愛されてる店主(マスター)
ここは新宿のとある繁華街にある一軒のバー。
30年続くその店は長年お客さんに愛されていた。
店主の人の良さもそうだが、彼の作る酒も絶品だった。
「店主、グラスホッパーをくれ!」
「はい、少々お待ちください!」
店主の男はシェイカーにミントリキュール・カカオリキュール・生クリームを一回ずつ投入して氷を入れて蓋をしてシェイクした。
それは一つのカクテル「グラスホッパー」として客の前に出された。
「うんめえ!やっぱ店主の作る酒は絶品だ田!」
「俺なんて開店当時から店主と付き合っているからな!もうマブよ!」
「店主もあん時はまだ30代・・・若かったよな!今じゃもう60過ぎた初老・・・」
「本当に、時が経つのは早いですね・・・」
男に妻子は居なかったが、常連客との他愛もないこの会話をしながら自分の提供するお酒を飲んでくれるのが何より幸せの瞬間だった。
だが、そんな彼の幸せな時間は突然終わりを迎えた・・・。
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ーー別の日。
男はいつものようにお客さんに自分の作ったカクテルを提供して他愛もない話をしていたその時だった。
「う!?」
「店主?」
男は突然倒れた。
原因は心臓発作だった。
不審に思った客は救急車を呼び男は病院に運ばれた。
「おい!店主、死ぬんじゃねえぞ!」
「俺はまだあんたの作る酒を飲みてえんだよ!」
親友とも呼べる客達の声もむなしく、届くことなく・・・。
彼は息を引き取った・・・。