第5話 books & cafe
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駅に着くと、丁度、家の方面へ向かうバスが来ていた。駅の階段を駆け下り、美夜が走ってバスに乗り込むと、すぐにドアが閉まる。
軽く息が上がり、運動不足であることを、しみじみ感じながらも、空いている席に座った。美月ほどとは行かずとも、少し運動をしなくては、と思いつつ腕時計を見る。四時四十分を過ぎたところだった。車窓から見える空を眺め、少し考える。よし、と心の中で呟き、一つ手前で降りて歩いて帰ることにした。道順は比較的分かりやすいし、恐らく迷うことはないだろう、と若干の自分の方向音痴さに不安を覚えつつ決意する。
早速、一つ手前のバス停で降りることにした。
バス停を降りると、向かいの通りに商店街のアーケードが目に入り、美夜はアパートの管理人が言っていた商店街の話しを思い出した。
引っ越してきたばかりの日、近くで買い物が出来る場所を訊いたときに、話に出てきた場所だ。
「近所にスーパーとコンビニがあるけど、ちょっと足を伸ばせば、商店街があるから。そっちの方が野菜も総菜も安いし、美味しいわよ」
管理人は恰幅のよい、五十過ぎの女性だ。明るく、人の良さそうな丸い顔をした彼女は、喋ることが好きなようで、話し出すと止まらなかった。
美夜と美月は、管理人に話しかけるときは、時間のあるときだけにしようと、初日から肝に銘じた程だ。
美夜は道路を渡って商店街へ向かった。夕方であることもあり、人が多く、活気がある。
そこら中から美味しそうな総菜の香りがする。色んな惣菜に惹かれつつ、とりあえず端から端まで、どんな店があるのか見て歩くことにした。
端まで歩ききると、ふと、アーケードの先にある一風変わった建物が目に入った。
街灯が、そこだけを照らし出すように、建物を浮かび上がらせている。
美夜はアーケードを抜け、その建物に吸い寄せられるように近づいた。
その建物は、まるでそこだけ別空間の様に、ひっそりと佇み、時間が止まっている様に感じる不思議さがある。
二階建ての建物に近づくと、小さく『books & cafe』という文字が、白壁に刻まれている。
一階は、本屋のようだ。
白壁に青いドアと、青い窓枠。
地中海の建物を連想させる二階建ての建物に、美夜は足を踏み入れた。
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