披露宴。駿くん編。
もうすぐ駿くんの結婚式だ。
やはり、田舎なので、式場は取りやすかったようだ。
都会でする裕太くんと、慶子は、前から予約していて、やっと取れたらしい。
「京子、裕太くんと、慶子ちゃんの結婚式は、都会だから、ワンピースでいいけど、湯川さんちの息子さんの披露宴は、地元だから着物にしたら?私の訪問着貸すわよ」
母親が、駿くんの披露宴に、着物を薦めた。
「着物ねー。面倒くさそうだし、老けそう」
「あなたも40歳なんだから、着物ぐらい着なさい。」
そうは、いうけど、着物って、振り袖じゃないんだから、老けるんだよね。
「着物いいじゃんー。お義母さんの言うとおり着物にしろよ」
リョウタが、わたしに着物を薦めた。
「だって着物老けるもん。リョウタと、並んだら、一層老けてみえて、年の差のすごさが、わかるよー」
「別にいいじゃん。京子の着物姿見たい。髪もアップにしてさ。いいねー」
オジサンじゃあるまいし、リョウタは、着物好きなのか?
やはり専業農家の湯川さんの息子の駿くんの披露宴の招待客の人数は、すごいらしい。新婦側の招待客を人数を合わせるのは、大変だから、新郎側の招待客の方が、多いらしい。
近所ということで、花江も夫婦で、呼ばれたらしい。
披露宴は、12時からだから、朝イチで、美容院を予約している。
「お義母さん、京子遅いよね。美容院、混んでるのかな」
11時になっても、私が帰ってこないから、リョウタが、心配した。
「着物の着付けもだからね。恭ちゃんにも、着替えさせなくちゃいけないのにね」
「ごめんねー。着付けに、時間かかちゃって」
リョウタが、私を見て、止まっていた。
「あら。京子似合うじゃない」
お母さんは、誉めてくれた。
「恭ちゃん、着替えるから、2階行こう」
「ママ、綺麗」
「ありがとう。恭ちゃん」
なのに、リョウタは、何も言ってくれない。
「オレも2階行く」
リョウタが、2階に付いてきた。
「京子、すげー似合う。色っぺー」
そう言って、リョウタが、寝室に入ると後ろから抱きついてきた。
「やめて。せっかく着付けしたのが、くずれちゃう」
「ちえっ」
リョウタは、拗ねて、ソファに座った。
私が、恭ちゃんに、子供用のフォーマルを着せてると、リョウタが、私をじーっと見ていた。
「やべー。そのアップの髪もやべー」
リョウタは、うなじフェチである。
「パパ、うるさいねー」
恭ちゃんの着替えが完了した。
可愛いー。うふふ。スーツは、リョウタとお揃いである。蝶ネクタイじゃなく、ネクタイも、リョウタとお揃いにした。髪型も、同じにした。
リョウタと、恭ちゃんを並ばせると、ほんと、そっくり。
子供のリョウタと、大人のリョウタって感じだ。
急いで、披露宴会場に行くと、花江夫婦が来てた。
「京子ー。着物にしたの?素敵よー」
「ありがとう。花江は、着物にしなかったの?」
「私が、着物を着たら、相撲取りになるから、やめたの」
花江は、フォーマルのドレスを着ていた。真珠のネックレスが神々しく光っていた。
「花江さん、大富豪のマダムって感じで、素敵ですよ」
リョウタが、花江を見て言った。
「ありがとうー。リョウタくん。リョウタくんも、カッコいいし、恭ちゃんも、めちゃ可愛いっ」
そう言って、花江は、恭ちゃんのホッペを触った。
「リョウター」
いかにも新郎側の友人で、呼ばれたらしい人がリョウタに、声をかけた。
「ケイジさん、来てたんですか」
「駿に、招待された。」
ケイジさんとは、メジャーデビューするときに、リョウタを引き抜こうとした人だ。
「あっ、うちの女房と、息子です」
リョウタは、隣にいた私と恭ちゃんを、ケイジさんに紹介した。
「KOOLGKのケイジです。リョウタくんとは、何回か対バンした仲です」
「その節は、主人がお世話になりました」
私はケイジさんに頭を下げた。
「恭ちゃん、パパお話しあるから、トイレ先に行こうか」
積もる話もあるだろうから、私と恭ちゃんは、その場をさった。
