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運命?そんなものに従っている場合ではない。

最初なのでどうしても説明回になります。

 乙女ゲーム、と言われる世界に生まれ変わることが出来たのは僥幸だった。


「あぶー」


「まあ、あなた。見てくださいな!」


「おお、君に似て綺麗な瞳をしている!」


「いいえ、私ではなく貴方の色ですわ!」


「あばー」


 生まれながらにして前世の記憶を持った赤ん坊の私。そのお陰で、今の自分が何を成すべきなのか分かった。

 ただの自己満足に過ぎなくても。

 私はこれから死ぬほど己を磨いて、いつの日か出逢う王子達(攻略対象)に…ではなく、ライバルとなる悪役令嬢を救わなければならない。

 そもそも、昨今の乙女ゲームは悪役令嬢(ライバル)の扱いが酷すぎるのだ。大抵のその末路は良くて国外追放、悪くて死。刑に処されるパターンもあれば民衆に嬲り殺されるパターンもある。

 酷い。あまりにも酷過ぎる。

 そしてプレイヤーであるヒロインも、現実にこんな女が身近にいたら嫌だと感じていた。

 確かに主人公ヒロイン目線で見れば、様々な嫌がらせを受けても挫けることなく頑張る姿は凄いと思う。どんだけメンタル強いんだ。そして最後には攻略対象と結ばれる。


 ハッピーだ。実に。


『いやいや、おかしいでしょ!?』


 様々な乙女ゲームで遊んできたが、どれもこれもライバルである悪役令嬢の末路は同じ。いつしか彼女(悪役令嬢)との友情エンドを探してゲームをやりこむようになった。


 そうして自分が生まれ変わったこの世界。


 ここは生まれ変わる直前までやりこんでいたゲーム。その名も【運命の(カード)を超えて】という。攻略手順もばっちり覚えているが、最後の隠しキャラだけはクリア出来なかった。


 ちなみにこのゲーム、攻略対象の人数が多すぎるゲームとしても有名で、隠しキャラ込みで攻略対象は21人いる。タロットカードをモチーフにしたゲームという前評判で、カッコイイカードがモチーフになっていればと期待されていたが、蓋を開けてみたら大アルカナ21枚が対象となっていて。更に各キャラエンドが三種類あり、恋愛値も友情値も最大の結婚エンド、恋愛値のみ最大の恋人エンド、友情値のみ最大の心友エンドとある。これにヒロインが誰とも結ばれないノーマルエンドと、運命に負けて破局になるバッドエンド。21×3+2=65通りのエンド(公式発表)という数にレビュアーが軒並、最低評価を下した。


 だが、私は攻略した。悪役令嬢救済を求めて。


 結果は当然ながら惨敗。

 ノーマルエンドでは悪役令嬢が自分の仕出かした嫌がらせが失敗して事故死する。それは馬車に轢かれたり、階段から落ちたり、落下物が降ってきたりと、その時のシチュエーションで死因は変わるが、どっちにしても死ぬ。

 バッドエンドに至っては、悪役令嬢の救済どころではなくヒロインが運命に負けると、世界が崩壊するというとんでもないシロモノで、助けようにも助けることが出来ない仕様という徹底ぶりに当時は怒り狂ったものだ。

 攻略対象20人に残り二つのエンドを迎えてからプレイ出来る、最後の隠しキャラを攻略し始めたところで、私の命は燃え尽きてしまったようなのだ。

 というか、その辺の記憶が曖昧でよく分からないと言った方が正しいのか。そして冒頭に戻るというわけである。



 ※※※※※※※※※※


 さて周りの状況から、自分が何者かも知り得た。

 というか、今では知りたくなったような気もする。


「あぶぶー……」


「あら、フィーリアちゃん。どうしたのかしら、今日は機嫌が悪いわね?」


 ママさんが不思議がろうが、そりゃあ悪くもなろうもんさ。私は数日前に生まれ変わったこの世界が、【運命の(カード)を超えて】だと気づき狂喜したものだが、名前を呼ばれ、更に両親の名前を知った時には愕然としたものさ。


『何で私がヒロインに生まれ変わっているんだよ!!?』


 声を大にして言いたい。


 私はヒロインになるつもりはなかった。ただ己を磨いて悪役令嬢に近づき取り巻きにでも、あわよくば友人と呼べるようなポジションについて、彼女の性格を矯正していく予定だったのに。

 私はヒロインになるつもりはなかった。

 大事な事なので2回言いました。何ならもう一回言っても良いくらいです。

 とにもかくにも、これからである。

 どうであれ私は、このゲーム【運命の(カード)を超えて】のヒロインとして生まれ変わってしまった。

 両親や時折見える来客の姿からワンドのスート、人間界オルトゥス皇国の一貴族であるレギス男爵家の次女に。

 パッケージイラストにはステージとなる各界のトップに立つ攻略対象とヒロイン、そしてライバルとなる悪役令嬢が描かれていたが、その絵面を思い出して私は前世(いままで)の姿との差異に身悶えする。

 今でも記憶にあるパッケージの中のヒロインは、淡いながらも艷やかな桃色の髪に煌めく翠の瞳、ぽってりとした唇はふんわりした微笑みを浮かべている。


 見た目、超清純派。


 ダメだ、私のキャラではない。と落ち込んだところで意味のないことも分かっている。何処で聞いたか忘れてしまったが、赤ん坊のうちから確りした顔をしている人は、面影を残しつつ成長するらしい。パッケージイラストと今の自分を比較すれば、納得出来ようというものだ。


 閑話休題。


 兎に角、自分が"フィーリア・レギス男爵令嬢"ならば、ライバルの令嬢は"アリスティ・マルキシオース侯爵令嬢"。

 

攻略対象は


 第三王子《女帝》ヴァシーロ・ルーキス

 公爵家嫡男《法王》ルーネ・ドゥーカ

 騎士団長次男《戦車》ラテス・ハルマ

 魔術師長嫡男《魔術師》タウマト・イディア

 専属執事《吊られた男》イコス


 の五人になる。

 何とかして各キャラへのエンドフラグを最低限に抑え(出来たらへし折りたい)、彼女アリスティを救わなければならない。ついでに世界も救わないといけないのだが。

 最早、使命である。


「あぶぶばー!(負けるものかー!)」


 私は言葉に成らないながらも、世界に向かって宣言した。

 それがどういう結果をもたらすかも知らずに。




タロットカードは販売元にもよりますが、大アルカナ22枚、小アルカナ56枚、予備(白紙)のカード1枚で構成されています。

なので、大アルカナからヒロイン(愚者)・攻略対象者(他21枚)・悪役令嬢(予備)となります。

小アルカナはトランプの元とも言われていて(諸説あり)、スート=シンボルマーク4種からの各14枚となってます。棒=クラブ・剣=スペード・杯(聖杯とも呼ばれる)=ハート・硬貨=ダイヤとなっており、本編ではスートを各世界のシンボルとして使用させていただいております。

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