本音と本音
「.........どこにいたんだ....こんな...ゾンビ....」
「.....坂野....俺....まだ....死にたくねぇよ....」
絶対絶命。坂野と岡本、二人の前に20体のゾンビ。手にはライフル銃。じっと構えてるゾンビ。恐怖で一歩も動けない坂野と岡本。一歩でも動けば、二人の体は一瞬にして穴だらけだ。
「............もう.....ダメだ...........ウウゥッ....ウッウッ......チクショウッ」
「泣くな!!岡本!!!まだ死ぬって決まった訳じゃねぇ!!!
ほら...見ろ....奴ら構えたままいっこうに撃ってくる気配がねぇ.....」
ゾンビ達は銃を構えたまま、まったく動かなかった。
「.....なぁ....岡本....もしかしたら....こいつら動かねぇんじゃねぇか?」
「......そんな訳ねぇだろ.....きっと....何かを....待ってんじゃねぇか?」
「待つ!?何を待つんだよ???」
「......合図.....とか.....あんじゃねぇか...?」
「.....だったらその間に逃げれるんじゃねぇか?」
「........さぁ?.....でも.....全然動かないな...」
「.....ああ.....やるなら今だ...逃げるぞ...」
「分かった.....じゃあまず....坂野から...」
「何でだよ!!!二人一緒にだろ?」
「言い出しっぺはお前だ。お前が逃げれたら...俺も行く」
「ふざけんな!そんなこと言っている場合じゃない!一刻も早くここから離れるんだ!」
岡本が、急に黙りこんだ。坂野が驚いて岡本の顔を覗きこんだ。すると岡本はまた、涙をこぼしていた。
「岡本!!泣いてる場合じゃないだろ!!!」
「うるせぇよ!!!!!!!!!!!!!!!」
「...........................?」
その場が氷ついた。岡本の目から流れる涙が、勢いを増した。坂野は、少なからず岡本の態度に動揺した。
「......悪い.....坂野......」
口を開いたのは、岡本だった。
「........情けねぇけどさ.....俺もう怖くて動けねんだ.....何もかもが怖いんだ......俺まだ一回もゾンビの顔見てねぇもん.......俺さ.....本当に弱い人間だよ.....情けねぇよ......もう......怖いんだ....」
「............岡本.......」
「俺さ!さっき初めて人殺したんだよ、恐かったけど勇気だしてさ!グサッて......坂野はあんなこと三回もやったんだろ?」
坂野は何も言わなかった。
「.....でもさ...坂野.....人を殺すって気持ちいいもんじゃねぇな....」
岡本は、その場に座りこんだ。というより、岡本に立っている気力が残されてなかった。
坂野は驚いて岡本に駆け寄り、盾のように手を広げて岡本の前に立ったがゾンビは動きを見せなかった。
坂野は恐る恐るしゃがみこむと、岡本の方へ向き直った。
岡本は、子どもみたいに泣きじゃくり、坂野に抱きついた。
「......ウッ.....ウッ....坂野....俺さ....最初お前が参加してるって聞いた時、本当に恐かったんだ.....警官を殺す、残虐野郎だと思ってたんだ.....だけど....違った
.....お前は....今も俺の側にいる.....俺もお前らと
一緒に武器探索に行けばよかったよ......」
「......岡本.....ここを逃げきったら教えてくれ.....
お前らに何が起きたのか....」
岡本は、泣くのを止めた。
「......この後ろの茂みを抜けると、小さな川が見える。その川沿いに下って行くと小屋がある。そこに行け」
岡本はそう呟くと、坂野から離れた。
「早く行け!!坂野!!」
坂野は戸惑いながらも、茂みへと走りだした。その瞬間だった。
ドーン!ドドドドーン!!ドンドンドンドン!!!ドーン!
ゾンビが一斉に引き金を引いた。坂野は驚いて振り返った。
弾はすべて岡本に命中した。岡本はその場に倒れた。
「岡本ぉぉぉぉぉぉォォォォオオオオ!!!!!!!!!」
坂野は急いで岡本の側に駆け寄ったが、それは無意味な行為だった。岡本はもう原型を止めてなく、血まみれで、肌が見えなかった。