「リョウター。奥さん、色ぽっいなー。あれじゃ銀座の高級クラブのママも敵わないよ。リョウタが、引き抜きことわって、東京行くのもやめたのも、解るよ。あんな綺麗なんじゃ、東京より、奥さん選ぶよな」
ケイジさんか、リョウタに言った。
「まあ、そうですかねー」
リョウタは、嬉しそうだったが、あることに気づく。
着物を薦めたが、あんな色ぽっいんじゃ、招待客が、オッサンだらけだから、やべーな。京子、誘われないだろーな。いかにも、オヤジどもが、好きそうな着物の色気だよな。失敗した。ドレスにさせるんだった。
つーか。新郎側の友人で、マサトさん呼ばれてんじゃないだろーな。あんな着物姿の元カノの京子見たら、マサトさん燃え上がるじゃねーの。
マサトは、招待されたらしいが、ツアー中で、出席出来なかったらしい。良かったー。
新郎新婦入場。
エアロスミスのバラードの曲とともに、新郎新婦は、入場した。
駿くんは、金髪だった髪をブラウンにしていた。さすがに、湯川のオジサンに言われたのかな。
新婦さんは、すごい若くて、22歳くらいにみえた。可愛いらしい新婦さんだった。やっぱり若いと花嫁姿も、可愛い。
披露宴も中盤に入り、新郎新婦は、お色直しに、退場した。
着物からウェイディングドレスに着替えた花嫁さんは、とても綺麗だった。
キャンドルサービスを終えた新郎新婦に、恭ちゃんが花束渡す時がきた。
「笹原恭くん。中島唯ちゃんの登場です」
私は、恭ちゃんに、
「あのお姉ちゃんに。お花を渡してね」
と言って、式場のスタッフに、引き継いだ。
「笹原恭くんは、『田舎のパスタ屋さん』のご子息さまです。」
司会者が、言わなくてもいいことを言ってた。
無事に、恭ちゃんは、新婦さんまで、たどり着き花束を渡した。
「ありがとうー。可愛いー」
新婦さんは、感激していた。
「恭ちゃん、可愛かったよー」
花江が、手を振っていた。
新婦さんは、ドレスのお色直しを三回もした。都会じゃ考えられないだろうが、田舎では珍しいことでもない。
お色直ししている間、余興に、太鼓叩きをしていた。
恭ちゃんが、飽きないと、いいけど、退席するのも、悪いし。
「恭ちゃん、駿お兄ちゃんと、お姉ちゃんのお祝いだから、もう少しいようね」
「うんっ。ママとパパがいるから、楽しい」
可愛い。可愛い。なんて可愛い息子なんだ。
新婦さんが、両親への手紙を読んで、涙を誘った。
そして、駿くんの新郎の謝辞だ。
「本日は、お忙しい中、ご出席頂いて、ありがとうございます。
オレは、先月まで、東京にいました。バンドをやってました。だから、農家を継ぐなんて、これっぽっちも思ってなかった。大学いかせてもらって、就職もしないで、バンドやって、体にタトゥーいれて、親不孝な息子です。勘当されたって、おかしくない。バンドが解散して、家に帰省したとき、両親が、「帰って来てほしい。」と、オレに、頭を下げました。こんな息子でも、家に帰っていんだ。まだ見棄ててないんだ。と思って、農家を継ぐことを決めました。これから、今まで、出来なかった親孝行をしたいと思います。どこまで、やれるか、分かりませんが、みなさん、オレ達を温かく見守ってください。」
私は、駿くんの謝辞を聞いて、涙が止まらなかった。
リョウタも、駿くんの気持ちが痛いほど分かるようで、涙目だった。
会場は、駿くんの謝辞に、拍手喝采だった。
「駿くんっ、頑張れよー」
「よっ、跡継ぎっ」
駿くんの両親も、泣いていた。
「オレも、かなり好き放題やった親不孝な息子だったから、駿くんの謝辞は、胸に染みたよ。オレみたいなやつが、結婚して、子供いるんだから、駿くんは、立派な跡継ぎになるさ」
親の跡を継ぐって、簡単なことじゃない。
かなりの決断だったと思う。
私の兄は、家を出たが、私の両親は、寂しかっただろう。
今まで、一緒に住んでた息子が、出ていったのだから。
でも、その両親の寂しさをリョウタが埋めてくれた。
ここに、リョウタと、一緒に帰ってきて、良かった。




