家族。
有くんがランチタイムに店に一人できた。
「家に帰ったら、お母さんがいなくて、家に入れなかった」
えっ、息子まで、閉め出したというのか。
なんでも、今日は午前授業で、給食を食べてから、帰ってきたそうだ。パート終わって、喋りまくってるんじゃないよね。
「有くん。休憩時間になったら、リョウタお兄ちゃんが送っていくから、座ってて。かぼちゃプリン食べて待っててね」
ったく、お義姉さん、何やってんのよ。幼稚園に行ってる莉奈ちゃんは迎えにいったんだろうか。
「京子、和明から電話きて、郁恵さんが、病院に運ばれたらしいわよ。だから、私、幼稚園に莉奈ちゃん迎えに行ってくるから」
母親の携帯に、兄から電話があったらしい。
義姉は、盲腸らしい。我慢してたらしく、投薬での治療ではなく、明日、手術になった。
そういうことで、有くんと、莉奈ちゃんは、しばらく、うちで預かることになった。そして、もちろん兄も、うちに来るらしい。
明日、手術なのだが、兄は、どうしても休めない仕事があるらしく、手術に、付き添えないらしい。義姉のお母さんも、退院したばかりで、とうてい義姉の付き添いはできそうもない。
義姉は、弟さんがいるらしいが、付き添いはしないだろう。
「私は、無理よ。私が行っても、具合悪いときに姑に、付き添われたら、もっと具合悪くなったと言われるわよ」
母親は、付き添う気がないみたいだ。考えてみれば、嫌いな姑に、付き添われるなんて、療養した気にもならないだろう。
「京子が行きなさい。明日、店休みなんだし、年だって、郁恵さんと近いんだし、姑に来られるよりは、いいわよ」
私は、この間、スーパーで、言い争いしたばかりで、気まずい。
でも、病気のときは、誰だって辛いんだから、おれるしかない。
「兄さん、入院に必要な着替えとか、用意してよ。お義姉さんの下着とか、バスタオルとか、持ってきてよ」
明日の手術に、付き添えないんなら、それくらいしてよ。
「オレ、アイツの下着なんか何処にあるか、知らないよ。勝手に、探したら、怒られる」
ったく、使えない兄だ。
私が適当に下着買って、持っていくしかないか。
朝早く、ショピッングセンター行って、入院に必要なものを買い込んで、病院に行った。
病室に入ると、義姉は、ベットに寝ていた。
「お義姉さん、下着とか適当に私が選んで買ってきました。あと歯ブラシにコップに、タオルを何枚か持ってきました。」
「子供たちは?」
やはり子供のことは、心配のようだ。
「大丈夫ですよ。ちゃんと、学校行きましたから」
リョウタが、莉奈ちゃんを幼稚園に送ってくれた。
「あと。洗濯物は、この袋に入れておいてください。私が洗ってきますから」
「いいわよ。それくらい自分で洗えるわ」
確かに、義妹に、下着を洗濯をされるのが嫌かもしれないが、兄がやるはずもない。
「手術したら、傷口傷むかもしれないから、まだ無理ですよ。遠慮しないでください。」
義姉が手術室に入って、待ってると、リョウタが、来た。
「お義姉さん、手術まだ終わらないんだ?」
「もうすぐ終わるんじゃないかな」
こうして、血のつながった身内に付き添われないのは、寂しいかもしれない。旦那である兄は、まるで他人事だ。まるで、頼りにならない。嫁に行けば、実家に帰りづらくなったりする。実家で親と同居してる兄弟夫婦がいれば、親にも頼りづらくなる。
私には、リョウタもいる。両親もいる。リョウタは、子供の面倒も見てくれるから、助かる。やはり、この間、義姉が私に言ったように、親と住んでるから、私は恵まれてるのかもしれない。
義姉は、兄以外に頼る人もいない。二人の子供を一人で見て、うかつに、病気にもなれないだろう。
この間は、義姉に、言い過ぎたと反省した。
手術が終わって、病室に義姉が戻ってきた。麻酔がきいてるので、まだ眠っていた。
「目が覚めるまで、付き添ってて、ください。」
看護士さんに、言われた。
「リョウタ帰ってて、いいよ。私が付いてるから」
「そうだな。男のオレに、付き添われるのも嫌だろうしな」
義姉の麻酔が覚めるまで、ついてたので、家についたのは、夜8時過ぎた。
兄が仕事から帰っていた。
