アリスは激怒した
大好きで大嫌いな【なろう小説】への想いを綴りました。
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アリスは(いい加減にして!)と思った。
アリスはリリエンタール伯爵家に生まれた平凡な娘のはずだった。
両親は健在、跡継ぎの兄もいる。貴族令嬢としての教育を受け、同じ位である伯爵家令息の婚約者も出来た。何ら問題の無い普通の貴族夫人になるはずだった。
人生の歯車が狂ったのはアリスが15歳となり成人したあの日。
アリスの生まれた国では成人の日に魔力量測定を受ける義務がある。
魔力は無限の可能性を秘めた力であり、魔力の多さが強さに直結すると言ってもいい。現王家が国の頂点であるのも魔力量の多さ故である。
魔力量測定機は王家の魔力を受け止められるよう頑丈に作られている。
成人の日、当然ながらアリスも測定を受けた。問題なく測定を終えるはずだった。でも違った。測定機が壊れたのである。それも粉々に。
アリスの婚約は解消され、王太子と新たな婚約が結ばれた。
アリスは一連の出来事に驚いたがそれもまあ仕方のないことだろうと受け入れた。ここまでは、我慢できたのだ。
アリスは生来奔放な性格だった。でも貴族令嬢として生まれた運命を受け入れる理性もあった。だが王太子との婚約の日から、我慢ならない出来事が増えた。
まず魔力量測定機の弁償はアリス個人が支払うことになった。わけわからん。魔力量測定は国家事業だろ国がなんとかせえ。そうでなくてもアリスの両親が払えばいい。両親は領地で起きた災害からの復興に私財すら投じていたので払えなかったらしい。まあしゃあないか?
次に他家から嫌がらせを受けるようになった。ようは嫉妬だ。魔力量に関しても王太子との婚約に関しても。社交の場に出ればグチグチ言われ、お茶とワインと足をひっかけられた。器が小せえ。王家と王太子はアリスを守らなかった。王家の嫉妬も買ってたらしい。だから小せえのよ。
まあ口で何と言われようと聞き流してればいいし、物理的なもの魔力で回避できる。魔力ってすげえ。
お次は風評被害。誰にでも股を開くだの、傲慢な態度を取るだの、立場を利用して使用人をこき使うだの散々な言われよう。一度お忍びで街に出たら、市井の民にまで風評が広がってる。
これでいいのか王太子、お前の婚約者のことだぞ。でも勿論王家は不干渉、噂を否定しない。
ほんで次は婚約破棄。なんか庶子上がりの男爵令嬢をイジメたとか、王太子が真実の愛を見つけたとか、お前には王太子妃になる資質が無いとか?なんかごちゃごちゃ言ってらあ。
別に望んだ婚約じゃないから破棄でいいよと思って受け入れた。
ここまでは我慢出来た。この次だ。
お前は色々やった罪人なので逮捕、豊富な魔力が勿体ないので魔導具に繋いで一生監禁とか抜かしやがった。
流石にもう、いい加減にして!とアリスは思った。
堪忍袋の緒が切れたアリスの行動は速かった。
まず王太子とその女の身体を細切れにして、魂まで燃やし尽くした。魔力は無限の可能性。豊富な魔力を持つアリスはなんでもできる。勿論周りは黙ってない。アリスに対して罵詈雑言を投げかけるながら襲い掛かる。
面倒だったので城にいる人間を消滅させる程度の魔力を放出。もう誰も王城にはいない。というか王城も無い。余波で壊れた。テヘペロ!
なんか噂を鵜呑みにした国民も許せなくなってきたぁ!消滅の魔力を放出!アリスの祖国は滅んだ。もう故国、そんで亡国。
何故か人のいなくなった土地、黙って見てるわけにはいかない周辺国。
領土を広げるべく軍隊を派遣するも返り討ちに合う。どころか一月も経たない内に周辺国も亡国に。その頃には大陸全土にアリスの名は知れ渡っていた。
大国はアリスを非難、小国はアリスに媚びへつらう。面倒だな…とアリスは思った。大陸中心の上空から破滅の光を放った。アリスは自由を手に入れた。
はずだった。でもなんか不安だな、また面倒が起きたらやだなと思い、空を飛び海を渡り、他の大陸国家や島国まで滅ぼした。アリスのいる星に人間はもういない。
星と宇宙を知ったアリスは止まらない。無限に広がる宇宙から知性体を消滅させた。ていうか宇宙って膨らむ最中の風船みたいなものらしい。いつかは弾けて消えてしまうらしい。流石のアリスも宇宙が弾けたら面倒なのでこれ以上膨らまないよう固定した。これでこの世界は永遠だ。
これでひと安心!気兼ね無く余生を過ごせる。でもそれはアリスの勘違い。アリスは老いない、死なない。魔力は無限の可能性だし、アリスの魔力が無限だし。無意識に老いと死を消してしまっていた。
暇を持て余したアリスは子どもを産んでみた。名前はアダムとイブ。ちなみにアリスとアダムとイブに血の繋がりは無い。魔力で生み出したから。
最初は可愛かった。子育てってこんな感じだったのか、とか思いながら育てた。成長したら色々と教えてやった。狩りの仕方とか、料理とか。
でもだんだんと面倒くさくなってきた。アダムとイブの子ども、つまりアリスの孫が出来たのに、二人はアリスに甘えてくる。子ども出来たんなら独り立ちせえよ、と言っても聞かない。
仕方ないので人間を数百人生み出し、それらの管理をさせることにした。仕事を与えれば甘えん坊も治るだろうと思ったのだ。
それでも仕事の合間をぬって甘えに来る。ひ孫出来たのに来る。
そもそもアリスは人生に飽きてきていた。思えば婚約破棄のあの日から一睡もしていない。いい加減寝よかな、とアリスは思った。
いつの間にか出来ていた城の頂上、見晴らしの良い部屋に結界を張った。そこでしばらく眠ることにしたのだ。
窓から入る気持ちの良い日差しを浴びつつ、二度寝気分でスヤスヤ眠る。
これがアリスティア神聖国、建国秘話ってワケ。
〜FIN〜




