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王の剣  作者: ポロニア
4/10

第四話 「伝説の勇者のような勇者」

 ――4――


 ドラゴンに壊された噴水の広場に人々が集まり、トーアを囲んでドラゴン退治のお祝いが始まりました。町の人たちは、壊れた建物の木材で作った焚き火を囲い、お酒を飲み、美味しいご馳走を食べて上機嫌です。


「トーアさん、あなたの勇敢な行動で、私どもの町が救われました」


 町長が、トーアに感謝の気持ちを伝えました。町の人たちも、ドラゴンをやっつけたトーアを褒め称えました。

 でも、トーアは、あんまり人から褒められたことが無いので、なんと答えて良いのか分からなくて、「はぁ、どうも」と、ヒゲをモゴモゴと動かすだけでした。


「そうだおー、トーアは強いんだおー」


 カーレは、大好きなトーアが、たくさんの人に認められたのが嬉しくて、ふらりふらりと飛び回りました。まだ、酔っ払っているみたいです。


「しかし、何とも熊のように、むさくるしい男じゃないか」 

「そうだそうだ! 床屋よ! 出番だぞ!」


 町一番の腕利きの床屋が、トーアのモジャモジャの髪の毛を、ジョキジョキとハサミで切り落としました。モジャモジャのヒゲも、ゾリゾリとカミソリで剃り落としてしまいました。

 するとどうでしょう! のっそりと立って歩く熊のようだったトーアが、見違えるほどに立派な青年になりました。たくましくて背が高く、きりりとした顔立ちのトーアに、町の娘たちは見とれています。


「なんて凛々しい青年なんだろう」

「まるで伝説の勇者のような若者じゃないか」

「そうだ! ドラゴン退治の勇者トーアだ!」


 広場に集まった人々がトーアの名前を何度も呼び、何度も何度も拍手をして、トーアの勇気を称える歌を歌いました。

 皆が酔っ払ってすっかり眠り込んでしまってから、トーアはカーレに聞きました。


「なあ、首から上がなんとも寒いのだが、これはこれで良いのだろうか」


 なんともすっきりした頭を、ガシガシとかき回すトーアに、カーレは笑いながら答えました。


「それはそれで良いんじゃない? わたしは驚いちゃったけど、とってもカッコイイと思うよ」


 カーレに、「とってもカッコイイ」と言われて、トーアは嬉しくなりました。町の人たちから褒められるよりも、ずっとずっと嬉しくなりました。

 でも、カーレは、モジャモジャのトーアも良かったなぁ、と思いながら、トーアの短くなった髪の毛の上で横になりました。


 朝になると、町長と町の人たちがトーアとカーレの前に集まりました。

 そして、町長が、「勇者さま。どうかこれをお持ち下さい」と、町の宝物の銀の長剣と銀の鎧を、芝居かかった仕草でトーアに差し出しました。

 トーアは、「はぁ、どうも」と、剣と鎧を受け取ろうとした途端に、町の娘たちがトーアの着ている服を脱がせにかかりました。


「ちょっと! トーアに何するのー!」


 怒ったカーレが、娘たちの頭の上を飛び回りました。

 しばらくして、娘たちがトーアから離れると、そこには銀の鎧に身を包み、銀の長剣をたずさえたトーアが立っていました。それこそ伝説の勇者のようなトーアの姿を、カーレはぼんやりと眺めました。


「トーアさん、いや、勇者さま。どうか、竜の女王を倒して平和を取り戻して下さい!」


 興奮して早口でしゃべる町長に、トーアは、「竜の女王を倒しに行くのではなく、話を聞きに行くつもりです」と、どうにも上手く説明できなくて、いつものように、「はぁ、どうも」と、答えました。

 それを聞いた大勢の人たちが、「勇者トーア! ドラゴン退治の英雄トーア!」と、何度も大きな声を上げて拍手をしました。

 これにはカーレもビックリして、目をパチパチしてしまいました。トーアはきょろきょろしながら、「はぁ、どうも」と、何度も頭を下げました。


「ばんざーい! 勇者さま、ばんざーい!」


 町を救った勇者とお供の妖精の姿が見えなくなるまで、町の人々は、「トーア! トーア!」と、声を上げ続けました。

 町から遠く離れ、町の人たちの声も聞こえなくなってから、「なんだか、すごいことになっちゃったね」と、カーレが言いました。

 トーアは、「はぁ、どうも」と、言いました。どうやら口ぐせになってしまったようです。二人は顔を見合わせて大笑いしました。


「ねえ、トーア。相談があるんだ」


 カーレは、ずいぶんと、すっきりしたトーアの頭の上に乗りながら言いました。

 トーアは、ずいぶんと、すっきりした顔をゴシゴシこすりながら、「なんだ?」と、低い声で言いました。

 声だけは変わっていないなあ、と、カーレは安心しました。そして、「この先の森に、私の生まれた泉があるの。そこにはね、妖精の女王さまが住んでいるの」と、言いました。


「カーレ、俺が会いに行くのは妖精の女王じゃなくて、竜の女王だぞ」


 と、トーアが不思議そうな顔をして言いました。


「ねえ、トーア。人の話は最後まで聞かないとダメだよ。大切なことは、最後に言うんだから」


 と、カーレは空を飛びながら、腰に手をあてて言いました。


「妖精の女王さまはね、不思議な魔法を使えるんだ。わたし、女王さまに力を貸してもらおうと思っているの」


 トーアは、少し考えてから、「俺がカーレを守るから大丈夫だ」と、言いました。


「あのね、トーア。わたしはね、トーアの役に立ちたいの」


 真剣な顔をしたカーレを見て、トーアは、「はぁ、どうも」と、言いました。

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