「兄さんっ、仕事終わったら、病院に来たらいいでしょうに。旦那でしょっ」
「オレ行ったって、しょうがないだろ」
なんだコイツは。奧さんが心配じゃないのかね。兄は仕事以外のことは、家事も何も出来ない。いくら甘やかされて育ったとしても、情けない。
「莉菜ちゃん。リョウタくんに、べったりよ。やっぱり女の子だから、イケメン好きなのね」
母親が言った。
「おかげで、リョウタくんが子供達の面倒みてくれたから、助かったわ。和明と、大違い」
「兄さんっ、子供達をお風呂くらいいれてよ」
「だってよ。子供達が、リョウタくんと入りたいと言うし」
リョウタが、有くんと、恭ちゃんを風呂にいれてくれるが、莉菜ちゃんは、女の子なので、リョウタと風呂に入ったと知ったら、義姉に、何を言われるかわからないので、私と入ることにした。
「莉菜ちゃんは、おばちゃんと入ろうね」
「そうね。イケメンに、莉菜の裸をみせるのは、まだ早いわね」
ぷっぷっぷ。女の子は、やっぱりオマセさんだ。しっかり女になってる。可愛いー。
私は、お店がある時は、休憩時間に義姉の病院いき、洗濯物をとってきたりした。来週には退院できるみたいだ。
「京子さん、毎日来なくてもいいわよ。もう動けるんだし」
義姉は、いちおう気を使ったのか、私に言った。
でも、誰も見舞いに来ないのも寂しいだろう。
日曜日に、リョウタと子供達を連れて、義姉の病院に行った。
義姉は、有くんと莉菜ちゃんに会えて嬉しそうだった。
「お父さんは、ちゃんと、面倒みてくれてる?」
「お父さんは何もしないよ。でも、リョウタお兄ちゃんと京子おばちゃんと、恭ちゃんが、いるから、寂しくない。楽しいよ」
「そう。よかった」
義姉は安心したようだった。
「笹原さんは、見舞いにきてくれる人が沢山いていいね。私なんて娘も来ないですよ」
義姉の隣のベットのおばあさんが言った。
病気になることは、気持ちが弱くなる。見舞いがいいわけじゃないが、心の拠り所がほしい。
病院の帰りに、皆でラーメン屋に行った。
「おっ、京子ちゃん、リョウタくん、いらっしゃい」
このラーメン屋は、夫婦でやっている。うちの店にも、ちょくちょく食べに来てくれる。私が高校生の時から、やってるラーメン屋で、とても美味しい。
「あなた達に、三人も子供いたの?」
ラーメン屋のおばさんは驚いてた。
「違いますよ。甥っ子と姪っ子です」
「だよね。リョウタくんの子供にしちゃ、大きいもんね」
醤油ラーメンがきた。莉菜ちゃんと、恭ちゃんのは、小さい丼にしてもらった。
「リョウタお兄ちゃん。ふーふーして。熱いの」
莉菜ちゃんは、リョウタに甘えて、ふーふーしてもらってた。
「リョウタお兄ちゃんが、ふーふーしたから、すんごい美味しいっ」
なかなかの甘え上手の莉菜ちゃんだ。
「ボク。久しぶりにラーメン屋に来た」
有くんが言った。
「お父さんとお母さんと来ないの?」
「今のお家に来てから、来ない。あんまりお父さんと出掛けない。お母さんとは、ファミレス行ったりは、するけど」
ったく、アニキの奴。休みの日は、寝てるんだろうか。家族サービスしろよ。
お義姉さんが、退院のとき、私が迎えに行った。
「京子さんが言ったように、やっぱり私は甘いのかもしれない。義両親と合わないから意地はって別居したけど、私一人じゃなんにも出来ないんだよね。結局、旦那の実家に頼るしかなくて、迷惑かけて。京子さん、仕事しながら、私の世話と子供三人の世話大変だったでしょう」
珍しく義姉は、しおらしいことを言った。
「大丈夫ですよ。私には、リョウタも両親もいますので」
「京子さん、ありがとう。助かりました」
初めて、義姉に、お礼を言われた。
病気のときは、誰かに頼らなければならない。全ての人が頼る人がいるわけではない。
私も意地張らないで、兄夫婦と、ある程度は付き合おう。
私も、いつか兄夫婦に、頼らなければならない時があるかもしれない。
「リョウタ、女の子欲しい?」
恭ちゃんが寝たあとに、リョウタに聞いた。
「女の子は、いい。」
「なんで?」
「京子に、そっくりの女の子が産まれたら、将来、他の男に取られると思うと、嫉妬に狂うよ」
あー、それもそうだね。




