お約束の悪役令嬢転生ですわね
侯爵令嬢であるマユリカには前世の記憶がある。
高熱を出したとか池ポチャしたとか頭を打ったとかベタな展開ではなく、幼少期に気づいたらあったという感じ。
あっ、前世の記憶あるじゃん!と気づいてからは気をつけているが、それまではこの世界にない言動を多々していた為、不思議ちゃん扱いをされていた。そりゃそうだ、スマホ、車、テレビなど聞いている方は訳が分からなかっただろう。
前世の記憶があるのを認識したと同時に、この世界が乙女ゲームの世界っぽいと気づく。なんせ銀髪に少しつり目のアイスブルーの瞳の美少女で侯爵令嬢。しかも第二王子の婚約者。自分の名前と王子の名前にも聞き覚えがあった。
あれ、私悪役令嬢じゃね?
男爵令嬢のヒロインが第二王子ルートや逆ハーレムルートに入った時の悪役令嬢がマユリカなのだ。
ヒロインのノートや制服を破ったり(器物破損)噴水に落としたり(暴行)階段から落としたり(殺人未遂)をするのだが、王子と婚約者になったばかりのマユリカには、婚約者を奪われないような行動をしようとするほどの思い入れは今のところはないし、そんな面倒な事などせず元(男爵家)をしれっと潰す。侯爵家にとって男爵家なんか簡単に潰せるし。とマユリカが思うほど貴族の仕組みを理解していた。
そもそも婿養子に来る第二王子に浮気されて婚約破棄されても、婿養子希望の子息が多いので痛くも痒くもないのである。
「婚約破棄されてもどうにかなるよね~」
しかしのんきで楽観的な性格のマユリカはなんとかなるさ精神で過ごした事により王子から「勉強はできるのに大雑把でどこか抜けている」「見た目淑女なのに何かが足りてない。どこか知らんけど」という認識をされてしまう。
そしてこの子には私がいないとダメなんだという責任感から王子は過保護&おかんジョブをゲット。
フォローされる度に少し頬を染め恥ずかしがったり、「たまたまだからねっ」と一生懸命言い訳けをする姿に毎度撃ち抜かれ、乙女ゲームが始まる学園の2年生になった時には婚約者にべったりな王子が出来上がったとさ。
その時になってようやくマユリカは気づく。
「あの乙女ゲーム、王子が世にも珍しいおかん属性だった」
と。
何もない所でコケたヒロインを助けたのをきっかけにドジをする度にフォロー、助ける責任感→私がそばで守ってやると助けられる度に王子の好感度が上がっていく仕様。
マユリカは私生活だけ適当だと思っているが、実際はそうではない為、王子がおかん属性になるのは必然だったとしか言いようがない。何故そうなった?と思っているのはマユリカだけである。