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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
1 はじまり

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22/201

第21話 うわの空

いつも読んで頂き、ありがとうございます。



 美夜がCafe・Lis(リズ)に行ってから、一週間が経っていた。

 あれからも、色々歩いては見たが、Lisに勝る感動の味には出会えていない。

 Lisで働きたいとは思ったが、店員募集の張り紙もなかったし、インターネットでもLisのサイトは無かった。直接行って、訊いてみようかとも思ったが、募集していないのに訊いても、同じ結果なのは確実だ。

 美夜はベランダに出て、ぼんやりと空を眺めた。動いているのかいないのか分からない雲をじっと見ていると、美月が声が聞こえ、振り向く。


「美夜、今日の夕飯何が良い?今日は私が作る。リクエストあれば作るよ」


「え、いいよ、私が作る」


 美夜が、ぼんやりした声で言うと、美月は腰に手を当て、短く息を吐き出した。


「ここ数日、ずっとその調子じゃん。東京出て来たものの、良い店が見つからなくて落ち込んでてさあ。いいよ?別に、いつまでも落ち込んでてもさあ。でも、やっぱ、流石の私でも、黒焦げの魚とか、黒焦げの煮物とか、黒焦げのホットケーキとか。いい加減、胃袋限界かなって思うんだよね」


「ごめん……」


 美夜は本当に済まなそうに言った。美月は困ったように微笑むと、「いいけど」と言い、美夜の腕をとり、部屋の中に引っ張る。


「今日、私バイト休みなんだ。この前、美夜が買ってきてくれたケーキのお店、連れてってよ。そこのケーキ食べてさ、元気だしなよ。ね?ついでに、商店街で夕飯の買い物してさ。どう?」


 美夜は美月の提案に、小さく頷いた。それを見た美月は「じゃあ、早速出かける準備!」と言い、部屋着のままの美夜に着替えを手渡した。



 外は天気が良く、まだ遅咲きの桜が綺麗に咲いていたので、商店街まで歩くことにした。

 気持ちの良い柔らかい日差しが、昼寝を誘うようだ。ベランダに立っていたときから、少しうとうとしていたが、こうして日差しの中を歩くと、益々、眠たくなる気がした。

 桜並木がある通りに来ると、美夜の目には何もかもが薄ピンク色に見えた気がした。

 散った花びらが通りをピンク色に染め、上を見上げると、まだ咲いている桜の花が、風に揺れている。

 このまま、不思議の国へ行けそうな気がした。ぼんやりとした眠い頭、綺麗な輝かしいピンク色の世界。今から行く先に、幸運が待っている、そんな気にすらなった。

 商店街に着くと、美月は帰りに何を買うかチェックしながら歩いた。焼鳥屋の前を通ると、美月が「今晩、これでもいい?」と、涎を垂らさんばかりの表情で言うので、美夜は笑いながら頷いた。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 世界が華やいでみえるほどカフェリズを気に入ってしまったのがとてもよくわかります。あのカフェは僕も一度行ったら忘れられないんだろうな…。きっと美夜にとっては衝撃的で感動的な出会いだったんだなぁ…
2022/09/26 00:45 退会済み
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