後の者
彼等がいて、その現実があって、だからこそ、今がある。
珍しく真面目に授業を聞いていた私は、ふと、そんなことを思った。日本史など、もともとそんなに興味はない。只、点数稼ぎがし易い授業であっただけだ。
歴史はそう変わらない。公式もいらないし、自ら頭を捻って答えを出す必要もない。只、暗記すればいいだけ。先程までは、それだけのものだった。
「史実は現実だが、真実ではない」
黒板に過去の戦争のいきさつを書きながら、先生は、そんなことを口にした。うだる様な暑さの中、冷房さえない教室で、その言葉がやたらと、私の耳に残る。
史実はそこにあって、現実はそこにあって、では、真実はどこにあったのだろうか。
今ここに私がいること、平坦で特別なこともない日常。それでも、時折感じる安心した幸福感。少なくとも、私の周りで命のやりとりを強制される様なことなど、ありはしない。彼等の気持ちなど、到底理解することは不可能だった。
それでも思いを馳せてみる。
「……あ」
遠く視線を窓の外へ投げれば、いつぞやの彼等もまた目にしたであろう、陽炎が見えた気がした。
読了いただき、誠にありがとうございました。
飽くまでも全ては作者が想像したものであり、史実ではございません。何卒、ご理解ご了承をお願いいたします。
戦争とは何か、命とは何か、歴史とは何か。作者自身、それらを思考しながら書かせていただきました。
尚、この連作短編は三年以上前(2011年1月8日現在)に自サイトにて書き上げたものを移動したものになります。




