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「何度も申し上げましたが王女様、その様に頬杖をついて体重を片側に偏らせるのはおやめください。王族としても振る舞いとしてだけではなく、お顔やお身体の歪みにつながります。」

「・・・ハイ。わかりました。」

「いいえ、いいえ!わかっていらっしゃらないです。逆側に体重を乗せればいいという問題ではなく、そもそも根本から・・!」

「わかってるって、人目につく時にはきっちりするよ。」

マダム・リーリエが「そうゆうことではなく、」とまた言葉を続ける。

わかってるんだけどさ、朝起きてベッドから剥がし起こされて数分の私に対して、誰もピンと伸びた姿勢の良さや礼儀正しさなんて求めてないと思うんだよねー。

まあ、こんなこといった日には「また王女様はそんなこと言って!」のコースが確定してるから、口には出さないんだけどね。

「本日の御予定は、王国史と国政についての先生が9時にはいらっしゃる予定です。午後からは作法の指導ですので、早急に身支度やお食事を済ませていただき、9時までの間は近隣国と行っている貿易の現状把握と、物価の変動が起こっているものについて確認をお願いします。」

マダム・リーリエの寝起き相手に容赦のないあまりにスピーディーすぎる予定確認を耳に入れる。

数秒かけて反対側から全言葉が通り抜けていってるんだけどね。

「はい。」

「王女様、御髪を失礼します。」

右、後ろ、左と三方向に構えた侍女たちがそれぞれ私の髪にブラシを通す。

目の前のドレッサーの鏡にうつるのは、寝ぼけ眼と、三方向に伸びた金色の髪、それから侍女たち。

「ハーブティーをご用意しました。どうぞ。」

「ありがとう、マダム・リーリエ。」

鏡の中の私は、広がる髪の毛の異常さにも目もくれず、優雅にカップに口をつけた。



「ルアンナ、受けてくれるな?」


侍女たちの準備の甲斐あって整えられた私は、朝食を取るために食堂へと向かうと父である国王陛下からとんでもないことを言いつけられた。

「お父様、よく聞こえなかったのですが・・・隣国であるメルトス王国の第二王子、グランヴィル様が我が国の情勢を学ぶために訪問される予定がありその案内役を私に受けてくれ、と。そう私に、おっしゃるのですか?」

「ルアンナ、聞こえているなら聞き返すでない。」

「聞き返したくもなる内容だからです、お父様。そんなぁ。」

さっき飲み込んだばかりの、大好きな卵入りのスープが途端に味を感じなくなってきた。

隣国の、王族の、案内役!

そんなの荷が重いことこの上ない。

相手は王族。(自分もそうだけど)礼儀正しい言葉遣いとマナーの連続攻撃は待ったなしだし、私がミスすることなんて許されない状況下で自国を案内する、つまり私が相手をリードするべき立場にあってちょっとでもミスがあろうものなら外交問題にだって発展しかねないこの状況を私一人で背負いきれと言うのですか!?

「元気を出してルアンナ。あなたならできるわ。」

「元気が微塵も出ませんお母様。」

隣の席に座るお母様は私を覗き込んでくるけれど、私はそれどころでは無い。

なぜこんなヘビーすぎる内容を軽いはずの朝食でドカンと放出してくるのだろうか私の両親は。

いやいや、朝食じゃなくたってこの話はいつ聞かされても嫌なものだけど。だけれども!

「そんなのあんまりです・・・ストレスと緊張で私が病に臥せってしまったらどうするんですか、私の命なんてどうでもいいんですかお父様。」

「落ち着きなさい。情勢を学ぶ、と言っても何も専門的な説明を一から百まで教えるようなものではないんだ。他の王国を見てみたいというのが本人の希望らしいが、王族がお忍びで見学するにも護衛をつけると大所帯になってしまうしな、そこでだ。」

「中止・・・でしょうか。」

「年齢の近い我が国の一緒に回ってくれる案内役がいたら回りやすいだろうし、それが国の王女ともなれば護衛もつけられ国民たちの同意も得やすいだろう?」

「う」

お父様は乗り気だ。これはもう駄目だ。お母様に助けて、と目線を送る。

(ニコニコ)

こっちも駄目だ・・・!


「とゆうことで、受けてくれるな?ルアンナ。」


本日二度目のその言葉を受け、私はなんとも言えない圧力に眩暈を感じた。


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