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逝く者
平和とは言い難かったがそれでも幸せではあった。
しかし、日常は覆される。それは掌を返す様に、あっという間に。時代と言う波に翻弄され背負いたくもない大義名分を 只、無理矢理に背負わされて。そんなこと、口が裂けても言えはしないのだが。
赤札。
あれが届いた時から、俺の行く末は決まっていたのだ。
生きた心地がしなかったとか、そういう次元の感覚ではない。あれは──あれは、死んだも同然の感覚だった。
俺よりも年若い者達が、国の為にと口を揃え、空へ海へと駆け抜けて行く。その目に映るのは、何であっただろうか。宿るのは、決意。愛しい者、大切な者を守る為のきっと、いや、間違いなく純粋な決意。決意を宿した目が映す、真実は、現実は、壮絶であり、悲惨な、只の殺し合いに過ぎない。
何が本当で、何が嘘であったのか。
人間を只の肉の塊にする瞬間、死んでしまいたいと思った。もう、大義名分など関係ありはしない。誰しもが、今、自らが生き延びる為だけに殺し合うのだ。勝敗など、その延長線上にある結果に過ぎないのだと、冷えた頭の芯で、そう思った。
ひゅーひゅーと、風が鳴く様な音が耳を微かに打つ。撃たれた喉から漏れ出したのは、その音と、しとどに溢れ行く鮮血。
「──……」
声も出ず、遠く投げた視線の先に、陽炎が見えた気がした。




