love song
リョウタが、音楽雑誌を買いに行ってから、機嫌が悪い。
ふてくされて、寝てるし、こうなれば、ほっとくしかない。
「恭ちゃん、ママと、公園いこっか」
「うんっ」
恭ちゃんも、もうすぐ幼稚園だし、友達できたら、私に、べったりも少なくなるのかもしれない。寂しいけど、いつか離れちゃうよね。男の子だし、母親と一緒に歩くのなんて、嫌がる時がくる。
だから、沢山一緒にいたい。
「お義母さん、京子は?」
リョウタが、二階から降りてきて、聞いた。
「恭ちゃんと、公園行った」
「ふーん」
「リョウタくん、京子とケンカしたの?」
母親は、リョウタが機嫌悪いことに気付いたみたいだ。
「してないけど。京子の元カレが」
「元カレ?」
「大学ん時の元カレですよ。知ってます?」
「知らないわよ。だって、京子の彼を紹介されたのリョウタくんが、初めてなのよ。あの子、親に何も言わない子だったから」
「そうなんだ。その元カレが、京子に、未練タラタラなんすよ」
「でも、京子は、何とも思ってないわよ。どう見たって、リョウタくんのほうがいいわよ。そんなこと気にしないで、安心しなさい。」
リョウタが、義母に、なんでも言えるのは悪いことじゃないけど、そんな元カレのことまで、相談しないでほしい。
リョウタがお風呂に入ってるときに、ごみ箱に買ってきたばかりの音楽雑誌が、捨てられていたのを見つけた。
手にとってみると、ぐちゃぐちゃに破かれてたページがあった。
それは、私の元カレのマサトのバンド、speck crewのページだった。どうして、こんなに、ぐちゃぐちゃに。
その音楽雑誌を見てたら、リョウタが部屋に入ってきた。
「なんだよ」
リョウタは、また不機嫌そうになった。
「speck crewの新曲聴いたかよ?」
「聴いてないよ」
そんな今さら、元カレのバンドの情報なんて知らない。
「マサトさんが、大学時代に付き合った元カノを想って作った曲なんだとよ」
だから何?それが私だって言いたいのだろうか。
「マサトの元カノって、大学時代は、何人とも付き合ってたから、どの彼女かわかんないでしょう」
「絶対、京子のことだよ。だったら詞読んでみろよっ。京子のことに、間違いねーんだよ」
リョウタは、声をあらげて言った。
「パパ、ママを怒っちゃ嫌だー」
寝ていた恭ちゃんが起きた。
「恭ちゃん、ごめんね」
私は、恭ちゃんを抱き締めた。
「恭ちゃんが、いるのに、そんなこと言うなんて、最低」
私は、恭ちゃんを抱き締めながら、リョウタを睨んだ。
「わかったよっ。今日は、あっちで寝る」
リョウタは、怒って、隣の部屋に行ってしまった。
なんで。あんな態度とられなきゃいけないの。
私がマサトに、未練あるっていうなら、仕方ないけど、マサトとのことなんか、これぽっちも想ってないのに、むしろ忘れてたのに、それなのに勝手に嫉妬して、むかつく。
「ママ、パパどうしたの」
「パパ、焼きもちやいたの」
「焼きもちって?」
「恭ちゃんが、ママがよそのおじちゃんと話すと、泣くでしょう。そんときの気持ちと、パパ同じ気持ちなの」
なんで、3才児の気持ちと、例えてしまったのかは、わからない。
「じゃあパパは、悪くないよ。そのおじちゃんが悪い」
確かにそうだ。リョウタをそんな気持ちにさせたマサトが悪い。
だいいち、マサトは、奥さんもいるのに、今更、元カノを想って作った曲って、感じ悪いよね。もしかして、奥さんと不仲だから、奥さんへのアテツケで作ったとか。それとも話題性?そこまでして売れたいのかね。だとしたら、私は、利用されたんだよね。リョウタは、不機嫌になるし、迷惑。大迷惑。
あのリョウタのバンドが、speck crewのオープンニングアクトした時、私がマサトの元カノだって知れた時だって、リョウタは、随分、拗ねてたんだから。機嫌直すのに苦労したんだから。
ほんと迷惑。
私は、スマホで検索して、speck crewの新曲の歌詞を読んだ。
オマエは、ここに残るけど
オマエといたこの街のことは、忘れないよ
それぞれの道を行くけど、忘れないよ
なんなの、この歌詞。気持ち悪い。41歳にもなった男が作る歌詞なの?若いバンドの子のラブソングなら、初々しくて可愛いよ。
41歳が作ったんだよ。しかも20年くらい前の話だよ。20年も忘れないで、想ってたら、気持ち悪いつーの。
結婚して、奥さんも子供もいるのに、今更ワケわかんない。
頼む。とっとと、忘れてくれ。
私とリョウタとの仲を壊さないでほしい。
あー気持ち悪いラブソングだった。
すっかり気分悪くなった。寝よう。
朝。起きると、リョウタは、こっちのベットに寝てた。夜中に、こっちの部屋に戻ってきたのだろう。
「京子、来たわよー」
花江が、またヨガ教室の仲間を連れてきた。
あー花江に、元カレの女々しさの愚痴を聞いてもらいたい。しかし、今日は、休みじゃないので、次のランチのとき、聞いてもらおう。
「リョウタくん。マルゲリータ、木こりピザ、チーズ色々ピザ、茄子ピザと、あとパスタは、昔風ナポリタン、ボンゴレね」
今日は、ピザに集中している。でも、うちのピザひとつでも、大きいというのに、こんなに沢山、食べれるのか。
「今日は、ヨガしてる最中から、むしょうに、ピザが食べたくて、仕方なかったの。今日は、思いっきり食べるわよ」
花江、気がすむまで、思う存分に食べてくれ。
京子のLINE。
柚木くん「マサト先輩から、京子どうしてる?って、LINE来たから、年下と結婚しましたと、返信しといたぞ」
大学の同じサークルの柚木くんからのLINEだった。
それを見つけたリョウタ。
「マサト先輩に、人の女房に、ちょっかいだすなと、言っとけ」
と、勝手に返信したリョウタ。
「それと、オマエも人の女房に、LINEよこすな。ボケ」
私は、同級生の友達が、だんだん、いなくなります。




