婚約者候補とお茶会
サリエルはこの国の第二王子である。
王族特有の色合いを持ち5つ上の第一王子とは仲良し兄弟。王子教育もサボることなくこなし、成績も悪くないいたって普通の王子様だ。
「お茶会、ですか」
久しぶりに家族団欒で紅茶を飲みながら互いの近状報告をしている時に、父である国王がサリエルの婚約者候補とのお茶会を提案をしてきた。
「分かりました」
提案という名の決定事項にこくりと了承する。
「サリエルももうそんな時期かぁ」
「あなたに合う子を選びましょうね」
既に婚約者がいる兄王子と母である王妃は小さかったサリエルがね~と感慨深げだ。
実は先だってサリエルの2歳前後までの高位貴族の令息令嬢を招待しお茶会を開いたところ、あまりにもギラギラした王子妃狙いの令嬢に囲まれ埋もれてしまい「王子として残りたくない!」とゴネ、それならば婿入りの方向でいこうと言う事でになった。
本来ならばスペアとして王族に残らなくてはいけないのだが、サリエルは第一王子と5歳離れており成人する頃には第一王子に子供が生まれているだろうという算段があって臣籍降婿が許された経緯がある。
この時点で王子妃狙いの令嬢は国一番の優良物件を手にする資格が無くなってしまい、後の婚約発表を聞いて崩れ落ちた当主と令嬢がたくさんいたとかいないとか。
臣籍降婿するにあたって高位貴族、伯爵家以上で令嬢だけの爵家はあまり多くない。その中で派閥・領地経営・内情・令嬢の出来の良さ全てをクリアした家は三家。侯爵家1、伯爵家2でもしサリエルが伯爵家の令嬢を選んだ場合、侯爵家に上爵する事が議会で決まった。
お茶会は個別に数度行われた。
同い年のアダントン伯爵令嬢とのお茶会では令嬢の過剰な香水で気分が悪くなり途中退場し、2度目はさすがに香水は付けて来なかったが自分の事ばかり話しサリエルは頷くだけで終わってしまった。
もう1人の伯爵令嬢は1つ下で庇護欲をそそる見た目をしていて容姿も悪くない。今回は大丈夫だろうと思っていたらウサギを型どったケーキを見て目を潤ませ「ウサギさんがかわいそうで食べられない」と言い出し、庭園を案内すると「チョウチョさんだぁうふふ~♡」と言いながら植えてある花を踏み散らかしながら蝶と戯れていた。
サリエルが初めて遭遇したお花畑令嬢である。
え、令嬢ってこんなやべぇのばかりなの?と不信に陥りそうになった時に出会ったのが最後の婚約者候補のマユリカだった。
さすが侯爵家の令嬢というべきか。挨拶のカーテシーやお茶会のマナーも抜きん出て出来ている。少しつり目で勝ち気そうに見えるが、纏う雰囲気がのんびりしていた。
ただ違和感はあるが会話のキャッチボールが出来、庭園を案内しても一緒に楽しめるのにサリエルは安堵した。それが普通なのだが。
しかしマユリカも普通の令嬢ではなかったが、インパクトが強すぎる令嬢に連続で当たっていた為サリエルの印象は良く、まだ選定の段階でだがマユリカを最有力の婚約者候補として扱う事が決定した事に、サリエルだけではなくお茶会を見守っていた全員がホッとしたという。
番外編は不定期です。