杖の男たち2
攻略対象者たちの話パート2です
ぼくは、魔法が使える。
多分同じくらいの歳の子には負けないくらい。
そういう血筋らしいけど、うちには隠された秘密があって、ある儀式をすることで他の人達より魔法が使える様になる。
四歳の誕生日に父様から聞かされて、ぼくの魔法はニセモノだと知った。
ぼくは、自信をなくした。
そんな時に父様は、気分転換だと言ってお城の王子様と会わせてくれた。
何でも王子様は友達を捜していたらしく、年齢的にもぼく、つまり王子様と同じ年頃の子供がほしかったとか。
そんな感じでぼくと王子様は友達になった。
父様から聞いていた王子様は何だか怖い感じがしていたけど、会ってみたら随分と可愛い感じで、そんなことは全然なかったけど、自信満々な感じはぼくに合わなかった。
公爵様のところの子供と騎士団長のところの子供も、ぼくと同じ様に王子様の友達に呼ばれたみたいだけど、やっぱりぼくは友達になれそうになかった。
二人とも頑張ってるのに、ぼくだけニセモノの力でこの場所にいるから、きっと知られたら嫌われるから。
だったら、最初から友達じゃない方がいい。
友達ごっこをしよう。
でも、教室にいた女の子は違った。
ぼくは幼稚舎に着いたときには後ろ姿しか見てなかったけど、王子様も他の二人もその子を見てぽかんとしているのが不思議だった。
けれど、その子を見て王子様達がぽかんとしていた理由が分かった。
これでもぼくは魔術師長の子供だ。
ちやほやされることが多いから分かるけど、その子は逆。
その子はぼくのことも、王子様達のこともちやほやしなかった。
ただ、見ただけだった。
見る以外何もしない女の子は、すごく珍しい。
だからぼくも、その子をよく見てみた。
そうしたら、ぼくには見えた。
女の子から見える、ゆがみを。
何となく、ぼくの本当の仲間だと思った。
仲間なら、守らなくちゃいけない。
ぼくだけが知ってる、ぼくの本当の仲間を。
ぼくだけがきみの仲間だって、いつかきっと教えてあげるんだ。
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オレは一人だった。
気付いたら、まわりは怖い大人ばかりで、毎日が死ぬかと思うばかりだった。
かあさんは、何をしていたのか分からない。
オレが分かるのは、弟がうまれたけど病気になって死んだことと、かあさんが気が付かないで弟ばっかりになってたこと。
かあさんの代わりにオレが頑張んないといけないこと。
これだけだった。
ある日、仕事をしていたらお金持ちそうなオジサンに会った。
オジサンはオレに何を思ったのか分からない。
けど、何回か会っているうちにオジサンは、自分の子供のことを話し始めた。
なんでも、オレと同じくらいの子供なのに、泣いたり笑ったり怒ったりしないらしい。
オレもそんなに泣いたり笑ったり怒ったりしないから、どうしてもその子を思い出してしまうって。
じゃあ、オレはここにいない方がいいのかな?と、あっちに行こうとしたら、ものすごい止められた。
よく分からない。
またある日、オレはこの辺りのシマの親分(親分てなんだろう?)に呼ばれて出かけたら、その途中でオジサンに呼ばれた。
親分を怒らせたら恐いって聞いていたから、オジサンの話を少し聞いたら行くつもりだったのに、オレはオジサンにひっぱられて初めて貴族の家に来た。
何もかもがきれいで、目がちかちかした。
けど、庭をみたらそのちかちかもなくなった。
もっときれいなものを見つけたから。
お嬢様は、きれいだった。
オレが会ったことのあるだれよりもきれいな女の子だった。
もちろん、オジサンのおくさんもきれいな人だけど、オレはお嬢様がいちばんきれいだと思う。
オレはお嬢様といっしょにいられるようにオジサンに頼み込んだ。
オジサンも、そのつもりだったと言ってくれたので、オレはその日からそこに住むことにした。
そうしてがんばったら、一緒に幼稚舎へ通えるようになった。
オジサン、じゃなくてだんな様は、オレをお嬢様の虫除けにすると言っていた。
意味はよく分からないけど、お嬢様のそばにいられるならなんでもいいや。
そこが、オレのいるところなんだから。
次は主人公視点に戻ります。