第12章
それからは、至って穏やかな日々が過ぎていった。
西暦が2013年に変わったときに瞬と行った初詣の際に美湖と会った時は、去年と変わらない笑顔を見せてくれた。
2月は・・・・・・唯一、「穏やか」ではなかった気がする。バレンタインに、あわてて「義理だからね」と付け加えられたチョコを一口かじるなり、顔をしかめる結果に陥った。
おそらく美湖は、料理上手な母親に甘えてほとんど料理を学ばなかったと見える。
4月に3年になったときは、美湖とも瞬ともクラスが分かれて、3人ともバラバラになった。
それで学校での関わりが浅くなったからか、すっかり「他人のフリ」が定着しつつある。
そんなでも、俺たちの部活がない時にはクラスに顔を出してきて、一緒に帰ろうと微笑んでくるのが常だ。
あの池にもよく行っている。行くたびにその絵を描く訳だから、1冊スケッチブックが埋まってしまったほどだ。
幸運なことにも、俺たちが居座っている間に数少ないここを知っている人と鉢合わせすることはなかったし、このまま「秘密基地」が定着してしまいそうな感じである。
こんな日々がいつまでも続けばいいと思った気持ちは、今となってはそう無視するものでもない気がした。