京子っ、来たわよー」
花江が一人できた。昨日の私を心配して来たのかもしれない。
「リョウタくん。明太子パスタに、ミックスピザね」
「花江さん。明太子珍しいですね」
「今日は、無性に、明太子が食べたいのよ」
初めてのお客様が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
げっ。こいつかよー。
「リョウター。有給とって、来ちゃった。だって、この店、日曜日休みなんでしょうー。飲み会の時、リョウタすぐ帰っちゃうんだもんー。もっと話したかったのにぃー」
リョウタの専門学校の元カノの優子らしい。リョウタは、付き合ったうちに入らないと言っている。
花江が、優子を、じっーと見ていた。
「優子。もうすぐ休憩時間はいるから、そこの公園で待っててくれないか。話がある。」
リョウタが、優子に言った。
「わかったー。公園で待ってるね」
優子は、喜んでいた。
休憩時間になるとリョウタは、出ていった。
公園に行くと、優子は、いた。
「リョウタっ」
「もう、いい加減にしてくれ。勝手に人のLINEID聞いて、あんなLINEよこして。オレ、女房に泣かれたんだぞ」
「えー。奥さん、オバサンなのに、そんなことくらいで、泣くの。恥ずかしいー」
優子は、オバサンだと思ってバカにしている。
「はっきり言う。迷惑だ。オマエと付き合った覚えもない。気安く元カノって言うな。店まできて、やりすぎだろーが。」
「ひどいっ。専門学校の時、私と、寝たくせに。リョウタは、遊びでも、私はリョウタのこと好きだったのよ。今だって忘れてない」
「調子いいこと言うなよ。何人もの男と付き合ったくせによ。忘れてないとか気持ちわりーよ」
「ほんとよ。私はリョウタのことだけ、ずっと」
優子は、なかなか、しつこかった。
「ちょっとおっ、アンタいい加減にしなさいよっ。リョウタくんは、迷惑だって言ってるんでしょーがっ」
リョウタが、見ると、花江が仁王立ちで、立っていた。
「店まできて、しつこい女ねっ。ブスのくせに、リョウタくんが、アンタなんか相手にするわけないでしょっ」
「何?このオバサン? (はっ、もしかして、リョウタの年上の奥さんかも)」
優子は、花江の迫力に、たじろいでいた。
「京子を哀しませる奴は、私が許さないっ。アンタ、親の電話番号教えなさいよっ。アンタの親に、結婚してる男に、しつこく付きまとう娘なんて、どういう躾してるんだって、文句言ってやるわっ。早く親の電話番号言いなさいっ」
花江は、優子に詰め寄った。
「きゃー」
優子は、走って逃げた。
「二度と来るなっー。このブスがっー」
走っていく優子に、花江は叫んだ。
はあー。はあー。
花江は、大きな肩で、息を切らしていた。
「リョウタくん。これで大丈夫よ。もう来ないわ」
「あ、ありがとうございます。花江さん」
リョウタは、花江だけは、敵に回さないようにしようと誓った。
その夜。専門学校の女子のLINEグループに、優子から、通達が、回った。
「リョウタには関わらないほうがいいわよ。奥さんが、鬼のように怖いから。リョウタに手だしたら、殺されるわよ」
いつの間にか、リョウタの奥さんは、花江ということになっていた。




