王太子と王太子妃2
ひと通りナガエツルノゲイトウの話をし終わった2人は同時に冷めてしまった紅茶で喉を潤す。そしてあれ?何でナガエツルノゲイトウの話をしてたんだっけ?とぼーっとする思考で首を傾げていると、「ティリエル様~」という無邪気な声で意識が現実に戻される。
「サクラン・・・・・・」
どんよりとした空気の原因であるサクランが許可無く王族専用の庭園へ来た事にミレーヌは無表情になり、ティリエルはやべ、厄災が来た!という気持ちを押し込めアルカイックスマイルを浮かべる。
「ティリエル様会いたかったですぅ」
にこにことティリエルとミレーヌがいるバーゴラにかけ寄るサクランは、花の妖精をイメージしたオーガンジー生地を幾重にも重ねたふんわりとしたピンクのドレスを纏っている。髪はドレスと同じ色のレースのリボンでツインテール。可愛らしい彼女にはとても似合っている。
「あ、お姉様もいらしたのですねっ」
サクランeyeは視界が狭い為、間近に来てやっとミレーヌを目の端に捉えたらしい。
「あなたここは王族に許可無くして入れる場所ではないのよ」
ミレーヌが嗜めるもどこ吹く風。さっとティリエルの隣に座り腕を絡めている。
傍には青い顔をした公爵家の侍女と護衛がオロオロとしているのを見て、公爵令嬢という身分と王太子妃の妹だからという肩書きを盾に強行突破してきたのだろうとミレーヌはため息をつく。
「今日は何しに来たのかな?」
どうせろくな事ではないのだろうが聞かないと帰ってくれないだろうとティリエルは挨拶も無しにサクランに問う。心の中では帰れコールの嵐だが顔には出さない。
「はいっ!お姉様がご懐妊したと聞いたので。これで私を側妃に迎え入れられますね♪」
「は?」
「え?」
何言ってんだコイツという顔をその場にいた全員がサクランに向ける。お伴できた侍女など倒れそうになり護衛に支えられている。
「ほらお姉様王太子妃のお仕事があるじゃありませんか。2人目を産んだらお姉様はお仕事に集中して私が側妃になって閨を頑張ってティリエル様のお子をバンバン産みます!」
「いや、バンバン産まれても困るんだけど」
「そうですわね。王族が増え過ぎると王族費が国費を圧迫しますし、後継者争いが起こりますわ。というかサクラン、あなたまだ8歳でしょ。バンバンポコポコや閨とか言ってはいけません!誰ですの8歳の子に閨を教えた者は!」
「10歳以上離れた義妹に手を出すとか無理!」
うわぁぁと頭を抱えるティリエルと公爵家の侍女と護衛に問いただすミレーヌ。侍女と護衛は青白い顔をブンブンと横に振っている。
お分かりいただいただろうか。
サクラン公爵令嬢御歳8歳。ミレーヌとは14歳離れた血の繋がった妹である。
外見はとても可愛らしくその見た目と年齢、立場ゆえに「側妃」発言やティリエルの執務室や王族専用の庭園に突撃しても周りは強く止められなかったのだ。
そのサクランが閨とかポコポコ言うものだからさすがに聞き流す事が出来ない。8歳で閨の内容は知らずとも閨事を口にするのは幼くても淑女としてははしたない。
しかも「姉は仕事、私は産む係」発言は裏を読めば「ティリエルとバンバンヤッちゃうぜ!」という寝取り宣言。お前の中身は何歳だ?を聞きたくなるだろう。
どうやら脳内の花畑がダメな花を咲かせているらしい。
そもそも正妃が3年子を身籠らなく側妃を迎え入れなければいけなくても、同じ家からは娶る事はない。ミレーヌは既に王子を産み第二子を妊娠中。なのでどうやってもサクランは側妃にはなれないのだが、花畑令嬢には常識を理解するという機能は付いていない。
「はあ~成人が楽しみですぅ♡」
成人8年後だぞサクラン。




