年下の婿。
笹原京子。年齢は、そろそろ言いたくありません。地元で、パスタとピザの店「田舎のパスタ屋さん」のオーナーシェフをしております。のどかな地元で、両親、夫、息子と、暮らしてます。この夫、つまり婿が、なんと10歳年下なのです。
笹原綾太。(旧姓、柏木) 30歳。
「田舎のパスタ屋さん」の店長。
Avid crownのギターリスト。
3歳の息子は、恭。
「いらっしゃいませ」
ランチタイムに、ヨガ教室の帰りの中学の同級生の花江がヨガ教室の仲間と来た。
「京子っ、来たわよー」
花江は、厨房にいる私に手をふった。
「リョウタくん、相変わらずイケメンね」
「あっ、ありがとうございます」
リョウタは、上機嫌の花江に、礼を言った。
「今日は、なんのパスタにしようかな。今日はトマトソースにモッツァレラという気分だわ。でも、和風もいいわね。ピザもいいわね
」
「花江さん、全部頼んだらいんじゃないですか。取り分けすればいいですよ」
メニューを決められない花江に、リョウタが言った。
「そうね。そうよね。食べたいの全部頼んで、みんなで取り分ければいいのよ。みなさん、そうしましょう」
花江は、ヨガ教室では、リーダーシップを取ってるようだった。
「このモッツァレラ最高っ。トマトソースとの絡みがいいのよね。ピザも、美味しいっ。」
花江は、とても美味しそうに、バクバク食べていた。
花江は、中学のときは、小柄で可愛かったのだが、地元で、20歳で、結婚し、出産後、30キロも太ったらしい。
この巨体と、満面の笑みで、美味しそうに食べるので、花江を食べてる姿を見て、花江と同じものを追加注文するお客様がいたりする。そういうわけで、花江は、かなり、うちの店の売上に貢献してくれてるのである。
花江は、50歳の旦那さんと、大学1年の息子さんと、高校2年生の娘さんがいる。子育ても一段落したこともあり、専業主婦の花江は、ヨガ教室に通ったり、ママ友とランチをしたりして、楽しんでいるみたいだ。
花江とは、中学のときは、仲良かったが、高校は別だったし、花江は、早く結婚したので、私は、都会にいたこともあり、付き合いは
、遠ざかっていたが、私が、地元で、パスタ屋を始めたことで、店に来て再会した。
なかなかパワフルで、花江の妄想劇が、面白くて、聞いてるだけで、楽しくなる同級生だ。
花江の今の夢は、若いイケメン俳優と、不倫することらしい。
店は、ランチタイムが、11時から3時まで。休憩をとり、夜は5時から9時までである。
水曜日と日曜日は、店休日である。サービス業で日曜日休みと思われるかもしれないが、息子の恭が、小さいうちは、休もうかと思ってる。
「花江さん、面白いー。全部残さず、たらいあげて帰ったよ」
店を閉めて、帰る途中、車でリョウタと、花江のことを話した。
「今度の休みに、花江とランチ行く約束したから、楽しみ」
「お義母さん、ただいまー。夜食は何?」
「おつかれ。夜食は、リョウタくんの好きな天ぷらうどんよ」
「いいねー」
リョウタは、帰ってくるなり、リビングのソファに、寝転がった。
婿養子、親と同居とあり、最初は、上手くいくかと不安もあったが、今のところ、なんとか上手くやってます。
「お母さん、恭ちゃん、寝ちゃった?」
「さっきまでママを待ってるって、起きてたんだけど、寝ちゃたわよ」
「じゃあ、起こさないように部屋連れていこう」
母の部屋に、恭ちゃんは、寝てた。
寝顔が可愛くて、ほっぺを突っついた。顔は、リョウタにそっくりだ。性格も似てるかもしれない。
本当は、恭ちゃんのそばに、ずっといたいのだが、お店があるので、お母さんに恭ちゃんの面倒をお願いしてる。
「京子、遅いわね。うどん、伸びるわよ」
「また、恭と寝ちゃったんだよ。化粧も落とさないんだよ」
「あの子も40歳なのに、化粧を落とさないで寝るのは、肌によくないのにね」
「オレ、あとで、クレンジングで落としてやりますよ」
「リョウタくんは、優しいのね」
この会話は、ほとんど、母と息子の会話のようだ。
水曜日。花江とファミレスで、ランチをする。
「京子は、いいわよね。あんな若い旦那様がいて。だから、京子は、若いし、肌がツルツルなのよ。若い旦那様で、女性ホルモンが活性化してるのよ。あー羨ましいー」
そろそろ、花江の妄想劇が、始まりそうだ。
恭ちゃんと二人で、花江の話を聞いていた。
「一度でいいから、山崎賢人くんに、壁ドンされてみたいわー」
山崎賢人くんって、それは高校生の話しではないか。
「山崎賢人くんがダメなら、福士蒼汰くんでもいいわー」
福士くんでも、かなりレベルが高い。
「壁ドンだけで、いいの?」
「もちろん、その上もよ。やっぱり最初は、壁ドンで、キュンキュンしたいじゃない」
もう花江は、恋する乙女である。
「花江おばちゃん、壁ドンって、なあに?」
恭ちゃんが、花江に、質問した。
「恭ちゃんみたいなイケメンに、壁にドンってされることよ」
「ドン?」
「そうして、おばちゃんは、キュンキュンするの」
「じゃあ。僕、ママにするー」
