焼肉のタレはチート。だって誰でも美味しく炒め物が作れるから。
【あらすじ】にも書きましたが、カニバリズム含めた残酷な描写があります。
苦手な方は閲覧注意でおねがいします。
昔から、凶悪事件というものに興味があった。
正確には、その犯人にだけれど。
興味を持つきっかけがなんであったのか。
そんなこと覚えちゃいない。
もしかしたら、そういった事件を扱ったテレビだったのかもしれない。
ニュースを載せた新聞紙だったのかもしれない。
ドラマだったかもしれないし、漫画だっかもしれない。
ひとつ、言えるのは。
物心着いた頃には、すでにそういったことに興味を持っていたということだ。
そして、それらを取り扱っていたテレビを見て言い表せない興奮を覚えたのも事実だ。
いずれの事件の犯人たちは、数人から数十人という単位で人を殺していた。
殺す理由は様々で、本当に興味をそそられた。
とくに、興奮したのは殺した人を、殺す前後に性的に愛したという事実。
殺す前か、後かという違いこそあれ、犯人はその行為の後に、愛した相手を食べてしまったという話だ。
どうしてそんなことをしたのか?
何故、食べようと思ったのか?
果たして美味しかったんだろうか?
そんな疑問が尽きなかった。
もちろん、世界には色んな凶悪事件がある。
食べるために、ではなく、結果的に殺してしまったという凶悪事件も少なくないらしい。
猫がネズミや虫をじゃれ殺すように。
被害者を痛めつけること、その行為が好きすぎて殺してしまった、なんて話もある。
「だからね、知りたかったんだ」
僕は彼女にそう伝える。
怯えた子うさぎ。
そんな瞳が僕を見てくる。
練習はした。
それこそ、猫で、犬で、鼠で、鳥で。
でも、実際に人を捌くのはこれが初めてだ。
「僕は彼らと同じなのか、知りたかった」
別に幼少期の頃に、両親に厳しくされたことなんてなかった。
殴られたり、性的な虐待にあったこともない。
それでも、凶悪事件が好きだった。
それを起こした犯人の心が知りたかった。
ならば、これはもう同じように人をいたぶって殺して、食べてみるしかないと思ったのだ。
「あぁ、大丈夫だよ。
ちょっと寒くなって、でもすぐに眠くなるはずだからね」
僕は不安を和らげるように、つとめて優しくそう声をかけた。
彼女の喉は真っ先に潰してあるから、声なんて出ない。
でも、念の為にタオルをかませておいて正解だった。
僕は、彼女の首を包丁で一突きして締めると同時に、血抜きをする。
かひゅっと、いう空気というか音が彼女の口から漏れた。
暴れることなく、彼女は比較的静かに息を引き取った。
さすがに生きたままの状態で、彼女のことを愛するのは無理があるかなと思った。
だから、彼女が息を引き取ったのを確認してから、性的に愛してみた。
他人を性的に、いや、もっとあけすけに言ってしまえば抱いたのはこれが初めてだった。
終わってみて思ったのは、
「なんだ、こんなもんか」
だった。
思ったことが、そのまま口に出てしまった。
でも、別に聞かれる心配はない。
僕は一人暮らしだからだ。
さて、僕はさらに作業を進めた。
予習として、凶悪事件を取り扱った本を何冊か読んだ。
とある事件についての記述だった。
そこには、こんなことが書かれていた。
犯人、あるいは犯人たちは、死体を片付けやすくするためにバラバラにしたのだ、と。
かえって、バラバラにする手間が増えるだけじゃないのか?
そう疑問に思ったのはいい思い出だ。
次には、とてもわかりやすい説明がついていた。
例えば、物にもよるけど本棚等をゴミに出す場合は、そのままだと粗大ゴミ扱いでお金が別途かかってしまう。
けれど、解体できるなら解体して、小さいパーツに分けてゴミ袋に入れてしまえば、それで終わりなのだ。と。
なるほど、棚の片付けとして説明されると、とてもしっくりした。
そして、今、それを実感している。
両手両足、頭部、胴体と分けてみた。
とても手間だ。
なんなら汗だくになってしまった。
しかし、なるほど。
人一人を持ち上げたりするより、全然簡単だ。
重いのはかわりないけれど。
頭ってそれなりに重いとは聞いてたけど、本当に重いんだな。
そんな妙な感動まで、抱いてしまった。
けれど、捨てるとなるとまだ問題があった。
昔はゴミ袋は、黒くて中身が分からないようになってたらしい。
でも、今は、そうやって死体を捨てる人間がいたらしく中身がわかる半透明の袋になったと、これも調べて知った。
「ふむ。困った」
もちろん、全部を全部捨てるわけじゃない。
なぜなら、食べないといけないからだ。
普通の食材だって、下処理をして可食部を調理するものだ。
「生ゴミに関しては、あとで考えよう」
とはいえ、腐って異臭がする前までになんとかしたい。
とりあえず、生ゴミ用のゴミ袋に食べない部分は入れておこう。
入るかな?
もう少し小さくしないと難しいかな。
そんなこんなで解体を終えてみて気づいた。
「んー、思ったより血で汚れちゃったなぁ」
まぁ、いっか。
あとで掃除しよう。
というか、風呂場でやって正解だなぁ。
うん、蓄えておくものは知識だ。
「ご飯は炊けてるし、まずは焼肉丼にしてみよ」
さっそく食材を台所に持って行って調理を開始した。
玉ねぎも、セールをやってたのを買ってきた。
そんな薄切りにした肉とスライスした玉ねぎをフライパンに投げ込んで、焼肉のタレで焼いてみた。
ふつうに美味しそうな焼肉丼が出来上がった。
新鮮な肉は硬いから、熟成させなきゃかなと考えていたけれど、普通に食べられた。
うん、美味しい。
しかし、結局大事なことはよく分からなかった。
僕は凶悪事件の犯人達と同じなのか?
それはわからなかった。
別に殺しは楽しくなかった。
死後だけど、性的にいたぶるのも、全然楽しくなかった。
解体だって、汗だくになるだけで、大変そのものだった。
これなら、スーパーに行って特売の安い肉を買ってきた方が、簡単だ。
結論。よくわからない。もしくは、僕は彼らと違うのだ。
ひとつ、わかったのは焼肉のタレはチートで、どんなものでも美味しく調理できてしまう、万能の調味料であるということくらいだ。
「食べたら、生ゴミの処理について考えないとなぁ。
あ、ネットで調べれば出てくるかな?」
僕は、焼肉丼に舌鼓を打ちつつ携帯端末を取り出した。
電子の情報の海には、なんだってある。
それを僕は知っていた。
そうだ、忘れないうちに残りの焼肉はタッパに詰めて、と。
ヨシヨシ、見てくれは悪いけど、どうせ自分しか食べないし。
残りは明日の昼にでも食べよう。