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ユキ、商談に臨む

カナと冒険中に、新スキル『王者の咆哮』を試そうとしたユキ。

色々と考えすぎた結果、とんでもないことをしでかしたのであった。

 



「なーなーユキ?」


「なに」


「……がおーっ」


「っ! ばか!」


 カナに背を向け、歩みを早める。

 ふよふよと追従してくるカメラが、今はちょっとだけ厄介だった。



 あの後、それなりに奥地に行った私たち。

 いくつかの手強そうなゴブリンの群れを蹴散らした後は、例の砦に向かった。


 正面の門を中心に、ぽっかりと巨大な穴が開いている前線基地をみて、カナはこれまた大笑い。

 それから、微妙に修繕の入っていた箇所も合わせて得意の火魔法で完全に焼き払った。


 これで、この砦を侵攻に使えることは無いだろう。

 満足げに頷いたカナと共に、帰路についた。



 街に戻った私たちは、なんとはなしにドゥーバのなかをうろつく。

 なんだかんだで、まだ一回もまともに見回ってなかったしね。


 巡っていて思ったことだけど、北部は建物の数がとても多い。

 大小様々、色々な外観の建造物が並んでいる姿に、思わず感嘆の声が漏れた。


 ただの住宅街にしては、かなりの違和感。

 私には良く分からなかったが、どうやらカナには推測がつくらしい。 教えてくれなかったけど!


 街の南側には、大きなお城がある。聖都だもんね。

 勿論、今日のところは遠目に眺めるだけでその場を去った。

 いつか此処にも入ることが有るんだろうか。


 他に特筆すべきことといえば、西門近くに巨大な闘技場があった。

 闘技大会とかも、いつかは開かれるのかもしれないね。


 さて。色々と街を見て回った私達は、良い時間だったのでログアウトすることになった。

 午後も遊ぶ奏との再集合は、14時にアジーン噴水前!



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 ……ということで、時刻は13時50分。

 第一の街アジーンの噴水広場に、私はいる。


 そろそろ来る頃かな。

 背後を警戒しながらもきょろきょろとしていると、正面から悠々と歩いてくる親友の姿が見えた。


「お待たせ。いこーか」


「ん」


 カナの先導で歩き始める。

 因みになんだけど、今はカメラドローンを飛ばしていない。


「んー……なんか、違和感」


「ん?」


「いやーなんというか、配信せずにゲームするのが新鮮だなって」


「あー。この五日間ほとんど配信しかしてなかったもんな。早くもそっちに馴染んだかぁ」


「あはは。そうみたい。ものすごく向いてたってことなのかな」


「かもなぁ」


 のんびりと話しながら、目的の場所へと歩く。

 いま向かっているのは、とある人物が経営するお店。


 お昼の間にアポを取ったところ、配信無しという条件ならば今日訪ねても問題ないらしい。

 カナの一式装備も作り上げた方だそうで、会うのがとっても楽しみだ。


 暫く町外れの方に歩いていくと、大きな庭を持つ建物が見えてきた。

 緑豊かな庭園に囲まれた、一件のお店。 街中にこんな所があるんだね。


「……わぁ」


「はっは。なかなか凄いところやろ?庭の手入れも趣味なんやって。

 まぁ、いくらβから資金の一部持ち越しがあって早めに店を構えられたとはいえ、そっちの方はまだまだこれかららしいけどな」


「へーー。ただ冒険するだけじゃないってことなんだね」


「そーいうことやな。 ごめんくださーい」


 入口に立ったカナが大きな声で呼びかける。

 はいはーいという声とともに、ぱたぱたと女性が駆けてきた。


「いらっしゃい。待っていたわ」


「どーも。突然やったのにすみません」


「良いのよ。ちょうど暇だったし。

 それで、そちらが噂の?」


「ユキです! はじめまして」


 こちらに意識が向けられたので、挨拶。

 ふわりとした緑色の髪を肩までのばした、蒼い瞳の女性。

 柔らかで、穏やかそうな雰囲気を見せる美人さんだ。


 中に通され、テーブルに三人向かい合うようにして座る。


「はじめまして。フレイよ。このゲームでは裁縫関係をメインにしているわ」


「え、えーと私は……聖女? やってます」


「勿論知っているわよ。凄女サマ……でしょ?」


「はい…………ん? 今なんかちょっと違ったような気がするんですけど」


 具体的には、イントネーション。

 含み笑いのようなものを感じた!


