表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/46

苦情。

休みの日に、スーパーに行ったら、花江と会って、立ち話をしていた。

「店長を呼びなさいよっ」

レジの方で、女性の叫び声が聞こえた。花江と行って見ると、50代くらいの女性がレジの店員に怒っていた。

スーパーの店長が来ると

「いったい、どういう指導してるのよっ。この店員、お釣り間違ったのに、指摘したら、謝りもしないで、投げ捨てるように、お釣りをよこしたのよっ」

ヒステリックに女性は、言った。店長は、平謝りしていたが、女性の怒りは治まらないようだった。

「この店員は、いつも態度悪いわよ。いらっしゃいませも言わないのよ。いらっしゃいませ、ありがとうございましたは、接客の最低限の基本でしょう。そんなことも、教えてないのっ」

女性の声は、店内中に響きわたった。


確かに、あのレジの店員は、いつも無愛想である。態度も悪い。だから、私は、あのレジの店員のレジに並ばない。それにしても、クレームを言った女性の形相といい、口調といい、すざましかった。店内中が、震え上がった状態だった。

「あの人、立花さんと言って、私の娘と同じ学校の娘さんがいるから、知ってるんだけど、旦那さんが、あの大手の〇〇会社なんだけど、1年前に、本社から、ここの営業所に、飛ばされたらしいのよ。だから、立花さんの奥さんは、こんな田舎の営業所で、かなり不満みたいで、ストレス溜まってるのか、どの店に行っても、いつもヒスリックに、クレームいれるらしいわよ。要するに、クレーマーってとこね。」

それにしても、怖すぎる。

名前は、立花富貴恵さん。53歳。有名私立のお嬢様大学卒業らしい。

それでは、こんな田舎では、不満かもしれない。

「うちの店には、来たことないけど、もし来たら、対応できるかなー」

「リョウタくん、イケメンだから大丈夫だよ。ああいうマダムは、イケメンに甘いわよ」

リョウタが大丈夫でも、料理に文句言われたら、どうすればいいのだろうか。料理の味なんて、人の好みだから、不満出るかもしれない。


あー怖いー。でも、接客業が、恐れてはいけない。



平日のランチタイム。

「いらっしゃいませ」

「こんなところに、パスタ屋があったのね。今まで、気づかなかったわ」

「5年前にオープン致しました」

そう言って、リョウタが席に案内したお客様は、なんと、あの立花富貴恵さまだった。早速、マダムがいらっしゃいました。私は、キッチンで、しばし凍りづいていた。

そういった矢先、立花様に、水をリョウタが、持っていって、グラスを置こうとしたとき、立花様の手とグラスが、ぶつかり、テーブルに水がこぼれてしまった。

青ざめる私。リョウタは、どう対応するか。

「大変申し訳ございません。お客様、お召し物は大丈夫でしょうか」

「大丈夫よ。濡れてないわ。私が手を出したから、ごめんなさいね」

良かった。怒ってないー。リョウタ、まずまずの対応だ。

「よろしかったら、隣のテーブルに移動して頂けますでしょうか。こちらのテーブルでは、完全に乾くまで、お待たせしてしまいますので」

「わかったわ」

立花様は、素直に隣の席に移動した。


立花様のオーダーをとったリョウタがキッチンにきた。

「あのお客様は、慎重に、丁寧にね。怒らせないようにね」

「はいよー」



リョウタが、立花様のテーブルに行った。

「先程は、失礼致しました。お詫びといっては、申し訳ございませんが、こちら水菜のサラダです。よろしかったら、前菜に、お召し上がりください」

サラダと、デザートにするか悩んだが、デザートだと、「太らす気?」「血糖値上げる気?」と、怒らす場合があるので、キノコ色々パスタを頼まれてたので、ヘルシー志向かもしれないので、サラダにした。

「ありがとうー。私、水菜好きなのよ」

喜んでくれたみたいで、よかったー。リョウタの接客もなかなかだ。やはり、一時的でも、ホストを目指しただけはある。あの笑顔は、マダムキラーだ。

次は、パスタの味がお気に召すかが、問題である。


「パスタ美味しい。塩加減も丁度良いわ。キノコも、その辺のスーパーの安いキノコって感じじゃない」

良かったー。パスタも気に入っって頂けたようだ。

「ありがとうございます。キノコは、私の父の会社から仕入れてまして、隣の県の会社なのですが、キノコの名産地ということもありまして、パスタに合ったキノコを仕入れることができます」

「もしかして、〇〇県?あそこは、松茸も、いいのが採れるらしいしね」

「はい。そうです。お客様、お詳しいですね」

「私、キノコに目が なくてね。オーナーは、若いけど、あなた?」

「いえ。私は、店長です。オーナーは、妻で、シェフをしております」

「シェフが、オーナーなのね。呼んでくださる?」

ぎえーー。私を呼んでるー。 やはり、なにか、ご不満があったのだろうか。


「本日は、ご来店ありがとうございます。私、オーナーシェフの笹原と申します」

「パスタとても美味しかったです。この辺のお店には期待してなかったけど、この店は、サービスも素晴らしいわね。店長さんも、完璧の接客とまではいわないけど、笑顔が素敵だし、何よりも、お客様に、誠意を持って接客してるのが、伝わります。この街に来て、初めて、満足した店です」


意外にも立花様に、お褒めの言葉を頂いた。


「ありがとうございます。これからも誠意を持って、接客をするように努めて参ります」


そういうことで、無事、立花様は満足して頂いて、お帰りになりました。


どっと疲れたーーー。こんなに緊張が走ったのは、店をオープンしてから、初めてである。

でも、リョウタは、余裕だった。さすが、マダムキラーである。



接客は、色んなお客様がいるので、どの対応が正しいのかは、難しい。

至らない点があっても、その後のフォローで、補うこともできる場合もある。

やはり、無愛想より、笑顔がいい。

でも、完全なる作り笑顔で、お客様に、不快な気分にさせる場合もある。


お客様がいて、店が成り立つ。

感謝と誠意、それだけじゃ何か足りないのかも知れない。


それは、これからも、お客様に教わる毎日である。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