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思い出の中から

靴をそろえて消えた人

作者: ソラヒト

旅行中の記録から。


夏でも荒い夜の海へ

デッキに靴をそろえて消えた人

どうして靴を残して

    靴をそろえていったのだろう


ボクとは離れてたたずんでいた人

靴をそろえて消えた人

どんな意味を込めて

    靴をそろえていったのだろう


 周囲の人が騒ぎ始めた

 靴のつま先は海へ向いていた

 船はあたりを二時間捜索した

 その分予定より遅れた

 事務的な作業に見えた

 サーチ・ライトがまぶしかった


「見つかるはずない」

 誰かが言った

「本気なら、助かろうなんて思わない」


今になってこんなことを思い出したのは何故だろう

あの船はもう存在しない

ボクはまだ生きている

靴もそろえずここにいる


16/9/25 Sat. ~ 16/10/19 Wed.

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