「うふふ。気のせいよ」


「むー………まあ、いいですけど」


 ジト目を向けるも、余裕の笑みで受け流されてしまった。

 初対面にして力関係がわかってしまうような流れに、思わず苦笑する。


「ほら、そのへんで堪忍したってや」


「ごめんなさいね、ユキちゃん。実は私も配信観てるのよ」


「……えっ」


 悪戯っぽく笑うフレイさん。

 ぎくしゃくとした動きで、私はカナに追及の目を向ける。


「たはは。ウチが紹介してからハマったみたいでな」


「作業しながらとかよく観てるわ。可愛くて癒されるのよね」


「え、あの、その」


「わかりますわーーユキって変なところで天然入るのよな」


「ふふふ。今朝のアレなんて、最高だったわね」


「っ!!」


 顔が熱くなっていくのを感じる。

 二人は顔を見合わせると、こちらに向かってニヤリと笑った。


「「がおーー」」


「あああうああ…………!!」


 満面の笑みでの、一撃。

 声にならない叫びをあげて机に突っ伏してしまった私は、きっと悪くないと思うんだ。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「……なるほど。ユキちゃんの装備を作れば良いのね?」


「ええ。流石にずっと初期装備なのもアレかなーって思いまして。いつの間にかカナの装備すんごくかっこよくなってますし」


 数分後。ようやく再起動を果たした私は、商談に臨んでいた。

 相手はもちろん、フレイさん。

 

「ふふ。カナちゃんのはイメージにバッチリ合わせられた自信があるから、そう言ってもらえると嬉しいわ。

 そうね……どういうコンセプトが良い?」


「えーっと……大人しめの服……かな。魔法使いとかが着てるようなゆったりした感じのやつ、私も着てみたいです。デザインとかは、控えめであればお任せで」


「なるほど。デザインはおまかせってことでユキちゃんのイメージに合わせて…………うん。作れそうね。全身鎧に分類されるローブになると思うけど、良いかしら?」


「はいっ!」


「了解。性能としては、できる限りHP補正にって感じで良いのよね? MPを多少補うことも可能ではあるけれど」


 うっ。MP盛ることも出来るのか。それはちょっと、最近の私にはなかなかの誘惑……

 いや、ここはしっかりと初志貫徹で行こう。 ライフこそ至高!


「できる範囲で構わないので、HP特化でお願いします! ライフで受けて、ライフで殴るのがコンセプトなので……!」


「いや。前々から思ってたんやけど、ライフは殴るもんじゃないからな?」


 外野からなんか飛んできたけど、無視だ無視。

 それこそ今更ってものだろう。


「ふふ。わかったわ。

 それじゃあ、すぐに見積もりを出すから。ちょっと待っていて貰えるかしら」


「はいっ!」



 少し待って出された見積もりは、なかなかに高額なものだった。

 けれど、プレイヤーメイドってのは得てして値段が跳ね上がるもので。カナ(いわ)く、これでもとんでもなく安いらしい。


 そっとお伺いを立ててみたところ、からかい過ぎたからお詫び……とのことだった。

 うぐぐ。やっぱりこの人には勝てる気がしないや。


 持ち込みの素材や、別途売却するドロップ品の諸々の計算を終えて。

 最終的な費用が算出されたところで、私たちはお(いとま)させてもらった。


 さてさて。 サクッと必要素材を集めちゃおう!









多分、ユキは今後『咆哮』で事故らないように全神経を使うのだろう。




危なかった……なんとか7日中に間に合いました。

いきなり危うくてなんとも言えないところがありますが、隔日更新をしっかり維持してコツコツ頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します。


毎回思うのが、自分に作画能力があれば好きな場面ガンガン描いたのになって。


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2023年1月20日に、第1巻発売されます!➡︎告知https://twitter.com/komaru0412/status/1584742818631012352?t=No8qGuhtVt37w2Jk0SwIKg&s=19
― 新着の感想 ―
[一言] がおー!!
[一言] ほむ……咆哮使うとき、この聖女たまに"聖在れかし《テトラ・グラマトン》!!"と言わせたい
[一言] 放送事故ならぬ咆哮事故かw
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