こぼれ話
(サリエル視点)
「サリー、私タルトの呪いにかかっているのかもしれません」
マユリカと婚約してから1年、天気もいいので王族のみが入れる庭園でお茶をしている時に、マユリカが悲壮な顔をして突然おかしな事を言い出した。
「ん?呪い?」
「はい、呪いです」
はて、タルトの呪いとは?と思っていたらこの1年侯爵家でタルトを切る練習をしていて、それでも飛んでいくので苦肉の策でナイフを使う事にしたらしい。
「見てもらった方が分かると思います。アンナ、ナイフを」
「はい、お嬢様」
そう言って自分の侍女にナイフを用意させ切り分けたブルーベリータルトにフォークを刺し、タルトにナイフを入れる。
ポーーーーーン どさり。
「・・・・・・」
「・・・( ´•ω•` )」
「えっ、えええっ!?タルトが飛んでった!しかもフォークで刺してるトコ以外が飛んだんだけど!?」
前にマユリカがタルトをフォークで切り分けようとした時はひと口分だけ飛んだけど、今回はフォークを刺している部分以外がものの見事に飛んでいった。
しかもテーブルを超えて。
「いやいやいや、あの大きさと重さであんなに勢い良く飛ぶものなの!?」
「・・・・・・これがタルトの呪いです」
フォークに刺さったひと口大のタルトを見て泣きそうになっているマユリカ。
「た・・・・・・たまたまじゃないかな?もう一度やってみようか」
「・・・・・・はい」
ポーーーーーン どさり。
「・・・・・・」
「(´:ω:`)」
「だから何であの大きさがあそこまで飛ぶのーーー!?」
えっ、えっ、今まで昼食や晩餐の時に出た肉や魚料理は普通に切ってたよね!?何でタルトだけそうなるの!?
「もっもしかしたら緊張して力が入っているのかも。私が手を添えるからもう一度やってみようか」
マユリカはタルトを切るのが苦手だから余計なトコに力が入ってるだけかもしれないとマユリカの後ろに回り、フォークとナイフを持っている手を上からそっと添えてタルトを切る。
ポーーーーーン どさり。
先ほどと同じくらい飛んでいったタルトを無言で見つめる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
手を添えていたけどフォークとナイフを持つ手には大して力が入っていなかった。それなのによくあんなに飛んでいくとは。本当にタルトの呪いなのか?
「・・・マリー、これからも私がタルトを食べさせてあげるから問題無いよ」
「・・・・・・はい、お世話になります」
申し訳なさそうに頷くけど大丈夫、上手く切れたとしても言いくるめて私が食べさせるから。
でもタルトが飛んでいくのは気になるから今度調べてみようかな。