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プロローグ
5月下旬、初夏。
──────あるいは、初夏と呼ばれる時季。
カッターシャツが汗でじっとりと濡れて、額からは汗が流れおちる。
ここから見える公園の噴水には、早くも小さい子たちが水着を来て遊んでいる。市民プールも大盛況。
ひっきりなしにセミの鳴き声が聞こえ、部屋で窓や扉を開けないのは自殺行為に値する。
────ような状況を、「初夏」と呼べるのだろうか。
今年は、例年になく暑いと聞いた。
6月に入る前からこんな気温で、一体7月からどうなるのか本当に疑問である。
夏は、大嫌いだった。
当然、夏の始まりの「初夏」が好きなわけがない。
でも、今夏が嫌いかと聞かれるとハッキリ「No」とは言えない。しかし、「Yes」とも言えない。
脳裏に響く、あの悲鳴。
あの辛い出来事があった「初夏」は一体いつだったか。
それと同時に、「初夏」が楽しみになったのはいつのことだったか。
あの笑顔が見れなくなったのは、いつのことだったか。