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取り分け女。

日曜日。

リョウタと恭ちゃんと三人で、リビングに降りていくと

「ハンバーグ屋の割引券もらったから、夕飯、あなた達、三人で行ってきたら」

母親が割引券を私に渡した。

「だったら、お義母さんとお義父さんも一緒に行きましょうよ」

リョウタが言った。

「私達はいいわよ。うちで、あるもので食べるから。せっかく休みなんだから、三人で行って来なさい」

母親は、気を使ったのか、三人で行くように言った。


こうして、夕方、リョウタと恭ちゃんと三人で、ハンバーグ屋に行った。

「オレ、チーズハンバーグ」

リョウタは、チーズハンバーグが好きだ。

「恭ちゃんも、チーズがついてるハンバーグいい?」

「うんっ。」

でも、チーズハンバーグは、お子様用で、チーズはなかった。

「じゃあ、ママと半分にしようか」

私は、おろしハンバーグがいいのだが、普通サイズを恭ちゃんが、一人で食べれないだろう。

「お子様用に、小さいハンバーグ作りますよ」

若い男性店員が、私達のやりとりを聞いていたのか、気を使って言ってくれた。

「でも、メニューにないので、いいです」

店は混んでるし、手をわずらわせたら、申しわけないので、私は言った。

「大丈夫です。すぐ作りますから」

そう言って、若い男性店員は、厨房に行った。


運ばれたきたハンバーグは、子供が食べれるくらいの大きさで、チーズの上に、トマトソースで、アンパンマンの絵を描いていた。

「わー。アンパンマンだー」

恭ちゃんは、とてもよろこんだ。

「良かったね。恭ちゃん」

忙しいのに、アンパンマンの絵まで、描いてくれて、サービスの良い店である。


食べ終えて、会計をすると、さっきの若い男性店員がいたので

「混んでて忙しいのに、お気遣いありがとうございました」

礼を言うと

「いえ。お客様のパスタ屋のお店に、行ったときに、学ばせてもらったことですから」

そう言われた。


言われてみれば、あの若い男性店員は、うちの店に来たことある。

小さい子供を連れて、二人で来ていた。

眠いのか子供は、駄々をこねて、パパの言うことを聞かなかった。

その時に、リョウタが、恭ちゃんのアンパンマンのぬいぐるみを見せた。偶然にも、その子供は、アンパンマンが大好きだったらしく、とても喜んで、おとなしく、食べた。デザートのプリンに、私がカラメルソースでアンパンマンの絵を描いてだすと、また喜んで、全部食べた。


その時のことを言ってるのだろうか。


「私も、あれからアンパンマンの絵を描くのを練習しましたよ」

そう言って、若い男性店員は、笑った。

「ありがとうございます。また来てください」

若い男性店員は、ドアを開けてくれて、出入り口まで、私達を見送ってくれた。




「お父さん、リョウタくんが、ハンバーグ食べに、お義母さんと、お義父さんも一緒に行きましょうって言ってくれたんですよ」

「和明夫婦じゃ考えられなかったな。リョウタくんは、大人だな。」

母親と父親が、家で夕飯を食べてるときに、話ていた。

「そうですね。京子だけには、甘えてるみたいだけど、普段は、しっかりしてますよね。」

「この間、みどりおばあちゃんに会ったときに言われたんだけど。みどりおばあちゃんの家族で、うちのパスタ屋行ったとき、みどりおばあちゃんは、膝が悪いから、ゆっくり歩いてたら、リョウタくんが手を貸してくれて、席まで案内したそうだ。みどりおばあちゃんに、良いお婿さんを、貰いましたね。と言われて、私も鼻高かったよ」

父親が言った。


「京子と、付き合ってた時は、リョウタくんは、可愛くて、好きだったけど、10歳も年下で、結婚は、上手くいくかしら。と正直思ってました。でも、リョウタくんが婿で、良かったです」

「そうだな」

母親と、父親は、二人で、しみじみ言っていた。



「お義父さんと、お義母さんに、お土産買っていこうよ。オレらばかり外食して、悪かったし」

リョウタが、私にお土産買うように言った。

「そうだね。徳兵衛の大福買っていこうか。お父さん好きだし」

そうして、私達は、お土産に、大福を買った。


「京子、徳兵衛の大福って高いんだから、外食したくらいで、なんも買ってこなくてもいいのよ」

母親が片付けてるときに言った。

「私は買うつもりなかったんだけど、リョウタが、お父さんとお母さんに、買っていこうと言うから、買ってきたのよ。」


「そうなんだ・・」

母親は、黙ってしまって、泣いた。

「えっ?なんで泣くの?泣くことじゃないでしょう。」

「和明夫婦と暮らしてた時と、比べてしまって。あの時は、このまま笑いがないまま暮らしていくのかなと思っってたから」

兄夫婦との暮らしは、そんなに、大変だったのだろうか。確かに、嫁に、気を使い、避けられ、話題もない生活が楽しいとは言えない。リョウタは、無邪気だから、私の両親に、気に入られてるせいもあるが、リョウタが自分の両親に出来なかったことを、私の両親にしてくれてる気がする。


