秘密
「いらっしゃいませ。カウンターで、よろしいですか」
最近よく来る20代前半らしい可愛い女の子が、一人で来た。
最初は、友達や彼氏と来ていたのだが、最近は一人でも来るようになった。
「明太子パスタと、デザートで、店長のお薦めありますか」
「今、ちょうど、栗の時期で、マロンマフィンとか、いかがですか」
「じゃあ、それもお願います」
私の思い違いかもしれないが、この若いお客様は、リョウタ目当てで、来てるような気がする。でも、彼氏と来てたから、彼がいるのだろうだから、私の思いすぎだろう。
水曜日。リョウタは、バンドの練習で都会に行ったので、また花江とランチした。
「京子、同級生の洋子いるでしょう。洋子の旦那、洋子のママ友と、不倫してるらしいわよ」
「ママ友と?それって、友達じゃないわよね。」
「年下のママ友だったみたいで、家族ぐるみの付き合いをしてたらしいけど、いつの間にか、旦那を寝とられたみたいで」
「ひどいね。旦那も旦那だけど。ママ友の付き合いも信用できないね」
よく親友と、旦那や彼氏が浮気してたって、話を聞くけど、それって、相手は、親友と思ってなかったことだよね。旦那や彼氏を取られてまで、親友と呼べない。親友じゃなくて、知人だったに過ぎない。お互いに、親友と、思ってたら、男を取らないよね。
「京子、私が京子を裏切って、リョウタくんと不倫するかもよ」
「ありえなくないわね。花江、包容力あるし」
「やっぱり?私は年下をメロメロにする要素を持ってるのよね。あー、菅田将暉くんにワガママいわれたいわー」
今度は菅田将暉くんになったのか。
「花江おばちゃん、フリンって、なあに?」
恭ちゃんが、花江に聞いた。
「花江おばちゃんが、イケメンと恋に落ちることよ」
ちょっと子供に説明が難しくないだろうか。
「恭ちゃんのパパみたいなイケメンと、あと仮面ライダーのお兄ちゃんみたいなイケメンと、いちゃいちゃ仲良くなることよ」
「仮面ライダーのお兄ちゃんは、いいけど。パパは、ダメだよ。ボクとママのものだから」
「わかってるわよ。パパは、取らないわ」
でも、洋子は、離婚するのだろうか。そんなママ友と、子供が一緒の学校っていうのも、嫌だよね。
私も、恭ちゃんが、幼稚園に行ったら、ママ友の付き合いも出てくるかもしれないけど、用心しなくちゃ。
「私は、旦那より、若いイケメンを選ぶわ」
花江は、まだ妄想していた。
家に帰ると、もうリョウタが、帰ってきてた。
「パパ、フリンしちゃ、嫌だよ」
そういって、恭ちゃんは、リョウタにしがみついた。
「フリン?京子、恭に、なに教えてんだよ」
「花江よ。妄想の話してたの」
変な言葉を覚えちゃったな。
「ああ。花江さんの妄想劇ね」
でも、10歳も年下の旦那じゃ、不倫されてもしかたないのかな。この間みたいに、もう疑いたくない。
ランチタイムに、また、あの若くて可愛いお客様が、一人で来た。
「店長、今日代休で仕事休みなんですけど、パスタ食べたくて、わざわざ来ちゃいました。」
この辺の会社の人らしい。しかし、最近やたら一人で来る。来て悪いわけではないが、リョウタをずっと見ている。
「店長は、休憩時間ないんですか」
「ランチタイム終わったら、休憩です」
「3時までじゃ、お腹すきますね」
「大丈夫ですよ」
今日は、やたらリョウタに話かけている。
相武紗季さんみたいな笑顔が可愛らしい女の子だ。男性に人気のあるタイプだ。
ランチタイム終わって、休憩に入った。
「オレ、コンビニで、ジャンプ買ってくるよ」
リョウタが、コンビニ行くため、出掛けた。
「店長、偶然ですねー。休憩ですか」
リョウタがコンビニに行くと、さっきの若くて可愛いお客様がいた。
「私、暇なんで、ブラブラしてました」
リョウタが、ジャンプを買って、コンビニを出ると、その若くて可愛いお客様も出てきた。
「店長。私、店長のことが、好きになっちゃいましたっ」
唐突に、その若くて可愛いお客様は、リョウタに告白した。
「へっ?オレ、結婚してるんですけど」
「わかってます。シェフが奥さまでしょう。私は二番目でもいいので、奥さまに内緒で、付き合ってください」
「無理です。考えられないです」
「どうしてですか?奥さまには、失礼だけど、奥さまより、私のほうが若くて可愛いと思います。私、23歳ですよ」
前も、そういう自意識過剰な女の子がいた。
「いや若いとか、可愛いとか関係なくて、そういう結婚してる男に、付き合ってくださいとか言う女性は、無理です。」
リョウタは、キッパリ断った。
「よかった。店長が私が思ってたとおりの男性で」
断られたのに、何が良かったのだろうか。
「男の人って、彼女や奥さんいても、平気で浮気するじゃないですか。私の元カレも浮気して、別れたんです。私、かなり落ち込んで、そんな時に、一人でパスタ屋に行ったんです。そんな時に、店長に、親切にしてもらって、嬉しかったです。他の男の人は、彼女や奥さんがいるのに、私を誘ってきて、男性不信になりそうでした。ても、店長は、そんな男の人たちと、一緒じゃなくて、良かったです」
オレ、結局、試されたのか?なんだかなー。暇潰し?
「私、店長みたいな素敵な彼を探します」
「はあ。頑張ってください」
「彼ができたら、また、お店に食べに行きます」
そういって、その若くて可愛いお客様は帰って行った。
「たらいま」
リョウタが、コンビニから帰ってきた。
「コンビニ長かったね。立ち読みしてたの?」
「いや。ランチタイムに、来てたお客様に、会って、いきなり告白されてさ」
「もしかして、一人で来てた若くて可愛いお客様?」
「そう。もちろん、断ったんだけど、オレが誘いにのるかどーか試したみたいだ。結局、からかわられたのかな」
からかったわけではないだろうが。私には、お客様が、本気にも見えた。
「23歳だって。女って、面倒くせー。理解不可能」
私は面倒くさくないのだろうか。解りやすい女と言うことだろうか。
「あっ、京子、オマエが不倫したら許さないからな」
不倫する以前に、私は、リョウタのせいで、男の人から避けられているので、もう誰も誘ってこないので、大丈夫です。




