金髪。
リョウタのお父さんが来た。
「京子さん、いい生ハム持ってきたから」
「ありがとうございます。早速生ハムピザ作ります」
生ハムは、新鮮なうちに食べて頂きたいから、開封してしまうと、やはり、今日か明日で、使いきりたい。
「リョウタ。今日は生ハムピザ薦めてね。生ハム美味しいうちに食べて頂きたいし」
「はいよー」
というわけで、今日は生ハムピザフェアになりました。
「いらっしゃいませ」
初めてと思われるお客様が、ご来店した。
金髪に、ピアスに、腕に多数のタトゥーをしている。年齢は25歳前後というところだろうか。なかなか田舎では、みないファッションである。帰省中か、たまたま通ったから、入ったのだろうか。
しかし、金髪がとても似合う美形の青年である。
若いときのアクセルローズか、日本では、清春さまというくらい金髪が似合う顔立ちだ。素敵だ。素敵すぎる。
「ペペロンチーノと、コーヒーください」
「今日だけ、生ハムピザフェアなんですけど、いかがですか」
早速、リョウタがその金髪のイケメンに、生ハムピザを薦めた。
「あっ。ピザも食べたいんですけど、一人じゃサイズ大きくないんですか?」
「大きさは、二人分か、三人分ありますので、もし召し上がるんでしたら、シェフに、一人分サイズに作るようにいいますが」
「じゃあ、お願いします」
金髪のイケメンは、生ハムピザを頼んだようだ。
「ということで、一人分のピザできる?」
リョウタが、キッチンで言った。
「もちろんよっー」
「見とれて、ないで、早く作ってくださいよ。ったく若いイケメン好きだね。花江さんの影響かねー」
またリョウタは、呆れたように言った。
ランチタイムで来てたOL達が、金髪のイケメンを見て、ヒソヒソと話してる。
「すごいタトゥーだらけ。怖いー」
「治安悪くなるねー。食べたら早く出ようよ」
田舎では、タトゥーは、珍しいので、他のお客様は、怖がってる様子だが、あまり美形すぎて、悪そうには見えない。
「京子っ。来たわよー」
今日も元気に花江が来た。
「今、銀行の帰りなんだけど、お腹すいちゃてー」
「花江さん、今日は生ハム入ったんで、生ハムピザフェアなんですよ。生ハムピザどうですか」
「食べるー。食べるー。生ハム大好きっ」
花江なら、一人分サイズでなく、普通サイズでも、いいだろう。
「あらっ。駿くん?」
さすが、花江だ。あの金髪イケメンと、知り合いだろうか。
「花江さん、お客様と知り合いなんですか?」
「うちの近所の息子さんよ。駿くん、東京から帰ってきたの?」
へえ。花江の近所に、こういう美形の息子さんいるんだね。
「バンド解散したんで、とりあえず、帰ってきました」
へえ。バンドやってるんだね。でも、いかにもバンドやってそうな格好かな。
「リョウタくんも、あっ、ここの店長ね、バンドやってるんだよ」
「だから、オレみても、ひるまないんですね。なんていうバンドですか。」
「ここの県だけで、活動してるから、知らないと思うけど、Avid crownってバンド」
「えっ。知ってますよ。前、speck crewのオープニングアクトしませんでした?」
あー。そのバンド名をリョウタの前で、出さないで欲しいな。
「したけど」
リョウタの顔が、一瞬ひきつった。
「ギターのマサトさんに、よく飲みに連れて行ってもらったんだけど、マサトさんカッコいいですよね」
かなりリョウタの顔は、ひきつっていた。
「駿くん、その名前は禁句なの」
花江が、ぼそっと駿くんに言った。
「いらっしゃいませ。おー潤くん」
「リョウタさん、久しぶりです。今日、学校午前中なんで、来ました」
工業高校のバンドやってる美少年の潤くんが、友達と来た。
今日は、イケメンデーじゃないの。
花江を見たら、やはり、めざとく潤くんに注目してた。イケメンを、見逃さない花江である。
花江が、カウンターに来て私に言った。
「ちょっとお。今日はイケメンばっかじゃないの。生ハムってイケメンを呼ぶのかしら。ホストクラブに行くより、レベル高いわ。今日、来て良かったー」
確かに生ハムパワーだろうか。イケメンが揃った。しかも、全員バンドやってる。どういう巡り合わせだろうか。
「生ハムピザ、美味い」
金髪イケメンの駿くんが、ピザを食べて言った。
「駿くん、ここは、ピザも、パスタも、なんでも美味しいのよ」
花江が、駿くんに言った。
「オレ、地元の飲食店に期待してなかったんだけど、ここは、美味いですね。オレが、高校んときは、なかったですよね」
「5年前に、京子って、私の友達のシェフが、都会から帰ってきて、リョウタくんと結婚して、オープンしたのよ」
「そうなんだ。良かったじゃないですか。地元に美味しい店出来て」
「だから、駿くんも東京から、完全に帰ってきたら?」
「悩んでる最中。新しいバンドを作って、東京いるか。バンド辞めて、地元に帰ってくるか。地元帰ってきても、仕事ありますかね」
この地元で、就職は、求人が限られてるから、正社員となると、難しいかもしれない。
「駿くん、大学卒業してるんだもの地元の農協とか、市職員とか受けたら?」
「オレがですか?この格好で?タトゥー入ってますよ。無理でしょー」
さすがに、タトゥー入った市職員は、いないかもしれない。
「やっぱ。地元で、就職は無理ですかね」
でも、花江も私も、こんなイケメンに、ぜひ戻ってきてほしいと、思っている。
駿くんは、大学で、東京に行き、バンドにはまり、就職しないでバンド活動をしていたそうだ。インディーズだが、わりと人気があったバンドらしい。駿くんもギターらしい。
駿くんの親御さんは、戻ってきてほしいと言ってるのだろうか。たとえ金髪だろうが、タトゥー入ってるだろうが、こんな美形の息子さんでは、可愛いはずだ。
でも、バンドを辞めるのって、かなりの決断だ。
二週間後の休みの日に、契約してる専業農家さんに、新しく仕入れる野菜をリョウタと見に行った。
「これ、うちのバカ息子。先週、東京から帰ってきて、農家を手伝わせることにしたんで、店に配達とかさせるんで、よろしくな」
と、オジサンが言った。
「あっ、駿くんっ」
振り向いた息子さんは、駿くんだった。
帽子かぶってたので、金髪に気づかなかった。
「この金髪やめろって言ってんだけどよ。バカ息子、言うこと聞かないんだよー」
専業農家のオジサンは、なんだかんだ言っても、跡継ぎが帰ってきて、嬉しそうだった。
「美味いパスタ屋も出来たんで、地元に帰ってきても、いいかなって、思ったんですよ」
駿くんは、顔に土をつけて、清々しく言った。
野菜を配達してくれるなんて、楽しみ増えた。




