第4話 ケーキ屋巡り
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目的のケーキ屋に着くと、美夜は早速、店内に入った。店内に入った途端、店の空気が田舎とは違うな、と、しみじみ感じた。
田舎で、どんなにお洒落にして、格好付けたお店でも、どこか垢抜けないところがあった。
しかし、都会の店は入った途端、違う物を感じる。何が違うのか具体的に言葉で表せない何かも含めて「違う」のだ。
美夜は、田舎で大手の製菓会社に就職をし、ケーキを作っていた。しかし、自分が作りたいケーキとはほど遠い、大量生産。どれを食べても同じような味、大きな機械を使い材料を混ぜ合わせる。人までもがまるで機械の様に動く。そんな、機械的な流れ作業に、嫌気がさしていた。働けば働くほど、本当に美味しいケーキを作りたい、学びたい、という気持ちが次第に大きくなっていった。
そんな、ある日。働き始めて三年目になろうとしたときだった。焼き菓子の製造年月日の不正を行っていたことを知り、美夜は会社を辞めた。
会社が大きくなればなるほど、商品を必要以上に大量生産し、賞味期限が切れればシールを貼り替える。それが当たり前、と考えている上司。利益が出れば、それで良いという社長。プライドも何もない、そんな事実に辟易したのだ。
それから美夜は小さな店で、プライドを持って仕事をしている、そんな店で働きたいと思うようになった。地元で何件かケーキ屋を歩いたが、自分が求める様なケーキ屋が見つからなからず、意を決して、上京することにした。
自分が納得できる、ここで働きたいと思える店を探がすことにしたのだ。
美夜は店員に案内された席に着くと、メニューを開く。
値段も田舎とは違う、そんなことを心の中で呟き、困った様に小さく微笑む。
水を運んできた男性店員に、どのケーキがお勧めかを訊ねると、店員は愛想良く「やはり、当店はチョコレート専門店ですので、チョコレートケーキがお勧めです」とスマートに応えるが、その笑みに感情が無いように感じた。
美夜は若干の戸惑いを感じながらも、店員の勧めたケーキを注文し、食べ終えると、すぐに店を出た。
店を出ると手帳を出し、三角マークを描いた。
『店の雰囲気や店員の応対も良かったが、肝心のケーキが甘すぎて、途中で飽きる。』
ケーキ一つで決めつけることは出来ないが、店自慢の商品の味が濃ければ、その他のケーキがどんなものか、ある程度、想像が出来るのではないかと、美夜は思っているのだ。
そんな調子で、その後二件回ったが、納得のいく味には出会えなかった。
腕時計を見ると、いつの間にか四時になろうとしていた。今日はもう帰ろうと、駅に向かって歩き出す。
駅に着くと、昼間よりも多くの人がホームに立っており、一瞬尻込みをするが、それでも他の客同様に、整列をして電車を待った。電車が来ると、人に押されて流される様に車内へ入り、行き同様、車内の中程に立つ。
少し疲れた顔で、ビルの隙間から見える暮れてゆく空を、ぼんやりと眺めた。
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