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エピローグ

 あれから二日後。

 久しぶりの休日となったメイは、俺を連れて中央通りに買い物にやってきた。

 メイはまっさきに一件の小物屋にはいると、ヘンなデザインのブローチやら、小物入れやらをきゃーきゃーいいながら眺め、手に取っていく。

 俺もしばらくは付き合っていたのだが、一向に終わりを迎えない女の買い物に耐えられなくなり、一足先に店を後にしていた。

 ベンチの背もたれ部分にとまって待っているのだが、メイはなかなか出てこない。こんなことなら家で待ってりゃ良かった。

「あっ、とらちゃーん。お待たせしましたー」

 小一時間ほど経って、ようやくメイが店から出てきた。入るときには持っていなかった小さな袋を手に提げている。

「それだけ買うのに、なんでこんなに時間がかかるんだよ」

「わたしに無限の財産があれば、ここからここまでーって言って買ってもいいんですけどー、爪に灯をともす生活ではそうはいかないのですよぅー」

 メイは口をとがらせてそう言うと、ベンチに腰掛けた。今日は仕事ではないので、いつものゴスロリ仕様のドレスは身につけておらず、普通の格好だ。ただし、ツインテールはそのままだが。

「とらちゃん、まだちょっと不機嫌ですねー。こうかくにならなかったんだから、もういいじゃないですかー」

 あの後、メイの言っていたとおり、俺たちは課長にこっぴどく叱られたが、幸いにして処分は受けずに済んだ。結果的に無差別殺人を回避できたことが、一応評価されたとのことだった。

 とはいえ、まったくのお咎めなしともいかず、メイはいつもの倍以上の報告書を書かされたし、俺は俺で分厚いマニュアルをいちから読み直す羽目になった。そのあとには確認テストまで受けさせられた。

 それで、昨日は一日つぶれてしまったのだ。

「いま不機嫌なのは、そのせいじゃないけどな」

 俺はベンチの背もたれから定位置のメイの肩へと飛び移ろうとする。

「あ、ちょっと待ってください。そのまま、そのままー」

 メイは袋を探りながら俺を制止し、顔を近づけてきた。ツインテールが揺れて、片方が俺のくちばしにかすかに当たった。

「じっとしててくださいー」

「?」

 メイは袋からなにやら取り出すと、俺の首もとでごそごそやっている。

 やがて、首もとにかすかな圧迫感を感じた。メイが俺の首に何かを巻いたのだ。

「できましたー。とらちゃん、苦しくないですか?」

「ああ……」

 確かに、苦しくはない。

「あ、似合ってますよぅー。とらちゃん、かわいいですー」

 メイは離れた位置から俺を見て、手をたたいて喜んでいる。

「おい、なにをしたんだ」

「えへへー、プレゼントです」

 メイははにかむようにしてそう言った。それはいいのだが。

「俺にはどうなってるか、全く見えないんだが」

 身体の構造的に、俺は自分の首もとを自分じゃ確認できないし、手で触ってみることもできない。

 さっき小物屋でみていた限り、こいつの趣味は俺とは合わない。いったい、どんなものをつけられたのか気が気じゃなかった。

「あ、そうですねえ」

 メイは言われて初めて気がついたような反応をすると、また袋を探った。

 そして、小さな手鏡を取り出した。取っ手にドクロのワンポイント付きだ。これを「かわいい」と平気で言うあたり、俺には理解できない。

「はい、どうぞー」

 こちらにむけられた手鏡を、おそるおそるのぞきこむ。

 俺の首もとに巻かれていたのは、蝶結びにされたシンプルな純白のリボンだった。

「えへへー、とらちゃんの初仕事おつかれさま記念ですよぅ。どうですかー?」

「ん、意外と……」悪くない。

「とらちゃんがまっくろなので、やっぱり白がいちばん合うかなぁって。ほかにも、赤と水色のストライプとか、ドクロぼうやのプリントとかもあって迷ったんですけどー」

「なんだよ、ドクロぼうやって……」

「この世界の女の子に人気なグロかわ系のキャラクターですー。なんだったら、交換しましょうか?あれも似合うと思うんですよぅ」

「断固拒否する」

 俺はこれ以上メイの気が変わらないうちに、メイの肩へと飛び移った。

「わっとと」

「これで十分だ。ありがとうな」

「えへへー、どういたしましてですよぅー」

 俺が礼を言うと、メイは笑顔になった。

 こいつはバカだし、決して美少女なんかじゃないが、笑顔はまあ、悪くない。

「じゃあ行きましょうか。おなかも空いたし、お昼ご飯ですねー」

「そうだな」

 メイは立ち上がり、通りを歩きはじめる。

「わたしは久しぶりにお肉の気分ですー。とらちゃんは、カラスウリとカラスムギ、どっちがいいですか?」

「なんでその二択なんだよ……」

 俺はメイの肩の上で、すっかりなれた調子でツッコミを入れる。

 明日から、またターゲットの魂を回収するため、仕事の日々だ。

 こいつがどんなにバカだろうと、俺には選択権はない。こいつと一緒に、これからもやっていくほかはないのだ。

 だがまあ、何とかなるだろう。

 休日の昼下がりが醸す暖かさのせいか、それとも首もとのかすかなむずがゆさのせいか。俺は至極楽観的に、そう考えるのだった。



          終わり



お読みいただきありがとうございます。


長くなりすぎました……。当初予定のほぼ2倍の分量に。

あまりの長さにエピローグを別に分けるはめになってしまいました。

前回同様、軽く読めるものを、というつもりだったんですが、ちょっとテーマが重すぎましたかね。

読んでいただいた方にすこしでも楽しんでいただけたならいいのですが……。


よろしければ、ぜひご感想をお聞かせください。

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