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【髙﨑は昇進できるか?の巻】

2年前の夏の日の朝、影山は、暑そうに扇子を扇ぎながら、視界に入った髙﨑を呼びつけた。


「髙﨑君、実は引き継いで欲しい仕事があってね」


「あっはい」


「私も忙しくて手が回らないんだよ・・」


「あっはい」


「そこで、若手の君にチャンスを与えようと思ってねぇ。どうだろう?」


「はい」


「ただ、競合他社が多くてねぇ・・中々、契約まで漕ぎ着けるのは大変だとは思うが、まぁ、頑張ってみてくれ給え」


「あっはい、是非、やらせてください」


「そうか、じゃぁ、頼んだよ」




 それから3ヶ月後の朝、髙﨑は満面の笑みで、影山の席の前に立って、


「部長!」


「どうした?」


「例の案件、まとまりそうです」


「例の?って、君に頼んでおいた案件か?」


「はい!」


「そうか、よくやった!それで?」


「明日、契約です!」


「髙﨑!とにかく契約まで気を抜くなよ!」


「はい!」




 翌日の午後、社内では髙﨑の話題でもちきりだった。


「髙﨑さん、すごーい、営業成績トップなんですよね」


「あっいや、偶々って言うか」


「次の人事で昇進間違いなしですね」


「まさか・・」と言いながら、髙﨑は心の中で、思い描いていた・・・


「俺もよく頑張ったから昇進は当然だろうな・・とにかく、自分で自分を褒めてあげたい、お疲れ様ってね・・」




それから1週間後の幹部会議終了後、専務が影山のほうを見ていった。


「そういえば、例の案件、契約出来たそうじゃないか、髙﨑君って言ったかな?」


「あっはい、うちの部の若手です」


「凄いじゃないか」


「えぇ、まぁ・・ただ、あの案件については、私が、かなり前から話を進めていまして、先方の担当者からは、内々で話はもらっていましたもので・・」


「そう言うことだったのかねぇ、なるほど・・まぁ、若手に花を持たせるのも上司としての役割だよ」


「はい」


「それより、秋の人事で、西日本エリアを君に兼任で見てもらえないかと思っているんだが、どうだね?」


「ありがとうございます」


「じゃぁ、頼んだよ。私から社長には通しておくからね」


「ありがとうございます」




 それから一月後の朝礼で、影山から新たな人事が発表された。


「神山くん、外山君、中務君」と影山が3名の名を読み上げた後、前に出て来る様にと手招きした。


その光景を見ていた髙﨑は、頭の中が徐々に真っ白になっていくのが、はっきりと分かった。


そして次の瞬間、思い描いていた昇進した自らの晴々しい姿が、走馬灯のように蘇って、瞳に涙が溢れそうになっていた。気が付いたら、髙﨑一人がその場に立ち尽くし、他に誰も居なくなっていた。


「髙﨑、どないしたんや?3人ともお前の同期やろう?何か言葉かけたらなあかんのとちゃうか?それとも今回の人事に納得いかんのか?もしそうやったら、社長に文句言いや。分かったな」と微妙にニヤッとして、影山は室を出て行った。


「くそーーーーーーーーーーー!」


その日の晩、高崎の鳴き声混じりの叫び声は夜が明けるまで止むことはなかった。




髙﨑のアパートの隣に住んでいる親子の会話。


「お母さん、又、隣のお兄ちゃん泣いてる」


「きっとまた、会社で嫌なことがあったんだね。そっとしておいておあげなさい」


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