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エンジェル・ペイント  作者: 沙夜菜
■Go together sometime
25/25

エピローグ

ある時、俺は美術室でかなり苦戦していた。

 教室の前の方には音楽の先生が座っている。この先生をモデルに描け、という課題だ。格好、髪型や服はそれ通りだが、表情は自由していいということなので、俺は美湖といえば一番に出てくる顔、あの微笑みを描くことにした。それなのに、それなのに─────────

瞬が突然話しかけてきたせいで、色鉛筆がずれ、妙に悲しげな顔になってしまったところだ。

「口とかはさ、ちょっとした陰影で表情変わるよ」

 先生のアドバイスにうなずくが、それもどうもうまくいかずに苦闘している。

「どうしたんだよ?光、なんか調子悪いの?」

尚平が言うが、自分でもよく分からなくて首を傾げる。

「まぁ、誰が原因かは言う必要もないと思うんだけどさ」

苦笑して尚平が続ける。

「えっ、誰なの?」

わざとか本気か知らないがそう割って入ってきた瞬を睨みつける。

「誰だと思う?筆止めてでも自分で考えてみろ」

と俺が言うと、瞬が「誰だろなぁ?」とわざとらしく首を傾げた。・・・・・・さっきのもわざとだったか。

「え?誰かがいきなり声かけてきたから、鉛筆ずれたんだと思ったけど・・・・・・俺の気のせいかな」

俺の皮肉を瞬は聞き流そうとして、それでも返事を返してくる。

「うん、気のせいだって。多分気のせい、本当」

たじたじなって言うところが面白かったが、こちらの言葉がなくなったのでもう突き落してしまう事にした。

「気のせいじゃないと思うよ、俺は。なぁ尚平?」

「うん、俺が見たところでもその誰かが光にいきなり声かけるから」

「その誰かって誰だと思う?」

尚平と手を結んで瞬を見ると、「お、俺です」となんとも弱々しい声が返ってくる。

「ほら、さっきから認めときゃよかったものを・・・・・・ってそうじゃなくて、まじでどうしようこれ」

 首を傾げてまた考える。陰影って、嫌いではないが苦手だ。

 とそのとき、腕が動いた。特に意識したわけでもなく、鉛筆を握ったままだった手が画用紙の上を走ったのだ。

「あ、出来たじゃん」

瞬が覗きこんできて言う。

「うん、なんか・・・・・・」

勝手に動いた、と言おうとしてやめた。何気なしに部屋を見回すと、窓の外に広がる空の雲のきれまから、美湖の横顔と色鉛筆を握る姿が見える。ということは、さっきのは美湖の仕業か。


そんなことよりも。


─────────美湖、お前だって絵、上手いじゃないか


                               

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