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二回目〜

 二回目の旅路では、一回目の勇者の死について考えながら進んだ。

 勇者は神聖な力によって毒に耐性がある。なのに毒を盛られて死んだ。耐性を貫通するほど強力な毒だったのか?解毒薬も効かなかった。そんな毒物聞いたこともなければ書物でも見たことがない。

 では魔王を倒したことで神聖な力が失われたのか。それも違う。帰還途中でも魔王軍残党と思われる強力な魔物はいた。それらを勇者は軽々と倒した。力は失われていなかった。ならなぜ?


 勇者の死について考えると同時に、もう一つ考えなければならないことがあった。私が授かった力の代償として、私から失われる能力についてだ。寿命のほうは重要ではない。いつ死ぬかなんて考えても分からない。でも能力のほうは対策を練る必要があるだろう。

 寿命と能力はありがたいことに少しずつ失われるらしい。一気に何かを失えば、何が無くなったか分からないから困る。授かった力によって記憶を次に引き継げることは間違いない。自身の持つ能力について毎回確認すればいい。

 あとは新しい能力を身に付けられるかの確認。例えば料理だ。私は料理の才能を持って生まれなかったらしい。旅の最中は聖女が料理を担当してくれていた。聖女も貴族の生まれで、神殿に入るまでは料理なんてしたこともなかったのに。彼女の料理は美味しくて、私の料理は優しい勇者ですら口を閉ざすほどだった。


 聖女から料理について教わることにした。聖女も騎士も不安そうだったが、勇者は笑顔で私の背を押してくれた。

 努力は実を結び、勇者に美味しいよと言ってもらえた!聖女は勇者に対し呆れ顔だし、騎士からは及第点には程遠いとの評価を頂いたけど。


 今回も騎士は聖女と、私は勇者と恋仲となった。勇者と恋仲になればまた苦しむと分かっていたのに。私の恋心は嘘をつくことが出来なかった。勇者の甘い笑顔にドクンと心臓がなる。喜びと恐怖で。


 魔王のもとに辿り着き、やはりあっさりと倒すことが出来た。でも終わりじゃない。ここからなのだ。

 魔王戦にて、私は何か違和感を覚えた。それが具体的に何かは分からないけど、失われた能力が関係するのだろう。代償は確実にある。

 アリスティア神聖国への帰還途中、私は警戒を緩めることが出来なかった。パーティーの三人はそんな私を見て、呆れたような微笑ましいような顔をしていた。

 今回も、前回使った宿に泊まろうという話が出たが、私は駄々をこねるように全力で拒否した。一刻も早くアリスティアに帰ろうと、休息を取らずに行こうと提案した。三人は私の態度に思うところがあったのか、提案を受け入れてくれた。アリスティアに辿り着きさえすればなんとかなると思っていた。


 勇者は死んだ。アリスティアとの国境まであと少しという所で野盗に襲われたのだ。

 当然ながら騎士が盾を持って勇者の前に立っていたし、騎士の槍の練度は飛ぶ矢を撃ち落とすほどだ。私だって勇者を守るために身体を張って勇者の近くにいた。聖女が全員に保護の魔法をかけていた。

 でも駄目だった。野盗の放ったただの一矢が、騎士の盾を、槍を、私の身体をすり抜けるように間を縫って、勇者の眉間に突き刺さった。

 聖女が慌てて回復魔法を放つ。でも無意味だ。勇者は既に死んでいた。


 私は力を使ってやり直した。勇者がいる。隣には騎士と聖女。

 私は混乱していた。一回目の勇者の死因は毒だったはずだ。二回目の死因は弓矢だ。しかもまともな鏃すら付いていない、木の枝を削っただけの矢。

 死因は、勇者の死因は一つではないということだ。ならどうすれば。何を警戒すればいい?

 悩む私を更なる絶望が襲う。私は料理が出来なくなっていた。二回目で聖女から教わった、努力して身に付けた新たな能力は完全に失われていた。


 力は記憶を引き継ぐのみで、新たな能力を持ち越すことはできない。つまり私は能力を失い続けるしかないのだ。


 三回目では帰還のルートを変えることにした。前回は焦り過ぎて休息を取らなかったのが失敗の理由だと思った。なので今回はアリスティアの周辺国を巡りながら魔王軍残党を討伐し、有力者に恩を売った。念の為と護衛を付けてもらうこともした。勇者パーティーに護衛とは、と笑われもしたがどうでもよかった。


 三回目も勇者は死んだ。流行り病にかかったのだ。聖女は病も治せるので当然回復魔法を使う。だが無意味。恩を売った有力者に医者を手配させ治療を試みた。それも無意味。他の患者たちと同じように、呆気なく勇者は死んだ。


 私は力を使いやり直した。

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