表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

お茶会と言う名の苦行の始まり。

漢字の割合をいつも悩んでます。

「おとうさまとおかあさまは?」


「はい、旦那様は王城へ、奥様は居間でお過ごしです」


 荷物はイコスに部屋へ運ぶように指示しておいて、私は母がいる居間へと向かう。


「おかあさまは、居間で何を?」


「お嬢様のドレスを選んでおいでです」


 セバスチャンの言葉を聞いて私はげんなりする。

 我が家は男爵家と貴族としての家格は低いが、ゲーム補正と言うべきなのか。いち男爵家とは有り得ないほどに潤っている。

 それなりの話はあるのだろうけど、今はその理由を探っている場合ではない。


「おかあさまっ!!」


 貴族の子女にあるまじき扉の開け方ではあったが、目の前に広がる光景にそんなことはどうでもよくなった。


「あら、フィーリアちゃん。そんなに慌ててどうしたのかしら?」


 おっとり尋ねるおかあさまに、私は頭が痛くなる。


「どうもこうもないですわ!わたくし、言いましたわよね!」


 有り余る財力をいい事に、おかあさまは色々と衝動買いをする。

 自分のドレスは勿論、宝飾品アクセサリー、化粧品、バッグ類の小物、靴、日々の雑貨、おとうさまの正装、おとうさまの盛装、おとうさまの靴、おとうさまの小物、おとうさまの好きなもの、私のドレス、靴、小物、化粧品、宝飾品アクセサリー、御菓子類等々。

 商人達からすると良いカモくらいに思われそうな買い物の仕方でも、物凄く目利きなおかあさまは、一度たりともハズレを引いたことはない。

 何も考えてなさそうな買い方をしていて、その実流行の最先端を突っ走ることの出来る、希有ともよく分からないとも言える能力の持ち主。

 だが、それはそれ。

 前世むかしの貧乏性が祟って、私はおかあさまの浪費が許せないのだ。

 おかあさまが商人達を呼ぶ度に、私は居間に突撃する。

 因みに商人達を撃退出来る率は10回に1回という戦績。

 ………しょーがないでしょ、私、子供だもん。

 そして今回も商人達を撃退することは出来ず、おかあさまはほくほく顔で大量の戦利品をメイドさん達に片付けておくように手配する。


「さ、フィーリアちゃん。これで今度のお茶会はバッチリよ!」


 おかあさま、私は参加したくありません。

 そもそも、お茶会なんていつセッティングしたんですか。



 ※


 そしてお茶会当日。

 社交界デビューも何もない年齢なので、どうということはないはずと高を括っていたら、連れられて馬車から降りた瞬間に目に入った建物に私の目は点になった。


「あら、どうしたのかしら?フィーリアちゃん」


「おかあさま、わたくしの目がおかしくなってなければ、ここはお城にみえるのですけれど??」


 そう。私の目に映るのは銀色幻影群晶シルバーファントムクラスターに覆われ霞む城、人呼んで銀霞城ぎんかじょう。我が国の王族が住む、つまり攻略対象である第三王子(ヴァシーロ)の自宅。

 今すぐ回れ右して帰りたいのに、おかあさまはにこにこして今日のお茶会の予定を話してくれる。


「フィーリアちゃん、今日のお茶会はね。何と王妃様が主催されるものなのよ!」


 分かっております、おかあさま。でなきゃ王城でお茶会なんて開かれません。


「王妃様は、それはそれは気さくなお方でね!フィーリアちゃんがヴァシーロ様から同じクラスと聞いたらしくて、『会ってみたいわ』って仰られてね!クラスのお友達もご招待を受けているから、とても大きな会になってしまわれたけれど、必ず王妃様はご挨拶してくださるそうだから!!」


 何と言う余計なことをしてくれたのだ、王妃様。

 衛兵に誘導されながら会場まで歩けば、確かにそこかしこで見覚えのある顔に出会う。

 会釈をしつつ会場に入れば、まだ人数はまばらだ。

 ま、それもそうだ。

 王城に招待されたからといっても、我が家の家格は男爵家。所詮、貴族の中では下っ端なのでこれから来る公爵家とか侯爵家とか伯爵家の面々を待たなければならない。

 それが貴族のルール。

 バカバカしくても従わなければならない。

 という訳で私は、おかあさまや会場入りしていた貴族令嬢達と雑談に興じながら、待った。

 アリスティ様が来られるのを。

 今か今かと誰かが来る度に、視線をそちらに向ける。

 そしてようやく待ち焦がれた黄金色の髪を見つけて、私は走った(勿論、常識の範囲内でですよ?)。


「アリスティ様!」


 見る人が見たら、私の後ろに物凄い勢いで振られているしっぽが見えたに違いない。


「あら、フィーリア様。ごきげんよう」


「はい!アリスティ様!!」


 そりゃもう甲斐甲斐しく世話を焼く。

 誰にもこのポジションは渡さない。

 私自身がアリスティ様と共にありたいからこそ、真っ先に駆けつけ世話を焼くのだ。

 まあ、そうは言っても所詮子供の身体。世話を焼くと言ってもメイドに指示を出すだけだが。

 手ずからお茶を淹れたいのだが、まだ子供の身ではそれも出来ない。いつかは淹れると決意しながら、私はアリスティ様にアレコレ話し掛けた。

 今日の髪型から始まり服装やアクセサリー、自分を基準にしてアリスティ様を持ち上げる。

 アリスティ様も聡明な子供だが、やはり子供でしかない。

 私に持ち上げられ、その表情はとても晴れやかだ。作り笑顔との差が激しすぎるが、恐らくそれに気付いてはいない。

 伊達に中身はアラフォーではない。

 しかしアリスティ様と楽しくおしゃべり出来たのも束の間。


「第三王子ヴァシーロ様、ドゥーカ公爵家ルーネ様、ハルマ侯爵家ラテス様、イディア侯爵家タウマト様、ご入場にございます」


 衛兵が、頭痛の種の入場を告げた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