「でも、お母さん、リョウタも年とったら、わからないわよ。婿だから、金で揉めるかもよ」

私は、意地悪ぽっく言った。

「ほんと京子も現実的な子ね。人が良い気分になってる時に、水を差すんだから。可愛くない娘だわ」

母親は、呆れながらも、笑った。



水曜日。

毎度の花江とランチに行った。

「この間さ、近所の班で、若夫婦の親睦会みたいな飲み会があったんだけど、佐藤さんちのお嫁さんきたんだけど、これが女子力アピールしてさ。料理の取り分けしたり、お酒をついで歩いたりして、こっちは、食べた気がしなかったわよ」

若夫婦と言っても、田舎の若夫婦とは、年寄りの子供の夫婦を指してるので、50代も40代も若夫婦である。


その佐藤さんちのお嫁さんは、若いほうで、30代だそうだ。

「その佐藤さんちのお姑さんが、言ってたけど、料理なんてしたことないらしいわよ。朝もギリギリまで、寝てるから、姑さんが、早く起きて、朝食作るらしい。それなのに、飲み会では、私は気遣いがある素晴らしい嫁です。みたいに、男性陣に、アピールしてさ。他の嫁さんが、いかにも気がきかないみたいな感じになったわよ」


いる。いる。本当は何もしないくせに、男の前でアピールする女。


「私もOLやってた時にいた。そういう女。仕事はしないくせに、飲み会では、男性陣にアピールして、料理の取り分けする女。バカ男は、気がきくなー、とか、良いお嫁さんになるよと、もてはやしてたけど、今は、アレルギーや、潔癖症の男性もいるから、嫌がる人もいるみたいよ。嫌いな食べ物まで、取り分けられるなら、自分で取ったほうがいいよね」


「そうなんだよね。そういう普段しないのに、男の前では、突然、やりだすのが、むかつくよね。職場の飲み会なんて、仕事しないやつが、そういう飲み会の取り分けで、評価あげられても、むかつくね」

花江は、怒りながら、ステーキをナイフで、ガツガツ切っていた。


「そうそう。でも、若い子に、大皿のサラダに乗っていた半熟卵を、誰にも聞かないで、勝手に、卵をぐちゃぐちゃにして、野菜にからめられた時は、やめてーと、思わず心ん中で叫んだ。私、半熟卵は、嫌いじゃないけど、からめるのは好きじゃないから、一言聞いてほしかった。」

半熟卵は、食べ方人それぞれだと思う。だから、その女は、いつも、ぐちゃぐちゃにして、食べてるのかと思った。


「京子みたいな、いつもやってる女性にされるのは、思わないけど、いつも、やってない女にされるとねー」


「私は、取り分けじゃなくて、盛り付けが出来るつーの」


「ぎゃははっ。そうだよね。取り分けより、すごい盛り付けだぞってね。プロだぞって、取り分け女に言ってやれ。でも、男って、そういう取り分け女に、騙されるから、バカだよね。うちの旦那も、佐藤さんちのお嫁さんは、気がきくなーと、言っちゃって、バカだよ。リョウタくんは、どうなの?」


「リョウタは、自分で好きなの取るよ。だってリョウタは、お客さんに言われれば、取り分けしてやらないといけない時もあるんだから、自分で出来ないとねー」

甘えるときは、私に食べさしてと言う時は、あるが。



普段から、男性にも、女性にも気がきく女性が、するなら問題

ないのである。



普段しないのに、男の前では、気がきくふりをして、取り分ける。

ほんとに、気がきく取り分け女なら、相手の好みの料理を、まず聞くし、ドレッシングかける前も、断ってから、かけると思う。それが、真の取り分け女では、ないだろうか。



あっ、ついつい職業病で、理屈っぽく、語ってしまいました。


あー、新人だった南美を思い出す。

南美も、仕事は、しないが、取り分けだけは、していた。



でも、取り分けで、男をつかまえる女性もいるんだから、その取り分けの力で、何かに活かしたらいいのにね。


もったいないな。




「あの佐藤さんちの嫁めっ」

花江は、ステーキを噛みちぎっていた。




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