浮くか浮かないか
「やぁ、友よ。」
軽くあげた右手を、同級の長内<オサナイ>は総ムシだ。
「クールキャラはもう売れませんよぅ~人気が出るどころか引かれちゃいますよぅ~。」
右眉はいまのところ引き攣らないようです。つまんねぇ。
「お前と俺が一体いつから友人関係築いたって?」
相変わらず不機嫌みたいだけど気にせずあたしは、口元を指差した。
ふぅ、っと息を吐いたらなぜか懐かしの真っ黒いゴミ袋が膨らんだ。あたしは気に食わないから両手をいっぱい開いて叩き割る。
ぱちん。
両手の重なった音だけ残って、もう黒いゴミ袋は跡形もなく消えていた。
「見えた?」
「見事なゴミ袋だったな。」
あたしは頭をかく。
寄生虫持ってるとかじゃないのよ、まじで。
「見えてんのかぁ〜まじかぁ〜。」
とりあえず長内の両手を捕まえてブンブンと上下に振って、外交ごっこをしたら、光の速さで殴られた。
「もういっかい、見せろよ。」
長内がガラになく、欲張ってるよ。
「ふふっ。」
思わずこぼれた息みたいな笑いでハート型の風船が膨らんだ。
「なんで白?」
長内にはハートは綺麗なピンクだなんて立派な固定概念が巣くってるらしい。
「さぁ?調節とかできないしねぇ……。」
ハートの風船の口をくくる。
糸を結ぼうとしたら手からすり抜けていって、天井でふわふわと揺れている。
「お前の息、すげぇな。」
「?」
「風船ってさ、ヘリウムとか空気より軽い気体入れなきゃ浮かないんだ。お前一体なに吐いてんの?」
「酸素だぜー。」
「いや、せめて二酸化炭素だろ。」
長内の下手なツッコミを流しながら、放課後の教室にいるのは初めてかもしれないな、って息をついた。
夕焼けと同じ、橙の風船が膨らんだ。




