時は江戸
時は江戸
「知恵」をもつ南の鬼 五条椿を当主とする五条一族。
「優しさ」をもつ西の鬼 西院伯爛を当主とする西院一族。
「能力」をもつ東の鬼 桜龍碧を当主とする桜龍一族。
「力」を求める北の鬼 剋炎彗月を当主とする剋炎一族。
東西南北に別れて住む「鬼」
古代から強大な力を求めていた北の鬼は、東の鬼のもつ特殊な能力を奪おうと戦いをしかける………。
それを止めさせようと南、西、東の鬼たちは手を組み、北の鬼に挑んだ。
そして鬼による全面戦争が始まった………。
何ヶ月にまで、争っていた戦いは、終わりを迎えようとしていた。
「俺たちの時代は終わったんだよ。
」
「終わってない。オレの時代は終わらない!!終わっているのはお前らだけだ!!」
ガッガッ
何時間も刀の交わる音だけがした。
共に戦っていた仲間は無惨な姿で斬り殺されていた。
今、生き残っているのは、北の鬼の当主、剋炎彗月。
そして東の鬼、桜龍碧。
ガッ
「チッ…。邪魔だ!!」
「!?!?」
彗月は足元にあった、仲間の亡骸を蹴り飛ばした。
「そいつはお前の仲間だったろうが!?」
「フッ…。こんな奴らを仲間なんて思ったことない。」
彗月は当然のように言った。
「……お前…仲間をなんだと思ってる…。」
彗月の言葉を聞き…碧の怒りがフツフツとこみ上げていた。
「ただの道具だ。」
その言葉を聞いた瞬間、碧の怒りが爆発した。
「お前は未来は死だ!!」
そう言うと同時に碧は彗月に向かって斬りかかった。
「フッ…。やってみろ!!」
ガッガッ
刀の交わる音。
なにもない空間でその音だけがやけに響いた。
「………クッ」
「フッハハ!!さっきまでの勢いはどうした!」
そう言われ、北の当主との力の差を感じた。
「…クソッ!!」
碧はいったん彗月から距離をとった。
「さすがだな…。力を求めてる北の鬼の当主…。」
「ハッ。今さら命ごいか?」
彗月は刀を構えながら、フッと笑っていた。
「……誰が命ごいなんかするか。もうこの戦いを……すべて終わらせるんだよ!!」
碧はそう言うと眼を閉じた。
そして次の瞬間
碧の片眼が透き通るような青い眼をしていた。
"鏡沁眼"
「!!!!」
「…………。」
「なんだその眼は…。」
「……鏡沁眼…。」
「…鏡…沁眼?」
「東の鬼だけがもつ能力。お前が欲しがっていた力だ。」
"鏡沁眼"相手の動き、未来、すべてを見通すことのできる眼。そう、碧の鏡沁眼は片眼しか開眼していない。
「そんなことオレには関係ない。今すぐその眼をよこせ!!」
彗月はダッと地面を蹴り、斬りかかってきた。
「無理な願いだ……。お前の未来は死だからな。」
ガッ
刀の交わる音。
「………グッ…。」
「さっきまでの勢いはどうした彗月!!」
何ヶ月も続けてきた戦い……。
それももう終わりを迎えようとしている。
東の当主、桜龍碧の手によって。
「これですべてが終わりだぁ!!」
「うわぁぁ!!」
ザクッ
身体を切り裂く音が耳に残る。
「…………。」
「…………。」
そしてしばらくの沈黙。
「………ぐっ……うぁ…」
ドサッ
先に倒れたのは、北の鬼の当主、剋炎彗月だった。
「ハァハァ……。」
「オレ……が…こんな…や……つら…に…」
「ハァハァ……。こんな奴らにお前は負けたんだ。」
「負…けて…グッ…ハァハァ…」
彗月は胸から血を流しながら碧を見て言った。
「…………。」
「負けて…ない!!」
碧は北の鬼の当主、剋炎彗月の心臓の真上に刀を突きつけた。
「もう眠れ彗月。」
グサッ!
この瞬間、彗月は眠りにつき、そして、何ヶ月にもよる戦いはすべて終わった。
「ゴホッ……。これで終わった…。」
碧はその場に倒れこんだ。
そして、今までのことを思い出していた。
仲間…家族…すべてを……。
「……これで…俺たちの時代は終わった……。
この後の時代は
我が子孫に託する!!」
碧はそれだけを言い残し、永遠の眠りについた。
そして長年による「鬼」の時代は終わった……そう思われていた。