決意するサリエル
サリエルの婚約者候補との交流も一通り終了し、マユリカが婚約者に決まった。
婚約者候補と交流に関わった人々からは安堵され、国王や王妃は家の内情や令嬢の出来の良さしか見ていなかった事をサリエルに詫びた。
当初は国王夫妻も令嬢の人となりがまさか自分語りしかしない令嬢と、お花畑満載の令嬢だとは思いもよらなかった。初めて年の近い令嬢を集め開いたお茶会ではグイグイ寄って来なかった為、大丈夫だと思ったのだ。
ただ婚約者候補としてお茶会を行った報告を聞いて「そう言えば3人共婿入り希望だったから必要以上にサリエルに近づかなかっただけなのか」と思い至り、候補者選びの失敗を悟った。
しかし、候補者3人のうちまともな令嬢が1人しかいなかったのは残念だったが、サリエルも気に入っているようなので胸を撫で下ろしていた。
そんな国王夫妻のやきもきを知るすべもなくサリエルは正式に婚約者となったマユリカの世話をせっせとしていた。
マユリカは時たま小声でぶつぶつ言っているが、それ以外は至って普通の令嬢・・・・・・とまではいかない。
よく階段を踏み外すし何も無い所でコケる。たまに紙で手を切ったり本を足に落としたりしている。他にも色々あるが所作やマナーなどは優雅でたおやかだ。
あまりに危なっかしいので歩く時は必ずエスコートをし、極力本は侍従や侍女に持たせている。
勉強も午前は王子教育を受け午後から一緒に領地経営などの授業を受けるが、マユリカは優秀だった。特に数字に強い。
マユリカが登城しないある日、散歩で庭園を歩いていると丁度兄の王太子とその婚約者がパーゴラでお茶をしているのに出会す。
誘いに乗って席につくと何やら2人に疲労が見えた。
去年から学園に通いながら王太子教育や王太子妃教育を卒なくこなし、疲れを見せた事が無い2人には珍しい。
「兄上お疲れのようですね」
「・・・・・・まあな」
今日は学園も休みなのに疲れを引きずるほどの事があるのかと首を傾げるサリエルに、王太子のティリエルは紅茶をひと口飲み苦笑いをする。
「サリエルも知っていた方がいい。学園は巣窟だ」
「そうくつ?」
思いもしない言葉にサリエルはキョトンとする。
「そうだ巣窟だ。花畑満載の巣窟だ」
「花畑・・・・・・」
「ティリエル様、花畑や巣窟だけ言われても分かりませんわ」
「む・・・・・・確かに」
さらに花畑と言われ訳がわからないという顔をしていたのかティリエルの婚約者のミレーヌが窘める。
一つ咳払いをし、ティリエルが言うには学園に入学したと同時に王太子妃の座を狙ったり、ティリエルの寵を貰おうとする令嬢が群がるようになったらしい。
いくら婚約者がいて婚約者を愛しているから無理だと話しても「私の方が可愛い」「私なら貴方様の心を癒せます!」「わたくし勉強には自信がありますのよ」など婚約者より自分が優れていると自信満々に言ってくるらしい。
「お前らは一体何を見てるんだ!学年トップで王太子妃教育も卒なくこなしさらに美しく気品があり所作も完璧!どこを取って愛しのミレーヌより優れていると思ってるのだ!お前らの頭の中の花畑はショクダイオオコンニャクの花でも咲き乱れてるのか!?」
「何か臭そうですわね」
「愛しのミレーヌ」発言よりそこが気になるミレーヌは匂いを想像したのか顔を顰めている。
「その場で怒鳴りたいのだが王族としての品位にも関わるので後に各家に忠告の手紙を送り、それでも改善されない令嬢は修道院預かりにしたのだが・・・・・・特大の花畑を持った令嬢が今年入学してきてしまったのだ」
「あれは酷いですわね」
「ああ、ハンカチを目の前でわざと落として拾わせようとしたり「話しかけたそうにわたくしを見てましたわよね?」とか「本当はわたくしと婚約したいのでしょう?」とか「わたくし分かってますのよ」って何故私が好きな前提で話をするんだ!家に忠告の手紙を送っても「本人は照れて本当の事を言えないだけだと言ってますが?」と返事が来るし、何度拒否してもしまいには「ミレーヌに言わされているのですね」って!思い込みが過ぎる!」
「あれは同じ人間ですの?」
「しまいにはミレーヌの虚偽の噂を流すしお前の花畑はナガエツルノゲイトウかよ!」
「繁殖力最悪ですわね」
「色々証拠を集めてやっと昨日S級花畑令嬢として修道院送致が決まったんだよ」
「少しは静かに生活できますわね」
「サリエルお前他人事のように聞いているが、第二王子として学園に入学したら大なり小なり花畑令嬢が周りをうろつくからな」
「えっ」
「お前が婿入りする事を知っている高位貴族はそんな事は無いだろうが、下位貴族にはあまり知られてないからな。『王子妃』狙いの令嬢が絶対出てくるぞ」
「えぇ・・・・・・」
入学前に対策を教えるというティリエルに頷く。そんな迷惑極まりない令嬢がいてはマユリカと楽しい学園生活を送れないし、物理的に令嬢の荒波に揉まれたらのんびりしているマユリカは、簡単にペッとはじき飛ばされてしまうに違いない(確信)とサリエルは入学前に花畑令嬢を潰そうと決意する。