「京子が、羨ましいわ。イケメンが二人もいて」
花江は、喋りすぎて、喉が乾いたのか、コーラを一気に飲んだ。
「私の旦那なんて50歳よ。50歳。リョウタくんの父親みたいな年よ。あんなオッサンとじゃあ、家にいてもキュンキュンしないわ。休みの日なんか全く動かないし、邪魔よ。邪魔。どっかに出掛けてほしいわ」
今度は、旦那の愚痴を話し出した。
「そういえばリョウタくん、婿養子だけど、京子の両親と上手くやってるの?」
「まあね。両親が、婿っていうより、リョウタを大きい孫扱いで、甘やかしてる」
「あんだけ若けりゃね。リョウタくん可愛くて、憎めないから、まさに孫タイプよね」
「この間、父親がリョウタに新車を買ってあげたの」
「もしかして、あのでかい車?7人乗りじゃないの?」
「うん。仕入れにも使うし、家族で出掛けるときも、でかい車がいいだろって、リョウタが欲しい車を買ってあげたの」
「気前のいい義親なら、同居するもんだねー」
ほんとに、こんな田舎に来てくれて、しかも婿養子で、しかも私みたいな年上に、来てくれたので、よくぞ来てくれましたと感謝されぱなっしである。私なんて、軽自動車に乗ってるというのに。
まあ、リョウタも、私の両親に、なついてくれてるので、甘やかしてることは、強く注意できないのである。
「お義母さん、京子は、まだ帰ってこないの?」
リョウタが2階から降りてきて、母親に聞いた。
「恭ちゃん連れて、花江ちゃんとランチしに行くっていったきりなのよ」
「花江さんじゃ、盛り上がってんだろうな」
そのとおり、私と花江は、まだ盛り上がっていた。
「リョウタくん、私ちょっとスーパーに行ってくるから」
「あっ、オレも行きますよ。新商品のビール買いたいんで」
「そう?」
そういって、リョウタと母親はスーパーに行った。
「あら。笹原さん?久しぶりですね」
私の兄と同級生の息子さんがいる木原さんが、母親に声をかけてきた。
「木原さん。ほんとに久しぶりですね。」
「あら。笹原さんに、こんな若い息子さんいました?」
母親の隣にいたリョウタを見て、木原さんは言った。
「まあ息子なんだけど、うちの娘の婿なんですう」
母親は、木原さんに意気揚々と言った。
「こんにちは」
リョウタは、木原さんに頭を下げた。
「お義母さん、オレ、あっちで、ビール見てるから」
そういって、リョウタは、ビール売り場に行った。
「娘さん、結婚したんですか」
「そうなんです。35歳すぎて、やっと結婚しました」
「ずいぶんイケメンのお婿さんですね。モデルさんかと思いましたよ」
「モデルでは、ないですよ。いつもモデルみたいっては、言われるんですけどね。おほほ」
なんだか母親は、勝ち誇ってるような言いかただ。
「お姑さんと一緒にくるなんて、お婿さんと仲良いんですね」
「まあ普通に。優しい婿なもので。おほほ」
また勝ち誇っている。
「でも、木原さんの息子さんほどじゃないですよ。木原さんの息子さんは、県職員で、立派な息子さんですもの。お嫁さんも、綺麗な方だって聞きましたよ。うちの娘より年下の娘さんも、立派な旦那さんなんですよね。羨ましいわ」
なんだか母親は、皮肉を言ってるように聞こえる。
「でも、娘さん、晩婚でも、素敵なお婿さんをもらってよかったですわね」
人の娘を晩婚とは、木原さんも、皮肉だろうか。
「残り物には、福があるっていいますからね。おほほほー」
母親の高笑いがスーパー中に響いた。
「リョウタくん、欲しいものカゴに入れていいわよ」
木原さんと話を終えた母親が、リョウタのところに来た。
「お義母さん、ずいぶん盛り上がってたね。笑い声こっちまで、聞こえたよ」
「ちょっと、盛り上がっちゃたわ」
しかし、母親は、してやったみたいなスッキリした顔をしていた。
リョウタと母親が家に帰ってきた。
「京子、遅かったな」
リョウタが、私に言った。
「ごめんね。花江と話が盛り上がってしまって」
母親と夕食を作ってる時、母親が、言った。
「スーパーで、木原さんに会ったのよ」
「木原さんって、兄さんと同級生のユタカさんのお母さん?」
「そう。もう、会うたびに自慢ばかりしてた木原さん。木原さんの娘さんが、早く結婚したから、会うたびに、京子は結婚してないから、娘さん結婚まだなの?って、しつこく言われて嫌だったわ」
「でも、木原さんの娘さんって私の後輩だから、花江言ってたけど、今、離婚で揉めてるらしいよ」
「それは、私も他のお母さんから、聞いた。だから、リョウタくん見てイケメンだって言ってたから、残り物には福があると言ってやったわよ」
そうきたか。散々、今まで、木原さんに皮肉を言われ、自慢され、我慢してたのでろう。しかし
「お母さん、そういう婿自慢とか、やめてよね」
「あら。イケメンは、本当なんだもの。別にいいじゃない。」
もう、聞く耳を持たない母親である。
そんなこんなで、やや田舎の実家に、リョウタと帰ってきて、なんとかやってます。
これから、同居だし、田舎だし、色んな問題がでてくると思います。